#13 ホノカとアリーヤ
一週間後、惑星地球の学校に、アリーヤとローラは通い続けた。スコーピオン号との連絡があまり取れず、地底捜索班が手がかりを得ずに戻った事のみ知らされた。
「巨大なイカが巻き付いてきてビックリでしたよ!ホントにもう」
シンジ隊員がグチを吐いた。ヴィナ隊員が笑って言う。
「すぐに離れてくれたんだからいいじゃないの。アリーヤたちも大変みたいよ。指輪まだ見つからないんだって」
またレーダーに反応があった。ファルコン隊員がレーダーを見る。
「巨大サメのお出ましだ」
そのサメは全長20メートルまで巨大化していた。
「なんか前よりも巨大化してないっすか?」
操縦室に、すっかり修理されたフローラが来た。フローラがシンジ隊員に言う。
「指輪の反応あり!あの魚の胃の中です」
副長も来た。
「修理されて、指輪の位置も特定できるようになったか?」
「副長が作ったロボットも、そう言っています」
「あれは1週間前に壊れました」
「でもそう言っています」
そうこうしている内に、スコーピオン号は巨大サメの口に飲み込まれてしまった。
アリーヤとローラが潜入している学校は授業中だった。ある時、授業にもかかわらずホノカが教室に姿を見せなかったので、先生に訊くと、保健室に居る、とのことだった。体育の時間に足をくじいたらしい。休み時間、アリーヤが保健室へ見に行き、ローラが廊下を歩いている時だ。ブレザーを着た男子学生が、首にネックレスを着けていた。そのネックレスは……指輪だった。半分に欠けてはいたが、それが探している指輪であることをローラは察した。ローラが話しかけると、その男子高校生はガラの悪い感じではなく、むしろ好青年だった。
「あの、その指輪の件なんですけど……」
「あぁ、この指輪?かっこいいでしょ。拾ったんだ」
「譲っていただくことは、可能でしょうか……?」
「ん?この指輪、欲しいの?」
「ええ、タダでとは言いません。お金等で買い取らせていただけないでしょうか?」
「いいよ」
「え、いいんですか?」
「うん。君、名前は?」
「ローラです」
「へぇー、ローラさん、大事にしてね、この指輪」
あっさりと譲ってくれた。お金はいらないと言って、男子生徒は去っていった。ローラは通信機を開いて、アリーヤと通信をしようとした。
「アリーヤ、聞こえますか?指輪の半分、確保しました!帰れますよ!」
しかし、アリーヤの反応は意外なものだった。
「もう1週間ここに居させて。ホノカが大変なの」
保健室に来たローラ。ホノカは足を骨折したらしい。治るのに1週間はかかるそうだ。ホノカが寝ている間に、ローラはアリーヤに言った。
「帰りましょう、アリーヤ。スコーピオン号へ。今は宇宙の危機なんですよ?」
アリーヤは黙っていた。ローラが説得を続ける。
「ただの骨折です。すぐに治ります。ホノカさんと全宇宙、大切なのはどっちですか?」
「どっちもだよ」
アリーヤが少し怒って答えた。感情的になっている。
「……すみません」
ローラが謝った。アリーヤが手を差し出して言う。
「指輪、見せて」
ローラがその指輪を見せると、ホノカが目を覚ました。
「見つかったんだね、指輪。」
2人は慌てるが、ホノカは笑って言った。
「アリーヤ、今の話、信じるよ。行って」
「え?」
「ミカちゃんがくれた宇宙が大変なんでしょ?私、短い間だったけど、アリーヤのこと大好きだから。ずっと親友でいてね」
アリーヤの目に涙が浮かぶ。ホノカはアリーヤの頬を両手に持って、唇にキスをした。戸惑うアリーヤ。ローラがひっくり返る。
「え、ホノカ?これは、どういう……」
戸惑いを隠せないアリーヤに、ホノカは照れくさそうに言う。
「写真のお返し。絶対、地球に戻ってきてね。」
アリーヤはハンカチで涙をふいた後、ホノカに対してこう言った。
「必ず戻るよ。私の宇宙も、ホノカの宇宙も、両方守ってあげるから」
ホノカは微笑んだ。あの頃のミカのようだった。
保健室を出た後、アリーヤとローラは転送機を使ってスコーピオン号に帰ってきた。
スコーピオン号は地球の軌道を離れて宇宙空間にいた。双子の指輪のもう片方を、巨大サメが飲み込んでいたらしい。某国の大統領は、スコーピオン号のあった太平洋の真ん中から巨大サメが出現したことから宇宙人の存在などすっかり忘れ、巨大サメの捕獲等の対策に追われていた。
「20メートルの巨大サメだ、水族館で飼えば評判を呼ぶ。我が国の懐も潤うよ」
大統領のコメントににっこり微笑むスコーピオン号の副長。
「さて、指輪も手に入ったことですし、これからどこへ向かいますか?」
アリーヤは即答した。
「ザークの本拠地!」
隊員たちはびっくりしなかった。アリーヤが無茶を言うのはこれが最初ではない。スコーピオン号はザークの本拠地・惑星ヴァルハラの方角へ進路を取った。
1週間後の地球。
「アリーヤさんとローラさん、すぐ転校しちゃったね」
ホノカに出来た新しい友達がそう言った。ホノカはニッコリ笑って返事をした。
「だいじょーぶ!すぐ戻ってくるから!」
空を見上げた。青空の向こうで、アリーヤたちも微笑んでいた。
つづく




