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「ぎ、牛丼?」
「そうです。牛丼です。」
久しぶりに聞いたその単語に、一瞬目を輝かせてしまった。優樹を凝視していた顔を慌ててそっぽに向ける。
牛丼なんて家でお手軽に出来る[焼肉のたれ]+[スーパーの肉]を食べたのが最後か?
家ではなく、外の店に最後に食べに行ったのはいつだろう。
奥底から引きずり出してきた記憶によると、おそらく高校の夏。仲良しグループと超特盛を食べに行ったくらいか。
そりゃそうだ、いくら仕事をし続けているからといって
そんな頻繁に外食出来るほどリッチな生活は送れない。
たかが牛丼だと思うか?しかし、たかが牛丼。されど牛丼。
頻度よく行っていたら生活費が無くなってしまう。
そんなことを考えながら優樹をチラリと見ると、捨てられた子犬のような目と目があった。
いかんいかん。流されたらだめだ。
「行くなら一人で行ってください。僕は帰ります。」
断った。
本音を言うと行きたい。
決して牛丼が嫌いなわけではない。むしろ大好きな部類だ。
特製のタレが染み込んだ牛肉に、ほかほかのご飯。
いかん、よだれが出かけた。
けど、
こいつとは絶対行かない。と言うより行ってはならない。
もうこいつと関わるのはやめるって決めたんだ。
過ちを犯した人間は成長するんだよ、二度と悲しい顔を見ないようにするために。
この返答は優樹を思ってのことか、自分を守るためか。
どちらが答えなのかは考えないようにした。




