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ピンク・スコーピオン!!  作者: 水柴ロク
26/61

#26 オクティア星の遺物

挿絵(By みてみん)

ジュリア副長を置いてシャトルを発進させてしまった船医のセリア。意識がもうろうとする中、謎のタコ型ヒューマノイドが銃口を向ける。

「撃たないで……」

セリアは手を上げた。戦いの経験なんてない。彼女は医者であり、戦闘員ではなかった。敵が銃のトリガーに手をかける。絶体絶命だ。と、その時。敵は突然銃を落とし、首元を掴んでもがき苦しむかのように動いた。数秒後、敵はこと切れるかのように倒れ、燃えさかるシャトルと共に爆発してしまった。目の前の光景に怯えるセリア。震えてしゃがみ込むセリアに、今度は別の気配がした。

「何……?」

セリアが振り向いた先には、6歳くらいの少女が立っていた。地球人に見える。少女は何も言わず、セリアに手招きする。

「誰よ……」

ここは惑星ギルズの月。この衛星に、6歳の地球人に見える女の子が一人で立っているのはセリアには異様に見えた。少女はギルズの月の向こう側に歩き出した。セリアと少女の真上には、大きな惑星ギルズが静けさを保っていた。

「行くしかないわね……」

セリアは嫌々ながらもその少女について行った。月の裏側の、暗闇の中に入る少女。

「ちょっと待ちなさいよ、あんた誰よ!」

暗闇に入り、周囲を見回す。目が慣れてくると、少女の姿は消えていた。歩いて行くと、何かを踏んだ。懐中電灯だ。セリアはそれを拾い上げ、スイッチを入れた。使える。目の前に寂れた壁がある。近づくと、そこに張り紙があった。張り紙を取ると、セリアはその文字を読んだ。

「オクティア星へ行って」

オクティア星。聞いたことがある。ギルズ星人と取引のある軍事惑星。

「そこへ行けって言うの?」

張り紙のあったすぐ近くには、小型の旧型通信端末が1つ。起動すると、オクティア星への座標データが表示された。セリアが壁にそって歩いていると、錆びれた宇宙船が1隻あった。宇宙船を見上げた。

ボロい。だが動きそうだ。

「用意周到ね、あの子」

セリアは宇宙船に乗り込み、エンジンを確認する。燃料は半分。いける。セリアが乗った宇宙船は、ギルズ側に気付かれることも無く、ギルズの月の裏側から飛び立った。6時間後。惑星オクティア。灰色の軍事基地が星全体に広がっている。セリアの錆びれた船は着陸許可を求めず、基地のはずれに不時着した。船を降りた。見張りの警備兵の視線が突き刺さる。セリアは座標にそって歩いた。

座標が示したのは軍事基地の中枢部。厳重なセキュリティの区画だった―が、通路の一か所だけ、巡回の隙間があった。まるで誰かに設計されたかのように。セリアは冷や汗を拭いた。基地に侵入する。警報ブザーも兵士の巡回も無かった。

不自然なほど静かだった。罠か、それとも誰かが手引きしているのか。廊下の突き当りに錆びれたドアが1つ。ドアノブは無い。ドアに手をかざすと、ゆっくり開いた。一歩入って、セリアは吐きそうになった。

「何よここ……」

部屋には何かの実験器具と、錆びれた拷問器具が並んでいた。床の下にも錆びが広がっていた。突然、背後に気配を感じる。振り向くと、そこにはセリアを襲ったタコ型ヒューマノイドによく似た白衣の老人が立っていた。老人はセリアを見て不思議そうに眺めたが、やがて何かを察したように話し出した。

「宇宙戦争の遺物だよ。子どもを使って実験をしていた」

「実験?」

「ギルズ星人が捕まえてきた地球人の子どもだ。指輪の影響下にある被験者で実験したかったらしい。ウルカスの依頼でね」

「子どもたちはどうなったの?」

「失敗したよ。全部。子どもは誰一人元に戻れなかった」

セリア、声が出ない。老人が話を変えた。

「ウルカスが死んだんだってね?今朝、ギルズのニュースが入ってね。ここが無ければ、実験の真実は闇に葬られていた」

老人は実験室の向こうの壁に指を差す。古い写真が貼ってある。

「実験の犠牲になった子どもたちだ」

セリアは写真を見つめた。彼女は沈黙した。写真の子どもたちの中に、セリアと出会ったあの少女の姿があった。他の子どもたちも見覚えのある顔が数人いた。

「大昔のことだ……ここの部屋は大昔の遺跡だよ。ずっと私が保管している。実験台になった子どもらは、ギルズ側が引き取って行った。あいつらは失敗作を持ち帰り、どこか別の惑星に放り込んだと噂で聞いたが、行方はわからない。」

セリアは言った。

「全員かは分からないけど、エルク星に居るわ。何人か健康診断した」

老人は棚からデータパッドを取り出して、セリアに差し出した。

「ここに実験の全記録がある。ギルズ側の共犯者リストも。使え」

セリアはデータパッドを受け取った。老人は言った。

「ここに指輪は無いよ。50年前にキュラドというヤツが持って行った」

キュラド。名前を刻んだ。老人は何か決意するかのような目で、セリアを見た。

「協力しよう。私は子どもたちを救いたい。罪を償う時が来たのだ」

セリアは笑みを作った。老人は何かを準備して言った。

「あと、キュラドはこの件とは関係ない。指輪目当てのよそ者だ。ウルカスが持っていた指輪を奪って、ゴーン銀河に姿を眩ませたきりだ」

「つまり、今回のピンク・スコーピオンのメンバー逮捕は、首謀者が別に居る。誰よ?」

「オクティア星の支配者・グネル。ヤツはオクティア星とギルズ星の両方を支配するつもりだ」

つづく


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