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2Chain.絶対死地

 ぎゃああああ、グァアアアア、キンキンキン、グシャァッ、うおおおおお、グルルルルゥゥゥ、スギャンバギャンドババババ━━どうやらとんでもない騒音がオレを取り囲んでるようだ。まず音だけが聞こえてきて、それから少しずつオレの視界が回復してくる。


 透けていた手がはっきりしてきて、音はもっと大きく聞こえるようになって現実味を増してきた。


 どうやら本当に異世界へ送られたらしいオレの顔が正面を向くと、こちらに向かってくる巨大なワニ人間みたいな化け物が口を大きく開けてどうやら食べられる寸前の状況らしい━━って、うわああああああ、マジ死ぬオレ死ぬこれは死ぬるぞ「スキルはつどーう!」咄嗟に目を瞑ってしまったが、オレは頭の中に残っていた女神さまのアドバイスを心の中でなく実際に発声することで実践した。


 なんのスキルかわからないし、発動した感覚がない━━バキィッという激しい音と衝撃に、オレはもう絶対食われて死んだものと納得した。結局こうなった。なんのスキルも発動せずに、きてすぐ食われてあっけなく死亡。肉団子なオレにはお似合いの最後かもしれない。ああ、悲しいなぁ。


 なんて考えていたら気づいた━━なんだオレ、食われたにしちゃあまたずいぶんと長いこと思考を巡らせていやしないか?


 ━━あれ、オレまだ死んでなかった?


 そう思い、目を開けようとしたのだが開かない。なんだ、なんで目が開かないんだ、やっぱ死んだのか。いやでも、呼吸はできてるし━━ん、でもなんか呼吸がおかしいな。無数の小さい穴から吸い込んでるみたいな違和感がある。そんでもってちょっと呼吸しづらいぞ……。


 オレはなんとか目を開こうとがんばったら、ちょっとだけギギギっと瞼が動く感覚があったのでそのまま必死になって顔面の筋肉に力を入れようとしたのだが、それ以上の手応えがない。諦めようかとも思ったのだが、別のやり方を試してみることにしようと切り替えた。


 まあ試すもなにも身体を動かせる気配がまったくないんで、できることといえば心で念じるくらいなんだが━━オレは適当に<目を開きたいぞおおお>とけっこう強めに願ったよ。すると驚くべきことにオレの瞼はなんの抵抗も示さずにスルッと開いたかと思うと、目の前で真っ二つにされた男と真っ二つにした骸骨剣士の姿を見せてくれた。


 ━━いやおいっ、うっそだろぉぉぉ! 今、目の前で男の人が惨殺されたじゃねーかよぉぉぉ!


 男性が真っ二つになってもなお、戦いはつづいていた。戦争だ。これはまるっきり、戦争そのものだ。銃火器がないだけで、それに匹敵する力はあちこちで使用されている。スーツ姿の男が必死の形相で手から炎を放つのだが、目の前にいた恐竜のような化け物は焼き払ったものの、後方から近づいたムカデのような化け物の針にやられて崩れ落ちる。人間の命があっけなく散る様を、ただただ見せつけられるって、なんなんだよ、これ。異世界ってこんな感じなのかよ、話が違うじゃねーか。


 戦国の世の大合戦だって、こんなにめちゃくちゃではなかったのではないかと思うぞ。そもそもいろんな化け物が多過ぎて、それだけでゲロキモグロくて地獄絵図だ。人間対化け物の構図ではあるはずだが、どう見ても化け物側が一方的に殺戮を楽しんでいるような戦いだ。化け物ってゆうか、異世界だから魔物か。モンスターか。呼び方なんてどーだっていい、とにかく邪悪で凶悪な怪物どもが暴れまわっている。いくらなんだって、いっこだけ与えられたスキルでどうにかできる戦闘じゃないぞ、これは。


 空中で三段階くらいジャンプした兄ちゃんが、着地と同時に食われたじゃねーか。何段ジャンプのスキルだか知らないが、あれじゃなくてよかったぁ!


 つうか、オレのスキルなんなのよ……さっきから攻撃されてる気がするんだけど……大丈夫なの、オレ?


 そんなことを気にしていたら、ほら目の前からとんでもないT-REXみたいなのが走ってくるじゃねーかよぉ━━うわちょっと、くるなくるなくるなおいおいおーいっ!


 T-REXみたいな魔物が大口開けてオレの頭に覆い被さりやがって━━バキバキベキイイイという激しい音と衝撃を感じる。頭蓋骨完全破壊でオレオワタしたのだと笑っていたら、死んだのはオレじゃなくてT-REXみたいなやつのほうだった。

 すべての牙が粉々になり、グオオオオーンという最後の雄叫びを上げながらひっくり返ると黒い煙のようになり消滅してしまった。そんで、どうやらオレのレベルが上がったようだ。

 どこかに表示されているわけではない。だが、テッテレレレッテュワ~ン! みたいなどこか間抜けな音が頭の中に響くと、レベル3からレベル5に上がったことを理解した。一気に2つも上がったってことは、今のやつはけっこう強敵で、経験値的なものも多かったのだろう。つーかオレいつの間にレベル3になってたのって話なんだけど。


 いや、それすらどーだっていい。いっちばん肝心要なところって、オレがなんでどんな攻撃を食らっても平気なのかってところだよ。まったく動けないんだけどさ、なにされても効かないみたいなんだよね。目の前で大爆発が起こっても痛くも痒くもないし、ドラゴンみたいなのが炎を吐き出したって全然熱くない。牙と剣も通さない。でも、まったく動けない。


 オレ、なにしてんのこれ?

 どーなっちゃったのよ、オレの人生。いや、マジで……。

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