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第2話 異能

「おおっ、本当に雨が降ってきたな」

「穴を塞いだ甲斐があったね」

 ざああっと降り出した雨に、俺はほっとし、アンドレはバケツを持って走らずに済んだと嬉しそうだ。

 やっぱりよく解らない騎士だ。

「ここに避難できるのはいいわよねえ」

「うちの家って何度修理しても雨漏りするもの」

 しかし、それに続く二人の声がして、俺はがっくりとしてしまう。

 声はこの村の住人、つまり曲者なわけだが、どちらも女子だ。

 名前はシュリとキキ。二人は出身もここにやって来た時期もバラバラだそうだが、今では仲良く同じ屋根の下に暮らし、姉妹のように生きている。年齢は不明だが、どちらも俺と同い年くらいだ。

 ちなみに二人とも美女である。シュリはセクシー系、キキは可愛い系という感じで、いても困らないのだが、男二人しかいない家に堂々と上がり込むのはどうなんだと思う。

「今までどうしてたんだよ?」

 俺は辺境の村に似つかわしくない美人姉妹に向けて、今まではどう乗り切っていたんだと確認する。

 アンドレが変な気を起こす前に出て行った方がいいんじゃないの。そう思ってのことだ。

 ちなみに俺は様々なダメージからまだ立ち直っていないので、美人がいようと変な気は起こさない。というより、早く寝たい。

「今まではマリナのいる教会にお世話になっていたわ。でも、あそこって素っ気ないし」

「そうそう。それにピーターがいて煩いのよねえ。その点、レオは完璧よ」

 俺の気遣いは、そんな言葉で返されてあえなく撃沈となる。

 ピーターというのは教会に住む少年で、魔法使いであるらしい。マリナも魔法が使えるようで、二人は一緒に生活をしているのだ。

「ピーターか。あれは悪戯盛りでエロいこと大好きな年頃だからなあ。仕方ないね」

 すでに村に馴染みまくりの騎士は、そんなことを言って頷いている。

 おい、俺はお前のエロを気にしているんだよ。

 なんてことは言えない。

「確か魔法使いなんだよな。王宮にいた時にもそういう奴っていたけど、実際に見たことはねえなあ」

 ということで、俺も話題をピーターにシフトした。すると、二人の美女はくすくすと笑う。

「どうした?」

「レオが一週間も掛からずに回復出来たのは魔法のおかげよ」

「そうそう。マリナさんのおかげなんだから」

 きょとんとする俺に、二人はそう説明してくれる。

 ぬああっ、そうか。

 そうだよな。俺もあのふらっふらな状態から三日で治るって、不思議だなとは思っていたよ。

「ま、魔法ってそういうことか」

「基本、王宮にいるのも回復魔法の人だもんねえ。それに、戦時中じゃなきゃ、異能力者も普通の人と一緒、活躍の場がないもの」

 頭を抱えてそういうことかと納得しかけた俺に、シュリが意味深なことを言ってくれる。

「い、異能力者。王宮にも凄い力持ちの奴とか、水を操れる奴がいるという話を聞いたことがあったけど、そういう奴らだよな」

 俺は魔法同様に見たことがないよと肩を竦める。しかし、シュリもキキもくすくすと笑ったままだ。

 な、何か、嫌な予感。

 思わず後退る俺に、アンドレはやれやれと溜め息だ。

「王子様、呑気すぎ。この村にいる人、基本、異能力者だよ」

「えっ」

「みんながここで隠れて住みたい理由はただ一つ、他の場所だと魔女だとか人外の生き物扱いされるからだよ」

「・・・・・・」

 マジですか。

 俺は目をひん剥いてシュリとキキを見てしまう。

「レオが見たことないのも仕方ないわ。戦時中じゃなきゃ要らない存在。いえ、いちゃ困る存在なのよ。この国でも五十年前の戦争以降、異能力者狩りが行われたもの。魔女裁判って形を取ることもあるけど、ほぼ容赦なしの殺戮だったらしいから」

 シュリは王宮にいたのは見世物にされている人たちねと付け加える。

「そ、そんな」

「レオは知らないの? 王太子だったのに」

 戸惑う俺に、キキがぐさっと刺さる一言をくれる。

 そう、王太子だったのに、この国の闇の部分を知らないってことだ。

 これはどういうことだ。

「ふうん。そういうところに、王子様が追放された理由がありそうだね」

「えっ」

「ははっ、やっぱりこっちに残って正解だったわけだ」

「ええっ」

 俺を置いてけぼりにして、アンドレは勝手に何かを理解して納得している。しかし、俺は大混乱だ。

「お、俺って一体。ええっ」

 俺は助けを求めるようにシュリとキキを見たが、こちらも意味深に笑うのみだ。

 一体何を知らないのだろう。一体何があって追放されたんだ。

 追放されたショックからまだ立ち直れない俺に、さらに何かがあるらしいという衝撃が襲いかかる。

「一体何が」

 シャルルはただ俺が気に入らなくて追放しただけじゃないのか。

 混乱する俺の気持ちを表すかのように、大きな雷鳴が轟いたのだった。


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