月の涙 #12
「軌跡荘っていうのか…」
そう言いながら、スピアさんの後ろをついていく。
玄関を通り、廊下を通って…リビングについた。
綺麗に掃除が行き届いて、装飾も美しい。とても素敵な部屋だった。
その中で、たったひとつ、目を引くもの…というよりは、少女と表現したほうがいい。
リビングのソファに、赤い髪の少女が腰掛けて、分厚い本を読んでいた。
無表情で、ひたすら文字を目で追っている。
ページを数秒ごとにパラパラとめくっていて、読むペースはかなり早いことがわかる。
本の題名を目を凝らして見てみた。表紙に書いてある文字は広辞苑。
…広辞苑?
「どうぞおかけください。」
困惑してる私に、スピアさんがそう話しかけた。
ちょっと待った。広辞苑って普通読み物じゃないよね?
調べ物かな…って、違う違う。今気にするべきはそこじゃなくて…
この子は、多分、宝石精霊だ…。
一目見て、なんとなくわかった。最近いろんな宝石精霊を見たことから、わかるようになってきた気がする。
そうして、私はその女の子に向かうように座った。
ラピス、ベルー、ホープも続いて隣に座る。
スピアさんは、その女の子の隣に座った。
「…というわけで…こちらは、ルビアといいます。ルピア・ロベルトです。ルビーの宝石精霊で、普段はここで過ごしているようです。」
と、スピアさんが他己紹介をする。
「あ、はじめまして。私は、サファイアの宝石精霊で、スフィアって言います。」
と、話しかけてみるが…
「……………」
まるで反応がない。
ひたすら広辞苑を読んでいる。
「えっと…る、ルビアさん?」
「……………」
その様子を見かねたスピアさんが口を出す。
「ああ、ルビアは喋れないんです…喋っているところを、見たことがなくて。」
「…そうなんですね。」
私の隣にいた、ラピス達がコクリと頷いた。
「さて、これからについてですが…現状、僕たちは誘拐された宝石精霊様達に対し、連絡する手段が基本的にありません。」
「うーん…じゃあ、向こうから動いてもらうのはやっぱり現状無理か…」
そう言ったのはホープだ。ホープはかなり心配しているようだ…。
主にクリミアのことを。
「どうするか…こっちから突撃してーとか、さ…」
「どうするべきか…?我達、そういう手段に乏しいぞ?」
「そうだよね…スピアさんに説得してもらうとか。」
「…作戦実行の前に、何度も説得を試みましたが、取り合ってもらうことすらできませんでした…。申し訳ありません。」
ラピス、ベルー、スピア、で話し合いをしているが…。
さて、そんな中私は一体何をしてるって?
…ひたすら、ルビアさんからの視線から逃げていた。
なぜかルビアさんがずっとこっちを見てきている…観察するかのごとく。
…いやいやいやいや、怖い怖い怖い怖い。
「あの、ルビアさん…」
「……………」
反応はない。当たり前だった。
「やっぱり向こう側から動いてもらうのがいいけど…!あー連絡できたら…!」
そうベルーが言ったとき。
ルビアがふいに、私たちに見えてこう言った。
「…共鳴。」
「うん?だ、誰の声なのだ…?」
ラピスが困惑してキョロキョロとする。
また、ルビアが口を開いた。
「宝石精霊なら、心を通わせた人と共鳴ができる…。
私たちは、それで連絡取り合ってたから…ね。」




