すごいひと
隙のできたドラゴンに追い討ちをかけようとした。
ところがその瞬間、奴はその大きな翼を振り回し、強風を起こした。
浮いていた僕はその風の影響を大きく受けて、吹き飛ばされてしまう。
「ひゃぁああ?!」
我ながら情けない声を出してしまった。
運良く茂みの方に飛ばされたので、衝撃は幾らか和らいだが、すっかり意表を突かれてしまった。
「おい! 大丈夫か!」
声を上げて応える。
身を起こし、飛ばされた方向を見ると、師匠がドラゴンを足止めしていた。
掌の上に拳大の水の球を創り出しては、奴に投げつけている。
先程のつぶてもだが、攻撃が効かないと聞いていた割には、だいぶ助けられている。
もし師匠がこの場に居なかったら、一瞬で負けていたとしか考えられない。
「師匠! そのまま怯ませておいてください!」
師匠はすごい。
“召環者の攻撃しか決定打にならない”というのはどうやら本当のようだが、にも関わらず、陽動もサポートも彼一人でやっている。
変に大人数で行けば犠牲を増やすだけだとは彼の言葉だったが、この状況を鑑みると確かにそうだとしか言い様がない。
それだけではない、僕がこちらに来てから昨日の今日で、サポートがあるとはいえ戦いが成り立っているのだ。
のうのうと平和な日々を暮らしてきた僕にそんなセンスがあったとは思えない。
どう考えても、僕に鍛錬を行った彼の功績だろう。
「おうよ! さっさとぶった斬れ!」
再び宙に浮かび上がり、更に風魔法を足して加速して行く。
次の狙いは、眼だ。
師匠が陽動している隙に、回り込んでドラゴンの視界の外から近付き、素早く、しかし深く目元を斬り付ける。
「ア゙ア゙ア゙アァァァアア゙!!」
片目を失った痛みか怒りか、咆吼して闇雲に暴れるドラゴンから今度は慎重に距離を取り、様子を見守る。
程無くして、僕が周囲に居ないことを知ると、辺りを見回し始め、やがて残った緋色の右眼が僕を捉える。
……かなり攻撃を加えたはずだが、まだ威圧感がある。
あとどれくらい戦えば良いのか――と思ったが束の間、ドラゴンは急に標的を変えて、師匠に襲いかかった。
「師、師匠?!」
間に合って...ない!?




