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ピンク・スコーピオン!!  作者: 水柴ロク
1/22

#1 起動

誕生日に、親友がカメラをくれた。

その日は親友とママが、盛大に祝ってくれた。とてもうれしかったけど……

数日後、親友は姿を消した。

挿絵(By みてみん)



地球の大気圏外、つまり宇宙空間に静止した宇宙船がある。司令官ナンバー06は部下ジュリアを呼んだ。

「例の任務は順調だろうな?」

「はい」

「よろしい。では、逃走したレジスタンスのスパイは?」

「現在、探索中です。」


朝。地球のとある町。アリーヤ・カルティエは寝室で、ある夢にうなされていた。

「うーん、冥王星から侵略者が、恐いよう……」

母親のローザが彼女を起こしに来た。

「起きなさい、宇宙オタク!」

飛び起きるアリーヤ。二人はアフリカ系の地球人だ。

「夢でも見たの?ゴハンを食べなさい」

朝食と身支度を整えたアリーヤは、自転車カゴにカメラとゴーグルを入れ、公園へ出かける。

「Hi!私はアリーヤ、ごく普通の14歳。将来の夢は超一流の写真家!今日は待ちに待った皆既日食の日!絶対、カメラに収めるぞ!」

そんなアリーヤを見送るローザに、近所の人が話しかけた。

「おや、お宅のアリーヤ、今日は元気だねえ?」

「日食を撮りに行くんですって。まったく、こんな時だけはしゃぐんだから。このあいだまで家にいたあの子とだって、小惑星が何だの、冥王星が何だのってそんな話ばかりしてたのよ。」

ローザは答える。

「あの子もアリーヤと仲が良かったねえ。行方は分からないのかい?」

ローザは静かに口をひらいた。

「いいえ……」

時を同じくして、TⅤではこんなニュースが。

「昨日17時までの未成年連続失踪事件ですが、国内では25人が失踪しています。一方、国外では―」

そのころ、アリーヤは公園の広場に到着し、日食用のゴーグルで太陽を見ていた。太陽は丸い大穴があいたように見える。

「見えた!よぉし、撮るぞぉ!」

アリーヤがさっそくカメラを構えると、太陽がある方角から、小さな丸いものが落ちてきて、彼女のおでこにぶつかった。

「痛ッ!」

後ろの芝に倒れるアリーヤ。すると、バレーボールくらいの大きさの物体は、アリーヤに向かって話しかけてきた。

「大丈夫か?ケガは無いか?」

ビックリするアリーヤ。ボールのような物体は、3つある黄色い目を光らせる。

アリーヤはなんとか返事をすると、太陽をゴーグルで見たが、日食は終わった後だった。

「日食が終わっちゃった!そんな、ガックリ……」

アリーヤは落胆した。そんなアリーヤにボール型の人物はこう問いかける。

「落胆している所ですまないが、隠れ家を提供してくれないか?」

分からない、という表情のアリーヤ。彼女は、現状が呑み込めないながらも、そのボール型の人物を、自身の家の個室に招いた。


「ぼくはコア。こことは別の宇宙から来た、人工知能搭載型ロボットだ。凶悪な宇宙犯罪者から、宇宙の平和を守るためにやってきたんだ。」

ボール型の人物・コアは語った。

「いや、話の展開が急だな!宇宙犯罪者って何!?そもそもキミ、ロボットなんだ!」

コアの話に、猛烈にツッコミをあびせるアリーヤ。

「キミは、ぼくの姿を見ても驚かないようだね」

「まあ、今時は科学技術が進歩してるし、人工知能も珍しくないからね。最初は驚きましたけど」

アリーヤの反応をよそに、コアは続ける。

「僕の世界の人類は、銀河征服を企む組織、デッド・オリオンによってほとんど壊滅させられてしまったんだ。生き残った人類も、ヤツらによって資源発掘などの強制労働を強いられている。そして、デッドオリオンは新たな領域を得るために、キミたちの住んでるこの宇宙の地球に来た。ヤツらは間もなく、地球への総攻撃を始めるだろう」

「これ、何かのドッキリ企画?私、宇宙オタクではあるけどさあ・・・・・・」

「大丈夫だ。ボクを含むレジスタンスが、デッド・オリオン壊滅を目指し、計画を立てている。問題は、レジスタンスは時空移動の装置を持っていない事だ。ボクはデッド・オリオンの宇宙船に侵入し、この宇宙へ来た。デッド・オリオンを倒すには、ヤツらを一旦元いた宇宙に戻してから、攻撃する必要があるんだ。元の宇宙に戻った瞬間に時空移動システムを破壊すれば、ヤツらは二度と襲ってこない。時空移動システムの製造技術は、遠い昔に失われているからね」

「うーん……」

アリーヤは考え込んだ。

「ピンと来てない様子だな」

そういうコアに、アリーヤは言う。

「要するに、コアの世界の人達は、宇宙人に捕まってタダ働きにされてるんだよね?」

「まあ、そうなる」

「世間にはタダでさえ所得格差があるのにさ、拘束されてタダ働きとかあんまりじゃん!コンビニのバイトだって給料少ないのに、許せない!」

「お、おう。そうだな」

「と、いう事は、コアは正義の味方なんだね!」

「そういうことさ」

「アリーヤ」

居間でローザが呼んでいる。

「コンロが壊れちゃったの!修理を頼める?」

「はーい、今行く!」

アリーヤはコアの話を胸に秘めながら、居間へ向かった。


一方、デッド・オリオンの宇宙船。

「リスト中の地球人を捕獲し終えました」

部下のジュリアの報告に、満足げな司令官。

「よろしい」

「スパイの居場所をキャッチしました」

「始末しろ。ついでに地上へ侵攻するぞ。」


アリーヤの家では……

「コンロを直したよ!」

「ありがとう、助かるわ!」

夕食を食べる一同。コアは立体映像で、人間の姿に変装している。ローザがたずねる。

「コアさんはどちらから来られたの?」

「ハワイです。そこの友人から、この町が素晴らしい街だと訊きまして、旅行に来たんです。それにしても、キレイな花ですね」

コアは正体がばれまいと、宇宙から来たことは秘密にしていた。

そして、食卓の真ん中に飾られた、ピンクの花を指して訊ねた。

ローザは花の説明をした。

「このピンクの花の花言葉は、(大胆)、(純愛)、(貞節)。この町では皆が愛にあふれ、優しく幸せになれるよう、飾っているのよ」

「親友も好きな花だったんだ」

アリーヤはぽつりと言った。

「この家にしばらく住んでたある親友もね、ママの飾ってるこの花が大好きで、よく写真に撮ってたんだ」

アリーヤの目から、涙が一粒こぼれた。彼女の右手にそっと手を置くローザ。アリーヤ、1眼レフのカメラを手に取り、再び口を開く。


「……このカメラさ、親友がくれたんだ。私ね、人生でイヤな事が多くてさ、つい投げやりになっちゃうんだ。 そんな時に、親友は励ましてくれるの。この世界にはここよりもっと楽しい場所がある。いつか二人で、そこに行こうって。」

「アリーヤ……」


突如、瞬く間に閃光が走る。頭上で巨大な爆発音がしたかと思うと、アリーヤ達の家が爆撃、破壊され、ガレキのように崩れ落ちた。アリーヤ達は身をふせる。

残骸からはい出るコアとアリーヤ。(コアの立体映像は解かれている)

「何……?今、何が起こったの?」

「デッド・オリオンだ!ボクの居場所が突き止められたんだ!」

アリーヤは辺りを見回す。

「ママは?ママはどこ?」

「動くな」

アリーヤの背後に見慣れない武装兵が立っており、2人に銃を突きつけた。

「デッド・オリオン!」

コアが叫んだ。その瞬間、兵士は彼を光線銃で撃ち落とした。

「コア!」

アリーヤは叫ぶ。

「レジスタンスのスパイ!見つけたぜ!」

撃ち落とされたボール型のコアを掴もうとする、デッド・オリオンの兵士。

するとがれきから這い上がったローザが、兵士に体当たりをする。

「逃げなさい、アリーヤ!」

すると兵士は、ローザに仕返しをし、ローザは倒れる。

「ママ!!」

悲鳴を上げるアリーヤ。

するとコア(左前頭部が壊れ、機械がむき出しになっている)が起き上がり、目から光線を放ち、兵士を倒した。

「速く、逃げるんだ」

アリーヤ、ボール型のコアを抱きかかえ、ローザをかついで逃げる。

デッド・オリオン軍の兵士が、宇宙船が、町を破壊して行く。

オリオンの司令官は叫ぶ。

「破壊だ!人類を破壊しろ!領土は我がデッド・オリオンの物!」


次の日の朝。

病院の待合室で、アリーヤはスマホ片手に話している。

「うん、私は無事。ありがとう、おばあちゃん。それじゃ。」

アリーヤは電話を切った。

コアがたずねる。

「どうだって?」

「ママの治療費は、おばあちゃんが出してくれるって。」

アリーヤ、母の病室に来る。コアは言う。

「僕はデッド・オリオン戦艦内で時空移動マシンを起動し、デッド・オリオン軍を元の宇宙に返す事が使命だった。マシンの設定で標的を設定すれば、デッド・オリオン軍をすべて、元の宇宙に返せる。マシンの製造技術は失われているから、それを壊せばヤツらの時空移動は不可能になる。しかし肝心の僕がこのざまじゃ、望みは絶たれた。ヤツらの攻撃が再開すれば、人類は間もなく滅びる」

「そんな、何か手は無いの?」

「そうだな……僕の乗ってきた脱出ポッドを使って、敵船に突っ込めば、可能性も無くはない。」

森へ行くアリーヤ、コア。

「このあたりに落ちたハズだ」

森の奥には池があり、池にハマった直径2メートル程の、灰色の丸い物体がある。

「これが……脱出ポッド?」

と、アリーヤ。

「故障している。修復は無理だ。私も故障しているから、ポッドを修復できても操縦できるかどうか・・・」

「なら、操縦方法を教えてよ」

アリーヤは真剣なまなざしで言った。

遠くの空で、デッド・オリオンの宇宙船が飛んでいる。

宇宙船は光線で街を破壊しつくす。

アリーヤは言った。

「コンロとカメラくらいなら、修復できるよ」


病院の廊下。重症患者が大勢運ばれて来る。

家のガレキから修理道具を出すアリーヤ。

夕方。

なんとアリーヤは、脱出ポッドを修理したのだった。これにはコアも驚いた。


病院。

アリーヤは、眠っているローザの元へ行き、手紙を置く。

「ママ……今までありがとう。愛してる」

病室を去っていくアリーヤ。

小型ポッドに乗ったアリーヤ。コアも一緒だ。首にはカメラをさげている。

「いいのか?アリーヤ。マシンを壊したら、キミはもうここへは戻れないぞ?」

「仕方ないよ。私がやらなきゃ、人類は滅びるんでしょ?そんな事はさせない。私が人類を救ってみせる!」

脱出ポッドはゆっくりと、空へと浮上する。


「トンデモ作戦、実行するよ!」 


アリーヤは脱出ポッドを操縦し、敵の船に狙いを定める。

(昨日まで何もない日常だったのに、いきなり宇宙人が攻めてくるなんて……手の震えが止まらない)

「あれに突っ込むの?」

「ああ。」

敵宇宙船の全長は、20メートルを超えている。

「お願い、うまく行って!」

アリーヤは脱出ポッドを起動し、ポッドはまっすぐ、敵船に突っ込む。


「何事だ!?」

司令官が叫ぶ。部下は状況を言う。

「船内部に侵入者!時空移動マシンの方角へ移動中!」

「阻止しろ!」

指示を出す敵司令官。

アリーヤ、コアは、敵船の外壁を脱出ポッドで破壊し、宇宙船内部の廊下を走る。

「敵は任せろ!キミは走るんだ!」

走ってくる敵をコアがビームで蹴散らす。やがて、廊下の突き当りに部屋が見える。

「あの部屋だ!」

一方、敵指令室。

「敵が部屋に到達しました!」

「何だと!?」

時空移動マシンの前まで来たアリーヤとコア。そのマシンの前にレバーが付いている。

「そのレバーを引くんだ!」

コアの指示で、アリーヤは時空移動マシンのレバーを思い切り引いた。

「オリャーッ!!」

すると、デッド・オリオンの船は青白いイナズマに包まれ、町から消える。


    (スペース・771)


もう1つの宇宙空間に、デッド・オリオンの船が現れる。

「もう一度マシンを起動しろ!」

敵司令官は指令室で命令するが、コアが光線でマシンを爆破する。

「マシンをやられました!」

「お、おのれぇぇぇーーー!!」

敵司令官の叫びも知らず、

廊下を走るアリーヤ。

コアと共に脱出用のポッドに乗り込み、宇宙船から脱出する。

「ふうっ」

アリーヤは息をついた。

「やったな、アリーヤ!人類はきみが救ったんだぞ!」

「みんな無事ってことだね!」

ほほえむアリーヤ。

すると、アリーヤたちの目の前に銀色の四角い大型宇宙船が現れる。

「敵!?」

「違う!あれは味方だ!」


宇宙船は、敵に向けてレーザー光線を発射する。敵の司令官は叫ぶ。

「レジスタンスか!」


レジスタンスの攻撃で、デッド・オリオンの船はほとんど撃沈する。

2~3あった敵宇宙船は爆破され、残り一機となった。

「我々の勝利だ!」

「うん……」

アリーヤの反応に、コアは訊ねる。

「どうした?」

「人がたくさん死んでる……」

彼女はそう言って、悲しそうな表情で、戦場を見ていた。

敵の司令官は、部下に命じた。

「あの脱出ポッドを撃て!」

アリーヤの乗る脱出ポッドが、オリオンの船に撃たれ、爆発。

アリーヤとコアは生身で宇宙空間に放り出され、二人は引き離される。


「アリーヤ!」


コアは叫ぼうとするが、アリーヤには届かない。そのままコアは、暗闇へ消えていった。


その時、アリーヤのカメラがピンク色に光り、アリーヤの全身をその光で包んだ。

光るカメラは、アリーヤをその光でつつみながら、外見が冥王星に似た謎の惑星にアリーヤを連れて行く。

砂漠に仰向けに倒れているアリーヤ。ズボンのポケットからスマホが出ている。


アリーヤのスマホ:メッセージが一件あります。発信者:エヴァルド



アリーヤ(この時、何が起こったのかは分からないけど、私はその後、地球より何万光年も離れた、ある惑星で目覚める事になります。)

つづく



©2023MizushibaRoku



※このお話は2021-10-06に、ブログに投稿していたものです。

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