休憩の随に
「よし、そこまで。 太刀筋くらいはマシになってきたな。 二十分の休憩だ」
「ハァ……、ハァ……。 ……はい」
渋々ながらも僕は鍛錬を続けている。
この世界の為に尽力する義理は無いが、どうやら元の世界に帰るためには、この世界の人達の協力が不可欠なのだそうだ。
『協力を乞うにも、異世界から来たただの学生なんかに手を差し伸べる人は居ない。 帰還の第一段階として、まずは周囲の信頼を得よう』とは、男の助言だ。
「――と言っても、今まで戻れた奴は数人程度だからな。 まあ、そもそも帰りたいと思ったやつが少ないのもあるが」
彼はそう言っていた。
それにしても、鍛錬がかなりキツい。
持久走でもやらされているかの様に疲労が激しい。
しかし、通常二日から三日で修了するところを、一日足らずで終わらせる予定なのだ。 残当だろう。
「ふぅ……。 ところで、……師匠?」
休憩もそこそこに、男に話しかけた。
師匠という呼び方は、今思いついた。
「おう、なんだ? 我が弟子」
名前も知らないので、こうとしか呼べなかっただけだが、男は合わせてくれた。
「今の内に色々教えてくれませんか? 暮らしや文化などについても」
世界間の違いに興味が湧かなかった訳では無いが、数日程度で帰れそうにないと分かった以上、こちらの世界を知っておくべきだと判断したのだ。
「ああ、確かに全く教えてなかったな。 んー、と言っても話すことはあんまりねえな。 基本、どの世界も結構似通ってるっぽいしよ……」
意外だ。
一方の世界でのタブーが、もう一方では取り留めのないこと、なんて有り得そうな話だというのに。
「まあ、先ずは国について話そうか。 この国はある国王が治めていて、俺はその国王の近衛兵兼騎士団長って訳よ。 ここら一帯では栄えてる方だが、一番って程ではねえ。 住民間での小さないざこざは時々あるが、長閑な所だぜ、ここは」
王に直属とは、やっぱりこの男、偉い人なのか。
「……いや、今たしか戦争中の国が一つだけあったな。 とはいえ、体裁上周囲の国々に合わせてるだけで、好戦的ではないが……」
国同士の啀み合いは、何処の世界にもあるんだな。
「経済についても、大方そっちの世界と同じだ。 農業を営む奴もいれば、店やなんかで接客する奴もいる。 ああ、後は迷宮の探索を生業にしてる奴もいたな」
「ダンジョン……?」
キーワード詐欺は一先ず回避しました。
改稿(20/07/20)
結構に通ってる→結構似通ってる




