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エピローグ 前途多難な侯爵令嬢


 事の顛末として、襲撃を企て、実行した魔皇国の兵士達はローガを含めて全員、駆け付けた王国兵士達に捕縛された。


 ローガはもちろん、部下の兵士達も気絶、あるいは無力化された後だったので王国兵の仕事は連行するのみだったのだが、彼等が駆け付けた事で事態は収束を迎えた。


 魔皇国の手先として乗っ取りを企んだアイリス子爵令嬢もまた、捕縛され、今、現在も事情聴取が続いている。


 あの場にいた貴族の二世達は重傷者こそいたものの、奇跡的に死者は出ておらず、ルーエル王太子殿下やレーリャ公爵令嬢も無事に保護され、〝八神将〟まで投入して失敗に終わった今回の事件は結果的に魔皇国側に戦争を踏みとどまらせるきっかけを作ったのだった。


 そして、アイリス嬢の謀略を見抜き、炎獄のローガを含む魔皇国の兵士達を制圧した立役者であるミラキア・プレシール侯爵令嬢はというと――――


「――――ミラキア・プレシールよ。今回の騒動における其方の活躍は王国の未来を照らす素晴らしい働きであった。よってここに褒賞を与える」


 そこは王国における全ての中心。国のトップである国王陛下が居を構える大きな城、その謁見の間だ。


(あれ……?どうしてこんなことになっちゃってるの……?)


 何故、ミラキアがこんな場所にいるのかといえば、事は騒動の収束直後に遡る。



 ローガとの決着がつき、空間が崩壊した後、夜会の会場へと戻ったミラキアは自分に向けられる視線に気づいた。


 突如として消えた兵士達が気絶した状態で現れ、おまけに〝八神将〟であるローガまでが倒されていた上に、そんな中で一人、衣服の破れ以外、目立った外傷もないミラキアが立っていたのだから注目が集まるのは当然。


 だが、それ以外にも注目の集まる理由が彼女にはあった。


「――――ミラキア・プレシール!良かった……無事だった……か?」


 ミラキアが戻ってきてすぐに駆け寄ったのはレーリャ公爵令嬢。彼女は魔皇国の兵士達と共に消えたミラキアの事をずっと心配していた。


 だから彼女が無事に戻ってきた事に安堵し、喜んだレーリャ嬢だったが、その恰好を目にしたその瞬間、慌てて周囲からミラキアを隠すように立ち回る。


「ああ、レーリャ様。私は――――」

「っお前は……いいからもっと身を隠せ!自分がどんな格好しているのか気付いてないのか!?」

「へ、え、あ、ちょ……!?」


 突然、怒られ、何が何だか分からないといった様子で困惑するミラキア。レーリャ嬢の怒った理由、それはミラキアの格好にある。


 あの空間内での戦いで魔人装状態のローガから受けた傷はマギアシルビィに変身した時点で治ったのだが、着ていた衣装(ドレス)はそうもいかない。


 傷が治った以上、破れた衣装から覗くのは彼女の地肌。肩口からばっさり切られた事もあり、今のミラキアは貴族令嬢としてあるまじき格好になってしまっていた。


「おい、そこの……誰でもいい、その辺りのテーブル掛けを持ってきてくれ」


 呆然と状況に呑まれている貴族達に向け、レーリャ嬢がそう頼むも、誰一人として動く気配がない。それはレーリャ嬢の言葉が聞けないというより、どう動いていいのか分からないといった様子だ。


 そんな彼、彼女達の反応にレーリャ嬢は内心、苛立ちながらも、構っている暇はないと一番近くのテーブル掛けを掴むと、そのままミラキアの身体を隠すように被せる。


「ええっと……その、ありがとうございます?」

「……礼を言うのはむしろ、こちらの方だ。魔皇国の件もそうだが、お前には助けられてばかりだな」

「いえ、私は別に…………」


 レーリャ嬢からの素直なお礼にミラキアは思わず目を伏せる。彼女を助けたのは完全な善意からじゃなく、ただ魔法少女としての矜持に従ったから。


 魔皇国の兵士と戦ったのだってそれが理由……全て自分のためなのに、心からお礼を向けられ、ミラキアは少しだけ後ろめたい気持ちを覚えたのだった。


 そんなちょっとしたハプニングもあったものの、程なくして騒ぎを聞きつけた王国兵達が駆け付け、魔皇国の兵士達を拘束していったのだが、ミラキアにとっての誤算はここで起きた。


 王国兵からすれば騒動に何事かと駆け付けてみたところ、魔皇国の兵士が無力化され、倒れており、その中にはかの有名な〝八神将〟炎獄のローガまでいたのだから当然、これを為したのが誰だという話になってくる。


 聞き取りをしようにも貴族達は混乱した様子で話にならず、魔皇国の兵士達も気絶していて尋問もできない。


 そのため、そんな中で唯一、意識のあったローガに聞き取りを行ったところ、彼がこんな台詞を言い出した。『襲撃を企てたボク達はそこにいるミラキア・プレシール侯爵令嬢一人に返り討ちにされた』、と。


 それを聞いた当初は王国兵達も流石に訝しんでいたが、レーリャ公爵令嬢の証言や状況証拠、後々の聞き取りによる後押しもあって、ミラキアが今回の騒動を収めた立役者となってしまった。


 ミラキア自身、そんな事になるなんて思っておらず、時間を取られる事を嫌い、拒否しようとしたのだが、事件を解決した立役者に何の褒賞も与えないなんて訳にもいかず、レーリャ嬢にも怒られながら彼女は渋々、王城への召喚に応じ、今に至るのだった。



(……こんな事になるならローガとの契約に私の事も秘密にするよう盛り込めばよかった)


 ローガとの契約はあくまでマギアシルビィに関する秘密だけ。どうにもローガにしてやられたような気がするミラキアは内心、僅かな後悔と共に彼への怒りを燃やす。


 一見、理不尽にも見えるが、連行される際、ちらりとミラキアの方を見たローガがしてやったりの表情を浮かべていたので、ある意味、彼女の怒りは正当なものなのかもしれない。


 ともあれ、今回の騒動を通して結果的にミラキア・プレシールの名前は他の兄妹達と同様か、それ以上に有名になってしまった。


 それこそ、巷で噂になっていた〝白銀の魔法令嬢〟マギアシルビィよりも、だ。


 魔法少女を布教したい彼女にとっては不本意極まりない結果だが、たった一人で〝八神将〟を含む魔皇国側の戦力を撃退したとなれば有名になるのも致し方がない。


 まして、それが今まで名前すら聞いた事のない貴族令嬢となれば尚更だろう。


 そして、当然ながら今回の件は彼女の家族も知る事となり、父親であるエバンは衝撃のあまり腰を抜かし、母親であるレオナはあの凡庸な娘がそんな事できるわけないと一向に信じようとせず、兄妹達は多少、驚きはしたものの、素直に賞賛し、ミラキアの活躍を喜んだ。


 余談だが、彼女の力、魔法の才能に目を付けた他の貴族達からお見合いや婚約の話が殺到し、両親がさらに泡を吹く事になるのだが、それはまた別のお話。


 ともかく、この事件を契機に、彼女の日常はがらりと変わる事になる。


 望む、望まずと関わらず、ミラキアの存在はあらゆる勢力から注目の的となり、彼女の目的である魔法少女のための推し活をする時間すら危うくなってしまった。


 この時の経験から軽率な行動は自らの首を絞めると学んだ彼女だったが、その甲斐なく、この先もミラキアは魔法少女の矜持に従い、誰かを助けようとしては次々にトラブルへ巻き込まれていく事に。


「うぅ……私は魔法少女を布教したいだけなのに…………」


 心の底から漏れ出たその呟きは誰の耳にも届かないまま小さなため息と共に消えていく。


 果たして、彼女は魔法少女という存在を世の中に布教する事ができるのか…………類稀なる魔法の才能を持ってしまった夢見る天才令嬢、ミラキアの前途多難な推し活はこれからも続いていくのだった。








最後まで魔法令嬢マギアシルビィの物語を読んでくださり、ありがとうございます♪


このエピローグを以って、当初、予定していたミラキア・プレシールの物語は終わりとなります。


ここまで応援してくださった皆様には感謝を伝えると共に、評価、感想等などを是非、お待ちしております!


それでは最後にもう一度、本当にありがとうございました!



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