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弱小ショタなのでビキニアーマーを嫁にした  作者: ろーくん
第六章:貴族令嬢

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第78話 社交界を乗り切る秘策です


 1500人―――貴族の集まり(パーティー)にしても無茶苦茶な参加数だ。



「いやはや、殿下におかれましては―――」

「ぜひ、先の戦いにおける殿下の武勇伝を―――」

「このたびは祝い事がこれほど重なり、殿下の御威光が―――」


 次から次へと挨拶にくる貴族の大人たちに内心うんざりしながら、僕は何とか笑顔で応対し続ける。




 今日の社交界は王家主催。


 なので僕の参加は必須だし、アイリーンとエイミーもいつもよりメイクアップ&ドレスアップさせられた姿で僕の左隣りに並んで愛想笑いをふりまいていた。


 やってくる人達は、領地持ちの大貴族から無名の下流貴族まで様々。王家主催ともなると、一発大きなコネを築くチャンスだからって果敢に参加してくる人達が多い。


「(力のある人だと、やっぱり……)」

 エイルネスト卿を筆頭に、王室支持派の顔ぶれがズラリ。それに混じって僕も知ってる反王室派の貴族もしれっと20~30人程度、素知らぬ顔で雑談をかわしてる。

 王国の各部署の大臣や将官、あるいはその代理者なんかもわんさかだ。


「アイリーン、今回は(・・・)あまり無理になさらないでくださいね? なるべく、お話だけで済ませてください」

 貴族の教養が大の苦手なアイリーン。それは今でもまだまだぎこちないレベル。

 けれどこういう場に出る以上はそうも言ってられない。なので僕はアイリーンに秘策を用意して、これまでの社交界も乗り切ってきた。

 (※「第20話 社交界は面倒なのです」参照)


 だけど今は妊娠中。まだ初期も初期だからといっても身体を動かす(・・・・・・)ことはなるべく慎んでもらわないと。



「大丈夫ですよう旦那さま、ぜんぜん動けちゃいますから♪」

 お腹の膨らみはまったく分からない。

 3カ月にも満たないうちは当然だけど、それでもお腹に生命が宿っていることには違いないんだ。


「ダメです、加減してください。派手に動き回ったりとかは絶対ダメですからね? エイミー、出来れば常にアイリーンの傍にいてください」

「はい、お任せください殿下っ」

 戦闘のド素人のエイミーがすぐ傍に張り付いていれば、巻き込んじゃって危ないから、大きな動きは自然と出来なくなる……存在そのものがストッパーになる。

 アイリーンは そんなぁ と呟きながら軽く肩を落としていた。






 アイリーンが社交界を乗り切るための秘策。それは……



 ヒュンッ……トスッ!!


「おおっ、また中央に! さすがは音に聞こえしアイリーン妃だ」

「こうも連続で当て続けられるものなのか、これは恐れ入った」

「現役の腕前はいささかも衰えていらっしゃらぬようだ、素晴らしい」


 今回、はじめてアイリーンの “ 武芸披露 ” を目にする貴族達を中心に、あちらこちらで感嘆の声があがった。

 これがアイリーンに、貴族としての教養が不足していても社交界でやっていけるよう、僕が思いついた秘策だ。


 見世物的になっちゃうけれど、無理に王弟妃様を取り繕わせるよりも世間で武名を轟かせてることを利用して、逆にそっちに突き抜けてしまおうという作戦。


 どんな武器でも扱えるから、身体を大きく動かさない今回のような投げナイフでの投擲もハイレベルで見応え十分。

 アイリーン自身はやっぱり身体を大きく動かすようなことの方がいいっぽくて、すっごく物足りなさそう。



「(けど、この会場で同じように真似出来る人はいない。10m先の的の中心に20回連続ヒットの投剣術を軽くやってのけるんだから、やっぱりアイリーンはスゴいや)」

 貴族夫人達は口や作法でアイリーンに勝てても、こうした一芸では絶対にかなわない。なので今ではすっかり、武闘派貴族女性という認識がご婦人たちの間に定着していて、会話中にアイリーンが多少の粗相をしても気にしたり、ここぞとばかりに嫌味や悪態をついてくるような事もない。


 僕の秘策は上手くいったんだって、数十回の社交界を経てようやく実感できた。



「お疲れ様ですアイリーン。エイミー、アイリーンのケアをお願い致しますね」

「かしこまりました殿下。では皆様、誠に失礼ではございますが、私達はこれにて中座させていただきます。引き続き、今宵の会をどうぞお楽しみくださいませ」

 口上を述べると、エイミーはアイリーンの手を引いて会場を出る。


 アイリーンの体調が悪くなったわけじゃない。これは事前に取り決めておいた演出だ。





「うん、いい感じに抜けてくれたね。義妹(エイミー)さんも今の立場に慣れてきたようで何よりです」

 二人と入れ替わるようにして僕の所へ来たのは他でもない、この国の現国王である僕の兄上様(長男)だった。


「これは兄上様、もうお話はよろしいのですか?」

「ええ、必要な交流は(つつが)なく済ませました。……全ての貴族の方々が、気楽に接することのできるような方々であれば、こういう集まりも楽なんですけれど」

 明らかに疲れたという素振り。ふと遠くのテーブルに視線を向けると、いつもサポートに回ってる宰相の兄上様(次男)が、他の貴族男性とお話しているのが見えた。

 どうやら兄上様(おうさま)は今回、一人であいさつ回りを頑張ってたみたい。ホント、王様も大変だ。



「それはそうと、奥様(アイリーン)の調子は本当に大丈夫でしたか?」

 中座させる演出は、アイリーンが僕の子供を身籠っていることを強く示すために、兄上様達がお願いしてきたことだ。

 パーティー中は、高名な武芸者の一端を見せて王弟第一妃の格を示した。

 けれど妊娠してるのは事実。無理して本当に体調を崩してないかどうか、心配してくれたらしい。


「はい、アイリーンは元気いっぱいです。むしろもっと暴れたがっているくらいで困ってしまうほどです」

 周囲に聞こえないよう、こっそり伝える。演出はあくまで、妊娠しているので大事を取ってこの辺で失礼します、というものだ。

 だけど元気いっぱいの暴れ足りない妊婦とか、説得力がなくなる。



 僕の耳打ちを聞いて、兄上様はクスクスと楽し気に笑っていた。


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