打開?拿捕?
「女王へーかがごくひりに行幸にいらっしゃったんだよ!」
弟分たちがなにを言ったのか、海翔は一瞬理解が出来なかった。女王が──日依が? 何故? なぜこんな、王都の辺境にある孤児院に?
海翔の問いが口から漏れ出たのか、弟分たちは口々に大人から聞いたらしい情報をくれた。
「女王陛下の慈善活動なんだって」
「あんさつ? とかのたいさく? で、直前につうたつ? が来たんだって!」
「じょおうへいかって女神さまのこどもなんでしょ? すごいよね!」
きゃあきゃあとはしゃいでいる幼い弟分たちを置いて、海翔は表門へ向かって走り出した。表門には、直前の通達であったはずなのにすでに女神の末裔を一目見ようと人だかりが押し寄せていた。孤児院の人間が総出で出迎えているようで女王は影すらも見えない。
「悪ぃ! 通してくれ!」
人混みを掻き分け、海翔は女王の面前まで躍り出た。
「………!!!」
紅の瞳と眼が合う。冷徹さをたたえながらも、鈍く静かに燃える、炎のような瞳。──違う。
本能的に海翔は確信した。
紅の瞳。けれど、赤珊瑚の宝玉のような瞳ではない。あたたかい太陽のような瞳ではない。きらめく紅であるはずの瞳の奥に潜む、この熾烈な、見る者すべて射抜くような月の光は、知らない。
違う。この瞳は、この女は、日依ではない。
「……出迎えに感謝する」
「ははぁっ! 陛下! 我が国の太陽にお目通り叶いまして恐悦至極でございます」
女神を祀る社の神主で、孤児院の院長も務める老人が大仰に女に拝礼した。
「……違う」
「なんじゃと? 海翔、たわごとを──…」
「この女は女王じゃねえ!!」
海翔が叫んだ瞬間、海翔は、女王の傍に控えていた白い制服を着た男たちにねじ伏せられていた。目にもとまらぬ速さだった。
「不敬な!」
「不敬なのはおめえらだろ! どう見たって偽物じゃねえか!!!」
「気ちがいめ! このお方を偽物と申すか!」
白い制服を着た男たちと揉み合いになる。女王の傍に侍っていた男たちも続々と加勢してきた。男たちは海翔の力が予想以上に強いことに戸惑っているようだった。
「やめよ」
喧騒は、鶴の一声でやんだ。──…女王を騙る女が発した声だった。その声は、日依によく似せられていて、しかし、知らない冷たさを含んだ声だった。
「かいと、といったか」
「……なんだよ、ニセモンが」
あくまで女王のていで話し続ける女に、海翔はやけっぱちになって悪態をついた。せっかく夢にまで見たお嬢に再会できるかと思って期待に胸を弾ませた分、落胆は大きかった。
「近衛右麒第三番長。この男を御所へ連行せよ」
「はっ!」
「はぁ!? 何言ってんだ! オイ! 離せよ!!!」
海翔の必死の抵抗も虚しく、海翔はあっという間に縄でくくられると、孤児院への寄付品を積んで来た馬車のからっぽの荷台につめこまれた。




