剣の鍛錬
「さて、一日しか時間が無いとはいえ、ドラゴンは生半可な腕で勝てる相手じゃねえ。 早速今から鍛錬を始める」
十分な説明なしに訓練が始まってしまう。
しかし聞いたところでまだ話してはくれなさそうなので、渋々承諾する。
「まずは鍛錬場までひとっ走りするぞ。 俺の後にしっかり付いて来い!」
そう言うや否や、男は部屋を飛び出し、廊下を左に曲がって行った。
あちらは僕が通ってない方だ。
見失うと面倒だな……。
部屋の中に残った二人の兵士を尻目に、僕も部屋を飛び出した。
「ハァッ、ハァッ……」
僕は男を追い、鍛錬場に着いた。
ここまでかなりの距離があって、普段運動していない僕は既に息が上がってしまった。
男は若干僕の為にスピードを落としてくれていたようだが、最後の直線で一気に離してきたので、時間差で到着となった。
「おっ、来たか。 ……ははっ、なんだなんだ。 もうバテちまったか。 先が思いやられるな」
男は平然と立っていた。
さすが兵士団長と言うべきか、凄まじいスタミナだ。
「ちょっと、待ってっ、くださいっ……。 ――はぁ……」
ようやく息が整った。
顔を上げて周りを見る。
鍛錬場は屋外にあった。
天井はないが周囲は城壁で囲まれており、広い中庭に造られているのだろう。
多くの兵士が鍛錬に励んでいて、グループを形成し共同で鍛錬する者も居れば、木造の案山子を打ち込み台として木刀を振るう者もいる。
なんか、『ザ・鍛錬場』って感じだ。
そしてその中央付近に立つ男の傍には、素材が違う案山子が二体あった。
「よし、準備はいいか? 早速お前の太刀筋を見せてもらおうか」
そう言うと男は二体のうちの一つ、錆びた案山子を指した。
「その剣は勿論木製じゃねえからな。 金属製カカシも用意してあんだ」
その案山子は見るからにボロボロで、長いこと使われていたのだとひと目でわかる。
「先ずはこれをその剣で、真っ二つにしてみろ」
……ん?
「えっと……、この剣で、そのカカシをですか?」
「ああ。 他に何がある?」
何て無茶な。
木製でも上手く切れるか分からないのに、ましてや金属製だ。
絶対、無理じゃないか……。
「ほれ、いいから振り下ろしてみろ」
全く切れる気がしないが、取り敢えず言われた通りにする。
(カキーン……)
案山子は見た目通りかなり硬く、全く歯が立たなかった。
これでも力入れたのだが……。
「ははっ、やっぱりな。 お前、出来っこないとか思っただろ?」
心を見透かしているかのような発言に、思わず息を呑んだ。
確かに、男の言う通りだが……。
「そうですが、それが何か……?」
「ああ、関係おおありだ。 さて次は、こっちで試してもらおうか」
男は関係があると言うのに説明せず、何食わぬ顔で残りの案山子を指した。
こちらは先程と違い、柔らかそうな素材だ。
藁人形をそのまま大きくしたような見た目をしている。
これなら、僕でも行けそうかな……。
剣を両手で強く握り締め勢いよく振りかぶる。
(ザクッ)
歯切れの良い音と共に案山子はいとも容易く両断された。
しかし、僕の顔色は明るくない。
いくら切れたとはいえ、所詮は柔らかい素材の……。
「いいや、違う」
男は否定した。
「今のカカシ、金属のやつよりも丈夫に作られてんだぜ。 よく分かってきたじゃねえか」
……え?
修正箇所 思わずドキッとした→思わず息を呑んだ
(20/05/25)
改稿 訓練所→鍛錬場
(20/07/20) どっち使ってるか分からなくなりますね……




