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馬鹿はナントカ…?

さてさて、また穏やかな毎日が始まりました。

ですが、この森はどうやら穏やかという言葉を知らないようだ。


一部修正致しました。



「いーやー!あんたが味付けしたら、全ての料理が甘くなんのよ!」

《甘くて何が悪いんだ!》

「加減をしれ!馬鹿め」

《馬鹿って言った方が馬鹿なんだよ!ババァ!いいから黙って食って寝てろ!》


昼の静かな森に響く、妖精と人間の声。

普通の人間が聞いたら、頭の弱い女が独り言を言っているようにしか見えないのだが何分(なにぶん)女がいる森は通称、魔の森。力試しの阿呆か迷った者しか、この森に足を運ぶ者はいない。

今は風の妖精リーフが迷わないようにはしているが、つい最近ライワノール国の側近達がこの森に足を運び、この森の恐ろしさは全国に広がった。

そのため、この森は立ち入り禁止という看板が立っている。

農村の配慮だろう。


おっと、話がズレてしまった。煩く口喧嘩をしているのは勿論のこと、この森の唯一の人間レイシアと火の妖精ルイスだ。

何故この口喧嘩が始まったのか、それは今から一時間前に遡る。




「はぁ…はぁ…はぁ…」


今日のレイシアはいつもと違った。

窓辺にだらんと腕を落とし、呼吸をするのが苦しそうで、身体を震わせているのだ。


「寒い…」


妖精達は戸惑っていた。

今日はかんかん照りの暑い日なのに寒いと言っているレイシアの異常は感じているものの、何をしたらいいのか分からないのだ。

アーシュが神水を飲ましてみても一向に良くならない。

苦しむレイシアの姿に泣きそうなジェミーは、自分が持っている癒しの力をレイシアにかけてみるもアーシュと同じで結果が出ない。

妖精達は生まれて初めての不安に駆られていた。

そんな時、レイシアの耳元で仁王立ちをした火の妖精ルイスが現れた。


《ババァ、なぁに風邪なんか引いてんだよ。馬鹿は風邪を引かないんじゃなかったか?》


ルイスはレイシアの姿に鼻で笑う。


「うるっ…さいわね…」


いつも言い返して来るレイシアの力の無い言葉に、ルイスはやるせない気持ちになって頭を掻く。


《仕方ねぇな…アーシュ、ジェミー、シアを支えてベッドに寝かせろ》


ルイスは急に顔が変わったと思ったら、的確に指示を出し始めた。

妖精達は力強いルイスの眼に、何も言わず言われたことを力を合わせて成す。


《アーシュ、神水を貰うぞ。》


ルイスはアーシュから神水を貰い、その神水を手巾に浸け絞る。

絞った手巾はレイシアの額に乗せられた。


《本当は氷の方がいいかもしれねぇけど、神水も良い力を発揮してくれるだろ。後は、粥か…》


うーん、と捻ったあと、ルイスは米と水が入った鍋の下に強い火を起こし、煮るのを待つ。

慣れている様に生姜までいれているルイスは、レイシアよりも料理が得意ではないだろうか。

ここまでは順調に進んでいた。

だが、味付けに差し掛かってきた時、粥には必要ない『それ』がルイスの手の中にあった。


「砂糖をお粥に入れるなーーー!!!」


ルイスの適切な処置で熱も少し下がったレイシアは丁度、ルイスの手の中にあるものが見えて血の気が引いた。


《なんだ、もう熱は下がったのか》


当然の様に砂糖をいれようとするルイスに、レイシアは重たい体を無理に動かしルイスの手を取った。


「有り得ないから!普通の物を食べさせてよ!」

《いきなり立ったら危ないだろ》

「いい!?お粥に砂糖はいらな…」


ルイスの言った通り急に立ったせいか、ふら〜っとレイシアの視界がぼやけた。


「ったく。頭打っても知らねぇぞ、ババァ」

「…………………誰、あんた」


倒れるレイシアを支えたのはルイス。

だが、あの小さい妖精のルイスではない。人型のルイスだ。

ルイスの切れ長の目がレイシアを映し、人型になった筋肉のついた腕がレイシアを持ち上げる。

少し長い紅の髪がレイシアの鼻を擽り、意識が朦朧としてきたレイシアはルイスの成すがままにベッドに戻された。


レイシアが目を覚ますと粥が置かれていた。

レイシアはその粥を見て、冒頭に戻る。




「うげぇぇぇぇ…」


今にも吐きそうなレイシアの口に、ルイスは問答無用に砂糖入り粥を運ぼうとする。

それをどうにかして阻止しようとするレイシアに溜息を吐いた。


《少しでも食べないと治らねぇぞ》


妖精に戻っているルイスは平淡と言う。


「甘いお粥なんて食べれるかーーー!!!」


レイシアが叫んだ隙にルイスは粥を口の中に素早くいれた。


「ゔぇぇぇぇぇ…嫌な味。」


レイシアが想像していたのよりは甘くなかったが、生姜と砂糖の味が微妙でレイシアは好きではない味だった。


「でも、なんか汗が出てきた」

《嫌な味でもちゃんと食べろよ。そんで寝ろ》


ルイスとしてはレイシアの風邪を考えた生姜粥なのだが、風邪を引いたレイシアは何だか腑に落ちない気持ちになり舌打ちをした。


「チッ、風邪が治ったら覚えてろよ。叩きのめす」


ルイスはやれやれとしてレイシアを寝かす。

レイシアはすぅー…と直ぐに眠りに落ちた。



生姜と砂糖で作るお粥はあるらしいですね。

私は嫌いですが。断然に卵粥派です。

生姜と砂糖は黒砂糖を使うみたいですよ。喘息や冷え性の方にオススメです。


今回のルイスは幼稚ではありませんでした。

いざという時に頼りになるっていいですよね。

そんな好意をされても揺るがないレイシアは恋愛音痴ではないかと、最近思ってきました。

今回は新たに加えました、妖精の人型。

加えたはいいものの、妖精は長い時間人型にはなれません。人間の世界で過ごした妖精だけ、人間の世界に耐性がつき長くなれます。

今の所はルイスが1番人間の世界ですごしています。


「ったく。頭打っても知らねぇぞ、ババァ」

の鍵カッコは間違いではありません。

人型の時は人間の言葉を発します。


汗をかいてぐっすり眠ったレイシアは翌日、スッキリと風邪は治り容赦の無いルイスとのバトルを繰り出したとか繰り出さなかったとか…。


もっと、ルイスの頼もしい所を見せたかったです。

読んでいただき有難う御座いました。



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