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カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ……

















カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ……



















カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ……カチャッ





「……ふぅ、やっと終わった」




長いプログラミングを終え、達成感が心の中に広がっている。

しかし、その達成感はすぐに違った感情に変わる。




「……あ、ここ間違えてる」







カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ……












カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ……







◆□◆□







カタカタカタカタ……カチャッ




「…はぁ、今度こそは終わったかな」









結局俺は、そもそもの土台となる部分が間違っているのを見つけてしまい最初からプログラミングをやり直した。






両手を大きく挙げ10時間ぶりの伸びをした。

ばかやろう、10時間なぞ労働基準もへったくれもないじゃないか。







ただ目の前のパソコンだけが光を出している仕事場の時計を見ると、短い針は2時を指していた。

もちろん深夜だ。







「いつのまにか一人になってたみたいだな」












俺はこの会社であだ名がついている。


といっても、決してフレンドリーな物ではない。




俺のあだ名は誰が付けたのやら

仕事男(ワークマン)





確かに所帯も持ってない俺は朝から晩まで仕事、仕事、仕事の毎日。

もう仕事が趣味と言ってもおかしくない所まで来ているといっても過言では無いだろう。





だが、だからといってこの名が嬉しいわけでもない。

そんな名前で俺を呼んでからかうより、自分のノルマを終わらせることだけ考えればいい。

お前らが青春をすごしてた高校や大学とはもう違うんだ。







「……こんな残業、家庭を持ってたら辛いって感じないのかな」


思わず出た本音を慌てて手で押さえ込む。

しかし周りに人はいない。


当たり前だ、この会社でこんな時間まで仕事をするのは俺ぐらいしかいない。





他の奴らは早く家に帰りたがるが、俺は家に帰っても待つ人はいない。

真っ暗な部屋の小さな光を付けて、寂しいご飯を食べ、寝て、会社。この繰り返し。





とても帰りたいとは思わない。






このまま何も考えず仕事を、仕事だけやれればいいのに。









だがしかし、腹の虫は正直に鳴いた。


お腹がすいた。


でも、家には帰りたくない。


あんな寒々した家になんか。





「……とりあえず夜飯かな」






俺はゆっくりと腰をあげ、手持ち鞄を手に取り、オフィスをでた。





◆□◆□









「……はぁ」






エレベーターは時間の関係で止まっているので、仕方なく階段を使って下に降りることにした。


降り途中の16階と15階との間の窓には、綺麗な満月がうつっていた。









それにしても、やっぱりエレベーターが無いとすると


「……長い」



当然だ。

俺が担当しているオフィスは18階。


運動など家から会社までの歩きくらいの俺にこの階段は正直厳しい。









「あ!ワークマンさん!」



10階の階段に差し掛かろうとした時、資料室の方から声がした。

この妙にハイテンションでキーの高い声はあいつだろう。





疲れきった顔で後ろを振り向くと、まるで買いたての剣山のようなツンツン頭がニコニコした顔でこちらに手を振っていた。




「こんばんは、金子(かねこ)君も仕事終わりですか?」





俺の敬語混じりの問いかけを受け、金子は少し顔を沈ませたように見えた。

ため息混じりの声は悲しみをおびているように聞こえた。



「そんな他人行儀にしないでくださいよ…… 昔みたいに優樹(ゆうき)って呼んでくれればいいんですから」



そんな言葉は、右耳から左耳へとゆるやかに抜けていった。




「それで、俺に何か用ですか?」



実際は分かってる、優樹はただ俺を見つけて突拍子に声をかけただけであろう。

用などあるわけがない。

案の定、優樹は顔に少し曇りを浮かべしどろもどろしている。



「用がなければ、俺はこれで失礼します。」



彼に背中を向け、下り階段に足を降ろした瞬間、思いがけないほど妙に真剣なトーンの声が俺を誘い掛けた。









「これから、牛丼食べに行きませんか?」




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