#14 歩く食料工場
地球とは別の時空にあり、遠くはなれた場所にある、惑星バミリオン。
その近くの宇宙空間に浮いている人工居住地・オウル・コロニー内部に、クレッセントの本拠地はある。クレッセントの総帥ジーンは、人工知能・コアの主張である勇者アリーヤの捜索には消極的だった。以前、アリーヤがコアと共に宇宙を救った時、アリーヤは宇宙空間へ飛ばされ、行方が分からなくなってしまったからだ。ジーンは、コアに対してアリーヤ・カルティエが生存しているという確固たる証拠を見つけ、本人をジーンの目の前に連れてくるという司令を出した。そしてアリーヤの捜索はコア1人で行う、というものだった。
「クレッセントは、1800年の長きにわたるデッド・オリオンとの戦いに勝たなければなりません。なので、アリーヤ・カルティエという人物の捜索に人手を割けないのです。」
「分かっております。必ずアリーヤを見つけ出し、ジーン総帥のもとへ連れて参ります」
コアはそう言って、バレーボール型の体を宙に浮かばせながら、急いで出動した。
ソドム星という惑星で、地球人5名がデッド・オリオンから逃走した。そういう知らせを、ジーン総帥は受けていた。当時、その知らせを聞いたジーンは、ソドム星と地球人5名の詳細を調べるよう、部下に命じたのだが、詳細は掴めずにいた。
「勇者という者が本当にいるのなら、ぜひ会ってみたいものです」
コアの言うアリーヤ勇者論には、クレッセントの上層部達からかなりの否定意見が出た。ジーンは、ワラにもすがる思いで、コアに司令を出したのだった。果たして、コアの行き先は?
一方、アリーヤたちスコーピオン号の乗組員たちは、宇宙スクワールのチャーリーを惑星ブルームのお家に返すべく、宇宙を旅していた。
「ケレヴィは地球人の事を知ってたよね。地球と交流があるの?」
サッカロ星人ケレヴィは、イトウ・マイクの頭に手のひらを置きながら、マイクに喋らせた。
「サッカロ星人と地球人の交流は、わずかしかありません。今からおよそ3年前、惑星サッカロの土地に一人の地球人が来たのです。サッカロ側は最新の文明機器の技術を教えましたが、その地球人は、我々には必要の無いシャシンという紙と、ピンクの花の種を渡して来ました。そのピンクの花はサッカロ星に元いる植物の成長を妨げ、我が星では社会問題にまでなってしまいました。」
そう言ってケレヴィは、アリーヤに一枚の写真を見せた。そこには惑星サッカロのシダ植物の森と、ピンクの花が写っていた。写真を見てアリーヤは言った。
「その人は、湿りの惑星をお花でいっぱいにしたかったのかもね。けど、その思想をサッカロに住んでる皆さんに押し付けちゃ、いけないね。」
「ところでアリーヤ、人工太陽はございませんか?」
ふと、ケレヴィが訊いた。
「サッカロ星で買った物があるよ」
ケレヴィは大きな水槽をもってきて、アリーヤに説明した。
「こちらに24種類の植物性プランクトンがいます。サッカロ星の水に豊富に生息しているものです。人工太陽で増殖させます」
「プランクトンを増やしてどうするの?」
「我々サッカロ星人は、24種類の植物性プランクトンを食べて生きています。いわば食事です。プランクトンは水と太陽で育ちます。」
マイクを操縦室に向かわせ、アリーヤは、リビングに人工太陽という道具を持ってきた。その人工太陽の明かりは太陽と同じ物質を放ち、本物と同じ効果が得られるらしい。
天井のブザーが鳴る。
「何?緊急事態?」
アリーヤは操縦室に来た。
操縦室にいるマイクに、状況説明をさせるアリーヤ。
「少々、マズイことになったな」
「どうしたの?」
宇宙空間を航行するスコーピオン号の真上に、同じ程度の大きさの宇宙船が確認された。
「宇宙海賊パックだ」
そのパックの宇宙船は、スコーピオン号上部の外壁にぶつかり、乗組員がテレポーテーションで操縦室に乗り込んできた。
「おれはキャプテン・パックだ。助かりたければ、逆らうな」
アリーヤとマイクは手を上げた。
「よし、それでいい。どこの星の船かと思ったら、二人とも地球人じゃねえか」
キャプテン・パックはサッカロ星人のケレヴィを見ると、こう言った。
「ほう、サッカロ星人じゃねえか。サッカロ星人の細胞が1つあれば、パンを20個作れる」
それを聞いた、パックの部下が言う。
「サッカロ星人の細胞から作り出された食品は、通常の食品より長持ちする上、地球人を含む多くの宇宙人にとって、豊富な栄養源となるそうですね」
キャプテン・パックは大喜びだ。
「言わば、歩く食料工場だ。連れて行け」
「まって!連れて行くってどこへ?」
アリーヤが引き止めようとする。
パックは言った。
「決まってるじゃねえか、俺達の船だよ」
「そんな事はやめて!ケレヴィは食料工場じゃ無い!私の仲間だよ!」
アリーヤの首に下げているカメラがピンク色に発光した。
「なんだ?その四角い箱は。その四角い箱もとれ!」
パックの命令で、アリーヤのカメラを取ろうとする、彼の部下。
すると、アリーヤは目にもとまらぬ速さで、キャプテン・パックの後ろにまわった。アリーヤは、いつの間にか持っていた手錠を、パックの両手首に付けた。
「何、これはどういう事だ!?」
アリーヤに光線銃を向ける、パックの部下3人。イトウ・マイクが、空手技で3人の光線銃を弾き飛ばす。
こうして、キャプテン・パック含む4人を捕まえたアリーヤたちは、スコーピオン号の下部のアームで、パックの宇宙船を捕らえた。
1日後……
ケレヴィは、船にある材料で作ったふっくらとしたパンを差し出した。
「試食をお願いします。キャプテン・アリーヤ」
「私がキャプテン?そんな、照れるなぁ!」
アリーヤは照れながら言った。ケレヴィに差し出されたパンを一口食べた、アリーヤの感想は……
「おいしい!! このパン、おいしいよ!」
アリーヤは目を輝かせながら言った。
「少しアレンジを加えれば、様々な種類のパンを作る事ができます」
「すごいよケレヴィ!」
しばらくして……
「そういえばさ……ケレヴィ達が会った、ピンクの花を植えた人って、名前は知らない?」
アリーヤはケレヴィに訊いた。
「固有名詞は、分かりかねます」
「そう……もしかしたら、エヴァルドって名前の人じゃ無いかなって、思ったんだ」
アリーヤはその話はそれきりにし、ケレヴィが作るパンなどの料理の材料の、調達方法の話題に移った。
一方その頃、人工知能のコアは、自身が漂流していた小惑星帯の中を捜索していた。
「生命反応、無し。……アリーヤ、どこにいるんだ?」
ジーンからの通信が来た。
「勇者探しは、順調ですか?」
「ジーン総帥!アリーヤの捜索は、私に任せてください!」
「落ち着きなさい。3つ、情報を入手しました。オウル・コロニー住人からの情報です。惑星ブルームにて、アリーヤ・カルティエと名乗る地球人の少女がオウル・コロニー住人2人と異星種族の1人を救出した、とのことです」
ジーンは、アリーヤと他2名の地球人が写っている写真を、コアに見せた。その写真に写っているのは、正真正銘のアリーヤだ。
「そうです、まさしくこの人が、私が捜索しているアリーヤです!ありがとうございます、ジーン総帥!」
「礼なら情報をくださった人たちに言ってください。別の人物からの情報によれば、アリーヤ・カルティエはピンク色に発光する奇妙な宇宙船に乗って、エデン・コロニーへ向かったそうです。」
「エデン・コロニーへ?」
「行き先もそうですが、エデン・コロニーへ向かった手段も気になります。ピンク色に発光する宇宙船の写真も、ある人物が撮ってくださいました。」
そう言ってジーンは、コアに宇宙船の写真を見せた。
「クレッセント隊員・コアに命じます。アリーヤ・カルティエの救出、本人を連れてくると共に、この宇宙船の詳細も調べてください。出来れば、早めにお願いします」
つづく
©2023MizushibaRoku
このお話は、2021-11-26 08:30:39にブログに投稿していたものです。




