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弱小ショタなのでビキニアーマーを嫁にした  作者: ろーくん
第七章:獣者と毛物

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第105話 さあ一次産業です



 当面はメリブランシェ家が軍の食糧全量を供給する。


 その間にあげられる利益はすべてメリブランシェ家が独占できる―――だけどそれはあくまでも当面の(・・・)お話だ。




「半年後にエーポル家が全量の10%分の供給を始めます。そして1年後、僕のルクートヴァーリング地方から全量の5%分を、さらに1年後にはエーポル家の拠出割合が15%になり、2年後にはルクートヴァーリングの割合も10%に……という話で落ち着いたと聞いています」

 つまり、最初の6カ月分は軍への食糧拠出で得られる全利益をメリブランシェ家が独占することを許すけど、徐々にエーポル家と僕の割合を増やしていって、メリブランシェ家の拠出割合は減らしてく―――この案でメリブランシェ家も了承した。


「元々お父様もお爺様も独占権にはこだわっていませんでした。むしろ領内の生産高が過剰気味で、長期保管が可能な倉庫を増やすかどうか悩んでいたんですよ」

 つまりメリブランシェ家は、今回の件で折衝案に持ち込んだのは面子の問題だ。


 他貴族に(おとし)められそうになったけど被害なく解決。そこまではよくっても、それによって空いた穴を埋めるのにボランティアを強要されるのはまっぴら。

 舐められて、今後も便利扱いされるだけのお人好しではないと示さなくちゃいけなかったわけだ。


「(メリブランシェ家はただでさえ農業一族。ルーツをたどればすぐに庶民だった頃に当たる家柄だから、他貴族はその辺を攻撃材料にしたがる。貴族家としてやっていくためには、絶対に舐められるわけにはいかないんだろうなぁ)」

 農園での徴収作業の合間、僕達はクリンツ差し入れの " おにぎりもどき ” を一緒に食べながら雑談に花を咲かせてた。




 おにぎりもどき、っていうのは僕の心の中でだけの呼び方で、この世界での正式名称は “ モービリオ・ライス ” っていうなんかシャレた名前だ。

 

「(思いっきり " おにぎり " なんだもん。前世の記憶とかなかったらその名前でも良かったかもしんないけど、しっくりこないんだよね。 “ モービリオ ” って何?)」

 違いがあるとしたら、水分少な目に炊かれた固めサッパリなご飯で作られてる事と、表にはノリやゴマなんかがない事。

 そして具材は基本お肉とかで、梅干しみたいな酸味の強いものや、おかかやシャケのような魚介類、あと漬物なんかの類もない。


「(単純に梅干しっていうものがない。魚介類は保存や日持ちの関係かな? 漬物は単純にこの形態に合いそうなモノがこの世界にはない感じだ。……まぁ、味付け濃くして煮込んだお肉と、水分少な目のお米……この組み合わせがよく合ってて美味しいから、これで十分だ)」

 よくある異世界転生モノの展開なら “ ないなら作ればいいじゃないか! ” みたいな事言って、都合よく閃いたーってな具合で、梅干しとか作って売り出したらたちまち評判にー……って流れなんだろうけど、現実はそこまで甘くない。


 人間の好みっていう壁は存外厳しくて分厚い。


 実際、前世じゃ僕も梅干しはそこまで好きじゃなかったし、漬物なんかもそれほど美味しいと思った事はなかった。

 この世界に生まれ変わって色々な料理を食べたり、お話を聞いたりしてるとわかる。仮にやってみて上手く出来たとしても、それらが好みだって人は、この世界ではかなり少数派だ。


「(お肉を入れるのがこの “ おにぎりもどき ” の定番になってるしね。間違いなく、この世界の人々に一番好まれてるのは、うま味が強くて分かりやすい味だ)」

 それを子供舌と馬鹿にする気はない。

 むしろ周りに馬鹿にされないよう、無理して本当は好みじゃないモノを嗜んでカッコつけてる方がバカだ。


 僕的にはハンバーグやオムライス、パフェなんかを嬉しそうに堂々と楽しんでるスーツ姿な企業のお偉いさんなおじさんとか、最高にカッコイイと思う。




「そういえば綿花の栽培についてはその後、いかがですか?」

「ええ順調ですよ。獣人さん達はかなりやる気があるようです。元々、少量ながら生産していた事もあって、大々的に作ることが決まった時には、大変喜んでました」

 ルクートヴァーリングでやる当面の産業は決まった。


 食糧の増産と綿花栽培だ。


 規模ではクリンツのとこ(メリブランシェ家)にはまるで及ばない。けどルクートヴァーリング地方の強みは王都との距離が近いこと。


「(それを活かせれば、ある程度のシェアは安定して獲得できるはずだ)」

 食糧に関しては、農作物の栽培さえ成功させ続ければいいので、まだ気は楽。

 だけど綿花の方は少し悩みどころ。木綿にしてそのまま卸すだけじゃ厳しいはず。


 やっぱり何か製品まで考えていく必要があると思ってる。



「獣人さん……といえば、もしかして |" 獣毛織 ”《じゅもり》 をお考えですか、殿下?」

 クリンツが、聞きなれないワードを口にする。僕は小首を傾げた。


「じゅもり?」

「ええ、 “ 獣毛織 ” (じゅうもうおり)とも言いますが、獣人さん達や獣の毛を糸にして、木綿や生糸に混ぜて作る織生地です。他繊維と相性の良い獣毛が必要なので簡単にはいかないですが、もし用意できそうでしたら試しに木綿糸に少量を織り交ぜたものを作ってみるといいかもしれませんよ」

 獣人さん達の抜け毛のことを調べた時は、そんな織物のことはどこにも書いてなかった。


 きっとすごく珍しいモノなんだろうな、一応覚えておくことにしよう。



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