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ゲームの世界は好きだけど転移したいなんて言ってない!  作者: For-rest-one
第一章 悪炎竜『マローガドラコ』
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無防備なる師匠を

「しっ、師匠、危ない!」


 ドラゴンは僕が声を上げる前に踵を返して、僕とは逆方向の、離れた所に居る師匠の元に、その巨体には似つかわしくない速度と軽快さで駆けている。


 師匠ほどの実力者なら心配は無粋のはずが、今は状況が違う。

 彼は魔法を構築している最中だ。

 魔法の構築は魔法の規模が大きいほど集中力が要るため、咄嗟に動けないそうだ。

 この様子では、先程の石の雨を降らせた魔法よりも規模が大きそうだ。

 つまり、相当の隙ができる。

 僕の剣、延いては僕がターゲットだと思っていただけに、この様な大胆な行動に出たのだろう。


 とにかく師匠は、現在無防備だ。

 僕がドラゴンを足止めしなくては。

 死にはしないだろうが、負傷は免れない。

 そうなれば、勝機が完全に消えてしまう。


 不慣れな風魔法で吹っ飛ばされない程度に追い風を起こすが、飛翔速度が全く足りない。

 師匠とドラゴンとの距離は残り僅か。

 もう時間が無い、こうなったら……。


「ウェルテクス・エピタキンシ」


 師匠が兵士を逃す時に唱えた魔法を模倣する。

 ……唱えたが、特に変わったことは起きていない。

 効果は判る。 これを受けた兵士は急に加速していた。

 そしてこの魔法は風魔法だったか。

 風による加速――。


「ウェルテクス(旋風)エピタキン(加速)シ!」


 すると、背中を押されるような感触。

 強風が後ろから吹き出したのだ。

 概ね予想通りとはいえ、思ったより威力が強い。

 ……そういえば師匠はこの魔法を地上で使っていた。


「わぁあああ?!」


 必要以上に風に煽られた僕は著しく加速する。

 思っていた以上に速い。

 辛うじて目を開けるが、凄まじい風圧だ。

 一秒毎にドラゴンとの距離が一気に縮んで行った。


 まずい、このままでは衝突してしまう。

 しかし止まる訳にもいかなかった。

 もう師匠はドラゴンの間合いの中なのだ。

 それを視認した僕は魔法の勢いを緩めることなく、剣を強く握り前に出す。


「止まれーーーっ!」


 ドラゴンが振り向くと同時に、こちらも剣を振り切る。

 硬いものを切り裂く感触。

 偶然ドラゴンの首元に突っ込んだことで、急所へ攻撃できた。


「――――――ッ!!」


 声にならない叫びを上げ、ドラゴンは狼狽えつつ僕たちから距離をとる。

 追い打ちを掛けたかったのだが、何故か風魔法が発動せず、更にとてつもない疲労感を覚えた。


「ま、待て……」


 歩みが覚束無い。

 剣を握る手にも力が入らない――入らなくても勝手に握らせられるが。

 そうだ、師匠は無事だろうか。

 先程まで彼が立っていた場所を見る。

 しかし、誰もいない。


「……、あれ……?」


 辺りを見渡しても師匠は見当たらない。

 魔法が発動した様子すらもなく、まるで最初からここには誰もいなかったかのようだった。

 一体何処に……。


「悪かったな、心配かけて」


 上空から、声。

 驚いて見上げると、師匠はそこに居た。


「師匠!」

上手く行きました


改稿 (20/10/12)

1字下げ

修正 (20/10/27)

誤字修正

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