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ピンク・スコーピオン!!  作者: 水柴ロク
52/61

#52 ピンクの花の、花言葉

挿絵(By みてみん)

惑星キヅナの別荘で、オリオン18世はミカを連れてくつろいでいた。

「どうした、ミカ。こっちに来てくつろがないか?」

警戒するミカに、オリオン18世が冷たい笑顔で問いかける。

「どうした、ミカ。地球のオレンジジュースが飲みたくなったか?それとも、ピンクの花が見たいのか?」

ミカはオリオン18世のオレンジ色の目を見て首を振る。

「地球に行きたいのなら一緒に行こう。侵略の手筈は整えてある」

ミカは動揺して、叫ぶ。

「やめて!アリーヤの地球を汚さないで!」

するとオリオン18世の眉間にシワが寄った。ワイングラスを叩き割る。

「またアリーヤか!どこへ行っても夫の名は呼ばずにアリーヤ、アリーヤ、アリーヤ!その地球人のどこがお前を惹きつける!?」

突如、オリオン18世とミカから5メートル離れた窓ガラスが派手に割られ、1人の少女が入って来た。ミカは驚く。が、オリオン18世はそんな様子も見せずに当然の来訪者を静かに睨みつけた。

「客は玄関から入ってくれ」

窓から来た少女、アリーヤ・カルティエは、立ち上がって軽口を叩く。

「セキュリティが硬いもんでさ、お届け物があるんだ」

「ほう、我々夫婦にか」

「冗談止めてよ、ⅮⅤモラハラ星人の旦那様。お届け物はミカにあげるの!」

アリーヤはミカにもらった指輪を示した。ミカの顔に笑みが宿る。

「アリーヤ!宇宙に来れたんだね!夢じゃないよね!」

「現実だよ、ミカ。今助けるからね」

オリオン18世は怒りに震えた。こいつがアリーヤか。

ミカがアリーヤに近づく。アリーヤは指輪を差し出した。ミカは首を振る。

「その指輪はもう、アリーヤの物だよ。指輪は宇宙そのものだから……」

オリオン18世は窓の外を見た。護衛がやられている。バミリオン人と地球人が見えた。アリーヤの指輪が光った。

「え?この光は―」

ミカが目を見開く。

「危ない!」

突然、ミカがアリーヤを突き飛ばした。オリオン18世がガラスの破片でアリーヤを攻撃しようとしたのだ。間一髪で、攻撃を避けることができた。オリオン18世は迫りくる。

「ミカ、お前は私の妻だぞ?なぜ私のいうことが訊けぬのだ?そんなに私のことが嫌いか?」

アリーヤはミカの手を取って、近くの扉を開けて階段を駆け下りる。外ではマイクやブリトニー、ライアンたちがデッド・オリオン軍を相手に大暴れしていた。階段の途中で、突然ミカが倒れる。アリーヤはミカを起こそうとする。

「ミカ、どうしたの?立って!逃げるんだよ!」

アリーヤはふと、ミカの腕に大量のアザが出来ているのを見てしまった。夫にやられたんだ。アリーヤはミカを必死におんぶして、階段を駆け下りた。

すると2階の通路に出たが、東側からオリオンの兵士、北からもオリオンの兵士が。挟み撃ちか―

「アリーヤ、ちょっとだけ、指輪を貸して」

ミカが指輪をアリーヤから取ると、人差し指に指輪をつけた。ミカの髪の毛が逆立ち、謎の衝撃波がびりびりと、廊下を伝わった。次の瞬間、オリオン兵士の頭に炎が付いて、兵士は燃えだした。兵士は断末魔を上げて、骨も残らず灰になった。次々と新手の兵士が現れては、ミカの指輪の力の前に、死んでいく。

炎が燃える。人が燃える。ミカが崩れるように倒れた。アリーヤは、親友のミカを肩にまわして、燃える建物の出口を探していた。背後から、オレンジ色の目をしたオリオン18世ががガラスの破片を持って迫りくる。ミカの叫び声。

「逃げて!!」

ミカがまたアリーヤを突き飛ばすと、彼女のお腹にガラスの先端が刺さる。口から青い血が流れた。アリーヤは悲鳴を上げた。ミカが指輪を光らせると、オリオン18世は苦しみだし、目から、口から、全身から炎を吹き出し、叫びながら絶命した。膝から崩れ落ちるミカ。

「見てたでしょ?最低でしょ?残酷なんだよ、私。」

彼女は血と涙を流しながら、倒れ込んだ。アリーヤはミカに駆け寄る。

ミカは小さな声で言った。

「アリーヤ、言ってたよね、地球はイヤな所だって。ここと同じで、争いが絶えないの。私、もうちょっとアリーヤと一緒にいたかった……平和な宇宙でのんびりおしゃべりしたかったな……」

「まだ間に合うよ、ミカ。治療を受けよう。ここを出れば……」

「優しいね、アリーヤ。私は命を殺したんだよ?私に優しくしてくれたのは、ローザとアリーヤだけだった。」

アリーヤはミカを抱きかかえて、言葉を聞いていた。涙があふれて止まらない。ミカは急に、ピンクの花のことを言った。

「ピンクの花の花言葉、覚えてる?」

アリーヤは答えた。

「(大胆)(純愛)(貞節)。」

「アリーヤ……」

「何?ミカ……」

ミカは、アリーヤに指輪を渡して言った。

「きみの周りが愛にあふれて、優しさと幸せに満たされますように」

ミカは目を閉じた。

「最後に会ってくれて、ありがとね」

ミカの手が落ちた。

パワードスーツを着たブリトニーとマイクが入ってくる。

「アリーヤ、無事だったか!」

マイクはボロボロに焼けたオリオン18世の死体を見て言う。

「ピンク・スコーピオンが勝ったぞ!オリオンは降伏だ!」

惑星キヅナ中に、デッド・オリオンの帝王オリオン18世死亡のアナウンスが流れる。宇宙帝国デッド・オリオンは、バミリオン人の捕虜となり、一部が遠い宇宙へ逃げ出した。

ブリトニーはうなだれているアリーヤに話しかける。ミカの亡骸を見た。

「なぁ、その死体は誰だ?」

「……味方だよ」

「そっか。なら墓を作ってやらねぇとな」

アリーヤは名もなき自分たちの宇宙船に乗って、遠い惑星、地球を目指していた。手にはミカの遺骨が入った箱と、指輪が入ったカメラが握りしめられていた。

2年後。スコーピオン号。14歳のアリーヤは、思い出写真館のすみにある、ピンクの花の写真を指差した。ホノカが訊いた。

「この写真って、もしかしてミカちゃんの……」

「写真の中で、ミカは生きてる。カメラにも、指輪にも」

ホノカは何も言わずにアリーヤにハグをした。

アリーヤの目から、一滴の涙が静かにこぼれ落ちた。

つづく


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