#4 廃墟
前回のあらすじ。
惑星ブルームにピクニックへ来ていたセリア、リリイ、エドナ。危機に会ったセリアを助けたアリーヤは、リリイにごちそうしてもらい、自身のカメラで写真を撮り、その写真を記念に手渡す。夜、エドナが謎の宇宙人にさらわれ、エドナを助けに行くアリーヤ。しかし、アリーヤもその宇宙人に捕まってしまう。
「私はリーフ・フライ。アーラヴォルノ族のヒ…いや、誇り高き戦士だ」
「エドナを返して!」
リーフ・フライと名乗った謎の宇宙人。
全身が緑色で、3つの角と、黄色い大きな目をしている。手には特殊な形をした刀を持っているが、彼女はなぜ、エドナをさらったのか?
アリーヤはたずねる。
「なぜ、エドナをさらったの?」
「我々アーラヴォルノは戦闘民族だ。私は権力争いに一度敗れ、この星に逃げてきた。しかし宇宙船が壊れ、食料も尽きたのだ。この娘と交換だ。そちらの食料を全て貰おうか」
リーフ・フライはアリーヤの手をひき、エドナが閉じ込められている部屋へと連れて行く。エドナは部屋の地べたに寝そべっている。
気を失っているようだ。
アリーヤはリーフ・フライが腕に装着している特殊な形状の刀に心底おびえながらも、声をふりしぼった。
「私は今、食料はもっていません。ですが、この一件は平和的に解決させます。」
リーフがたずねる。
「平和とはなんだ?それは食べられるのか?」
アリーヤは答える。
「平和は食べ物じゃない。でも、必要なものだよ」
リーフはため息をついた。
「食べられるもので無いなら意味は無い。帰って貰おうか」
刀を揺らすリーフ。
アリーヤはリーフに言った。
「あなたが今欲しいのは食べ物なんだね。でも、それを理由にエドナを犠牲にして良いワケがない!それに、リリイやセリア達から食料を貰ったって、直ぐに底を尽いちゃうよ!ピクニック用の分量しか無いんだし!」
「交渉決裂だ、帰れ!」
リーフはいらだちを覚えているようだ。
アリーヤは叫ぶ。
「話を聞いて!例え食料が来ても、それがあなたの体に合うかわかんないでしょ!リリイたちが持ってるのは地球人に合う食料なんだし!」
「ええい、まだ言うか!私は気が短いのだぞ!」
リーフは言い返す。
アリーヤは激怒した。
「この分からず屋!」
その瞬間、アリーヤの持つカメラがピンク色に光り輝く。
「また!?」
とまどうアリーヤ。
遠い森にあるアリーヤの宇宙船が、天高く舞い上がり、物凄い勢いで大空を飛び立った。
同じ時刻、リリイは青い夜空から、怪獣が鳴くようなけたたましい鳴き声をきいた。
「あれは何!?」
リリイが指さす方向には、空を横切るアリーヤの宇宙船の姿があった。それは動物のサソリの怪獣ように見え、らんらんと光るピンク色の鋭い目のようなヘッドライトがある。その怪獣のような宇宙船は、暗い森の奥から出現し、リーフとアリーヤ達のいる廃墟にたどり着き、リーフをそのピンクに輝くライトで威嚇した。
その様子にたじろぐリーフとアリーヤ。
アリーヤはびっくりし、その場で転んでしまった。と、同時に宇宙船は機能を停止し、その場の空中に静止した。
「何者か知らんが、邪魔はさせんぞ!」
するとアリーヤのズボンのポケットから、1つの実がこぼれ落ちる。
アリーヤは森で拾った毒の実を、ズボンのポケットに入れたままだった事を忘れていた。
紫色の5センチ程の実を、手に取るリーフ。
「なんだ、食べられるものがあるでは無いか!これを貰っていくぞ!」
アリーヤはそれに気づき、リーフを止めようとする。
「ちょっとまってよ!その実はダメ!毒があるの!」
リーフはそれを信用せず、その場で実をかじった。
リリイは、アリーヤ、エドナの安否を心配しながら、その場を動けずにいた。1時間が経過しようとしていた。
すると、遠くの森から声が聞こえた。
エドナが手をふっている。
「おおーい!」
「エドナ!無事だったのね!アリーヤは?」
エドナのすぐ後ろで、瀕死状態のリーフ・フライをかかえ歩いてくるアリーヤ。
「リリイ!解毒剤を用意して!じゃないと、この人が死んじゃう!」
それを聞いたリリイとセリア。リリイはアリーヤにたずねる。
「アリーヤ、それ、エドナをさらった宇宙人でしょ!?」
セリアも反発する。
「ほっときなさいよ、そんなヤツ!」
セリアの反発に、アリーヤも反論する。
「ううん、放っておけない!たとえ私たちと違う宇宙の民族でも、同じ命だもん!お願い、リーフ・フライを助けて!」
セリア、リリイ、エドナは下を向いた。
「どうしたの……?」
アリーヤは3人にたずねた。
リリイが口を開いた。
「解毒剤は、無いのよ」
「無い?……無いって、どういうこと?」
「私たち、ピクニックに来ただけだから、医療用具はコロニーに置いてきたの」
「じゃあ、この人は……リーフ・フライは助からないの?」
「助かるよ」
ふと、背後から女性の声が聞こえる。
アリーヤ達が振り向くと、そこには70歳ぐらいの、白髪のあるアフリカ系女性が立っている。その人物は、リーフ・フライやアリーヤの所へ歩いて来ると、小さな瓶に入ったオレンジ色の液体を取り出した。
「これを飲ませれば、よくなるよ。」
「あの、あなたは……?」
アリーヤはたずねる。
「あたしはモヨ。あんたが入った廃墟の持ち主さ。」
モヨと名乗る女性は、アリーヤに言った。
アリーヤは驚きを隠せない。
「早くしな!その子を助けたいんだろ?」
モヨはそう言って瓶を手渡す。
2日後、セリア、リリイ、エドナとの別れがやって来た。スペースコロニーから来た宇宙船に乗った3人は、アリーヤに手をふる。
「3人とも、元気でね!」
「アリーヤこそ!」
3人と別れた後、アリーヤはモヨにお礼を言った。
「ありがとうございます、ウペンド・モヨ。なんとお礼を言ったら良いか……」
「そんな事はいいさ、それより、1人で勝手に、廃墟に入らない事だ。友達がさらわれたら警察を呼びな。勇気と無謀は違うからね。あと、あたしの土地に置き去りにしている、変な宇宙船も回収しとくれ。あれはあんたのだろ?」
モヨはにこやかに言った。
しばらくして……
アリーヤは自身の宇宙船に乗って、旅をする事にした。
「ところで、この近くにエデン・コロニーっていう宇宙住宅街や商店街があって、そこで食料が調達出来るって!リーフ・フライさん!」
「エデン・コロニーか。聞いたことがある。その街には、天下の剣豪であるイトウ・マイクがいるという。そいつを仲間にすれば良い。」
「そうと決まれば出発だね!みんなを笑顔にするために!」
アリーヤは宇宙船を出発させた。
一方、別の場所では……
5人の子どもが、宇宙をさまよっていた。
その5人は、宇宙船に乗っていた。
5人の子どもは、見知らぬ惑星にたどり着いた。
1人の宇宙人が、5人を家に迎え入れた。
宇宙人は言った。
「あなた達を、地球からさらって来た人達は、もうすぐここへ来るでしょう。」
5人のうち、1人が訊いた。
「何でそんな事がわかるんだよ」
宇宙人は答えた。
「この星は、あなた達をさらって来た人達の領土だからです。だから逃げなさい。」
また1人が訊いた。
「どこへ逃げればいいの?」
宇宙人は、夕日を指して答えた。
「あの夕日の方角へ行きなさい。レジスタンスがいます。そのレジスタンスの名は、クレッセント。」
「変な名だな」
最初の1人が言った。
「なぜそう思いますか?」
宇宙人は訊いた。
「夕日の方角にあるのに、名前がクレッセントだとよ。おかしいな」
宇宙人は、5人に変装するように言い、5人はその惑星に合う衣装に着替えた。
5人が宇宙人の家を出て、しばらくすると、
1人が家の方角へ振り向いた。
家は無くなっていた。
「ホントに奇妙な星だな」
最初の1人が言った。すると……
「おれさ、地球に帰りたいのよ」
車椅子に乗った、1人の少女が言った。
「地球にさ、ケンカ別れした幼馴染がいるんだ」
「だれだよ、そいつ」
もう一人が訊いた。
「アリーヤ・カルティエさ」
つづく……
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