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聖女の身代わりとして捨てられた私は、隣国の魔王閣下に拾われて溺愛される  作者: 夏野みず


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10/11

新婚生活と、甘すぎる皇帝陛下の独占欲

 賑やかな婚礼の儀が終わり、私とヴォルデレード様の新しい生活――いわゆる新婚生活が始まりました。


 けれど、そこで私を待っていたのは、以前にも増して激しくなった彼の「甘やかし」の嵐でした。


「ヴォルデレード様。あの、そろそろ執務に戻らなくてよろしいのですか……?」


 私は、彼の膝の上に抱き上げられた状態で、恐る恐る尋ねました。  ここは皇帝の執務室。  本来ならば、山積みの書類を片付けるべき神聖な場所なのですが……。


「嫌だ。今日はまだ、君の魔力が足りない」 「先ほどからずっとこうして触れ合っていますし、魔力は十分に満ちているはずですけれど……⁉ 」


 彼は私の腰に腕を回し、首筋に深く顔を埋めています。  魔力を分けているというより、ただ単に私を堪能しているようにしか見えません。


「足りないと言ったら足りないのだ。レティシア、君は自分の価値を分かっていない。……私にとって、君の香りはどんな高級な酒よりも私を狂わせるのだぞ」


 耳元で低く囁かれ、私の心臓はまた激しく脈打ち始めました。  結婚してからも、彼の情熱は衰えるどころか、ますます勢いを増しているようです。


「……あ、あの、メイドたちが掃除に来てしまいます」 「来させないように言いつけてある。今は、私と君だけの時間だ」


 彼はそう言うと、私の唇を優しく、けれど断固とした意志を持って塞ぎました。


 ヴォルデレード様の溺愛は、留まるところを知りません。  朝起きてから夜眠るまで、彼は隙あらば私を抱き寄せ、愛の言葉を囁き続けます。


 おかげで、かつては「冷酷な魔王」と恐れられていた陛下の評判は、今や「妃以外は目に入らない愛妻家」へと塗り替えられてしまいました。


 そんな平和な日常の中で、私は聖女としての仕事にも精を出していました。  帝国の荒れ果てた大地を浄化し、枯れていた泉を蘇らせる。  私の力が、この国の人々の笑顔に繋がることが、何よりも嬉しかったのです。


「レティシア様! おかげさまで、今年の小麦は例年の倍以上の収穫になりそうです!」 「まあ、それは良かったわ。皆さんの努力の結果ですね」


 街へ出れば、多くの国民が私を慕って集まってきます。  その光景を、ヴォルデレード様は少し離れた場所から、満足げに、けれどどこか複雑そうな顔で眺めていました。


 城に戻ると、彼はすぐに私を自室へと連れ込みました。


「レティシア。今日も街の男たちが君を見ていただろう。……やはり、君を外に出すのは止めるべきか」 「閣下、それは困りますっ‼ 私は帝国の妃として、皆さんの役に立ちたいんです」


 私が少し頬を膨らませて抗議すると、彼は負けを認めるように溜息をつきました。


「……分かっている。君が光り輝くほど、この国が救われることも。……だが、私の独占欲はそれを許せないのだ。君が微笑む相手は、私だけでいいのに」


 彼はそう言って、私の白銀の髪に指を通しました。  その仕草があまりに切実で、私はつい彼の胸に飛び込んでしまいました。


「大丈夫ですよ。私の心が一番向いているのは、いつだってあなただけですから」


 私の言葉に、彼は一瞬驚いたように目を見開き、それからとても幸せそうに私を抱きしめ返しました。


「……ああ、本当に。君がいれば、他に何もいらない。……愛しているよ、レティシア」


 窓の外には、黄金色に輝く帝国の街並みが広がっています。  かつて死を待っていた私が、今こうして愛する人の腕の中で笑っている。


 それは、どんな魔法よりも奇跡のような出来事でした。

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