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第3話 追放生活楽し~

 とはいえ、そんなことばかり悩んでいられないのが今の俺だ。

「レオ、そっちに行ったぞ」

「よっしゃああ」

 翌日の昼。雨が降った後は川で漁をするんだと、ピーターとシモンに誘われ、俺は追い込み漁の手伝いをしている。

 もう、ずぶ濡れ。

 でも、楽しい。

 取り敢えず、身体を動かしていると余計なことを考えなくていいからな。

 それに異能力者だろうと何だろうと、俺には関係ないし。

 一緒にここに暮らす仲間ってことでいいじゃん。

 たまに意味深な発言をするアンドレだって、今、川縁に座ってのんびり釣りをしてるし。

 って、川の中で大騒ぎしているのに釣れるのか。

 しかし、びしゃっと大きな水音がして、俺はそれどころではなくなる。

「捕れた!」

 大きい魚が網に掛かって、俺は大声を上げる。

「よっしゃあ。その調子で行け」

 俺より少し年下、弟と同い年くらいのピーターが親指を立ててよくやったと褒めてくれる。俺も親指を立てて挨拶を返し、次の魚を待ち構える。

 何はともあれ、俺は今、快適に暮らしているのだ。

 不便だろうと快適だ。

「今晩は山盛り魚料理だな」

 王宮とは違う、ワイルドだが美味しい料理が待っているぞ。

「余計なことは考えない。考えないぞ」

 俺は呪文のようにそう繰り返し、追放された理由から目を背けていたのだった。




 俺の予想通り、その夜は山盛りの魚料理だった。料理をしてくれたのはシモンとマリナで、俺の城館の大きな食堂で、みんな揃ってワイワイガヤガヤと食べることになた。

「うまっ。こんな美味いの、王宮でも食べたことないぞ」

 俺はマリナが作ったアクアパッツァを食べて感激。

「大袈裟よ。でも、喜んでくれてよかったわ」

 どんな時でも修道女服の彼女は、にっこりと笑ってワインを傾けている。

 うん、やっぱり普通の修道女じゃないよね。魚食べるし肉食べるし酒飲むし、やりたい放題だ。

「俺の作った唐揚げも食え」

「むごっ」

 マリナについて考えていたら、シモンが口に魚の唐揚げを突っ込んでくれる。

 こんな油まみれの食べ物を食べたことがない俺は、初め面食らったものの

「何これ。めっちゃうまっ」

 その味にびっくりしてしまった。油ってこんなに美味いのか。

「ははっ、さすがに庶民代表料理は食ったことがなかったか。だが、王子様とはいえ人の子。この味には抗えまい」

 シモンはがははっと笑ってくれるが、まさにそのとおり。

 さくさくもぐもぐ。永遠に繰り返せる。

「はあ。色々とカルチャーショックなことはあるけど、ここの生活は最高だね」

 俺は唐揚げを頬張りながら、にこにこと笑ってしまう。

「俺はお前が王太子だったってのが疑わしいよ。唐揚げ食ったことがないってところで、今初めて信じたぐらいだぜ」

 しかし、ピーターがそんな憎まれ口を叩いてくれる。

「なんだと」

 俺は思わずピーターを睨んだが

「まあ、ここに来た時はボロボロだったもんねえ。捕まえられて身ぐるみ剥がれて、囚人用の粗末な服を着せられて、さらに三週間、風呂にも入れないトイレもない牢屋代わりの馬車に乗ってた人なんて、元が何かなんて解らないよねえ」

 アンドレがぐさっと刺さる説明をしてくれて、俺は撃沈した。

 そうですよね。俺がこの村に来た時は死にかけでしたもんね。そして素晴らしく臭かったことでしょうよ。

「でもまあ、そこまでの措置をされるってなったら、やっぱりそれなりの身分がある人よ。疑う余地なしだけどね」

 ず~んと沈む俺を気遣ったのか、シュリがそんなフォローをしてくれる。

 だが、それってフォローだろうか。

「ええ、ええ。無能で弟に知らないうちに謀反を起こされるような男ですけど、一応は王太子でしたよ。怪我をして療養中の国王に代わって、この一年は王政を行っていましたよ。それでも今は役立たずですよ~だ」

 俺はここに来て初めて、誰かがいる場所で愚痴を零した。

 それに食堂にいたみんなは困った顔をした。

 それはそうだ。どう気遣えばいいのか解らないだろう。

俺は手を振ると

「いいんだ。何か知らないけど生き残れたし、それで十分。それに謀反とはいっても、所詮は次の王様が誰になるかっていう揉め事で、大きく国が乱れるようなものじゃないし。俺はここで慎ましく暮らしていくよ。王宮に戻ろうとか、復讐しようとか考えてないし」

 慌ててそう答えていた。

 しかし、それでもみんなは反応に困っているようだったが

「ううん、まあ、今はそれでいいんじゃない」

 王宮からくっ付いてきたアンドレは、軽くそう言ってくれるのだった。




 だが、俺が再び王宮に戻る気がなかろうと、追放した側はそうはいかないものだ。

「なに。レオナール王子が生きている」

 辺境に捨てておけばいずれ死ぬだろうと思っていた宰相、ラオドール=ドラクロアはその報告に驚いた。あの王子がいなくなって動きやすくなったと思っていたのに、何ということだと頭を抱える。

「如何いたしましょう?」

「解っているだろ、殺せ。辺境の地であればどう殺しても文句は出ん。早急にやれ」

 ラオドールはそう命じると、すぐにシャルルにも報告すべく立ち上がったのだった。


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