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ゲームの世界は好きだけど転移したいなんて言ってない!  作者: For-rest-one
第一章 悪炎竜『マローガドラコ』
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やっぱり魔法が使いたい

 本当に静かな夜だ。

 鍛錬場での喧騒が未だ頭に反響している。

 窓からは仄かな月明かりが差し込み、優しく部屋を照らしていた。


「ぐぇぇ……、疲れた……」


 男が去ってから、程なくして食事が運ばれた。

 その後、魔法だか何だか知らないが、体温くらいに温められたお湯で汗を流すことが出来た。

 剣がやはり手から離れないので、かなり手間取ったが、それを除けば意外にも快適に過ごせている。

 異世界というのは不便なものだと勝手に思っていたが、魔法以外の元の世界との著しい差は無かった。

 人の欲求なんてどの世界でも大差ないということだろう。


 それより、その後が大変だった。

 確かに()()はしなかったものの、戦いに際しての知識を授業形式で一気に詰め込まれた。

 間合いと踏み込み、剣の詳細に属性相性まで……。

 一つ一つ確認する暇もなく矢継ぎ早に言われたので、全て合点したのは三度(みたび)メモを見返してからだった。

 今しがた整理がついたせいで、頭が変に冴えてしまっており、疲れているのに当分寝付けそうにない。


「ゲームしたいな……」


 今この願いは白昼夢に過ぎないと分かっているが、それでもつい言葉を零してしまう。

 部屋の一角に本でぎっしりの棚があるが、当然ながら言語は日本語ではなく、さっぱり楽しめない。


 暇潰しに、僕は魔法とやらの自主練習を始める。

 目の前で何度も見せてもらったが、自分が使えないとどうにも実感がない。


「えっと……、フランマ・ケオだったっけ……?」


 魔法名さえ、うろ覚えだ。

 当然、どういう意味かも分かってない。

 名前に意味があるからば、何語なんだ?


 ――()()


 男が使った魔法の中で、やけに聞き覚えのある言葉が入っていた気がする。


「フランマ・カタルシス……?」


 そうだ。 男はこれを詠唱して炎を起こした。

『カタルシス』……。

 それこそ何語かは忘れたが、確か心理学の用語で、意味は『浄化』、だったか……?

 そして二つの魔法名に共通して入る、『フランマ』。

 こちらは全く馴染みがないが、どちらの魔法も炎属性だった。

『フランマ・ケオ』は実際に見ていないが、それも火に関係するのだとしたら、共通項は『火』……。


「火による浄化……、火を(もっ)ての浄化……。 『フランマ・カタルシス(火炎浄化)』」


 呟いた瞬間、全身が焼けるように熱を帯びる。

 掌から生まれ出た烈火が部屋を(まばゆ)く照らした。


「やばっ! 部屋が燃える……!」


 まさか本当に出来るなんて思わなかった。


「どうやって消すんだこれ……!」


 無論、初の魔法なので扱いも分からない。

 焦る僕を嘲るように、炎は盛んに燃えている。

 腕に力を込めてみるが、特に変化は見られない。

 掌を閉じようと剣を持つ手で抑えても、それ以上に火の勢いが強い。


「消えろ……、消えろ……!」


 声を上げると、今までの試みが馬鹿らしいほど簡単に火が消えた。

 剣の特性や魔法の起こし方と同じく、”結果を所望する”のが重要らしい。


 一気に気疲れした。

 魔法が使えたのは嬉しいが、流石にもう眠たくなってきた。

 詳しいことは明日、()()に聞こう……。

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