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*第9話*

「わ、私はシェイナスのことがずっと好きでしたわ……?」


 シェイナスに乞われるがままに口を開くと、シェイナスはその頬をさらに薔薇色に染めた。


「シェリー」


 シェイナスが甘やかな声で私を呼ぶ。  


「ねぇ、いつから? いつから僕のことが好きだった?」


 私を抱きしめようとするシェイナスに向かって、手を突き出す。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


 どうしてシェイナスはそんなに嬉しそうな顔をするの?

 シェイナスは、ヒロインのことが好きなんじゃないの?


 頭の中を様々な疑問がぐるぐると回っている。


「シェリーどうしたの?」


 どうしたの? と聞きたいのはこっちである。という言葉をぐっと飲み込み、


「シェイナスの方こそどうしたんですの?」


 ……飲み込めなかった。


「どういう意味?」


 シェイナスが軽く首を傾げる。あぁ! そんなちょっとした仕草すらカッコいい! と、見惚れそうになるのをぐっと我慢する。でも、ちら見ぐらいは許してください。


「シェイナスはカルラさんのことが好きなのでしょう?」


 今度はシェイナスに分かるようにはっきりとヒロインの名前を出した。ヒロインの名前を出した時のシェイナスの顔が見たくなくて、顔は自然と下を向く。


「……は?」


 しばらくして、ふってきたのはシェイナスの気の抜けたような声だった。


「きゃっ」


 突然、シェイナスに強い力で両肩を掴まれた。


「シェリー。ねぇ、シェリー。」


 怖い顔をしたシェイナスが、私に顔を近づけてくる。


「こっちを向いて。シェリー」


 頑なにシェイナスから顔を背けていると、いつの間にか肩から頬へと移動していた手によって無理矢理シェイナスの方へ向けられる。


「シェリーは、ずっと僕の愛を疑っていたの?」


「……」


「シェリーは、僕のことが信じられなかったの?」


「……」


「僕の目にはずっとシェリーだけが映っていた。君の目にはちゃんと僕が映っていた?」


 シェイナスが苦しげな顔をした。その瞬間、私はとんでもないことをしてしまったのだと気がついた。


 私はシェイナスの愛を疑っていたのだ。


 私はシェイナスのことが信じられなかったのだ。


 私はシェイナスのことを見ているようで見ていなかったのだ。


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……」


 私がちゃんと、シェイナスのことを信じていればシェイナスがヒロインのことを好きになるなどと考えなかったはずだ。勝手に勘違いして、勝手に傷ついて、挙句の果てにシェイナスを傷つけるなんてことはしなかったはずだ。


 今、この瞬間だってシェイナスからの愛の証なのだ。毎日朝から夜まで予定がびっしり詰まったシェイナスには少しの時間を捻り出すことすら難しい。それにもかかわらず、私にこんなにも時間を割いてくれているのだ。少しでも時間を短縮しようと思うのならば、私を王城へ呼びつければいい。命令されれば、私に拒否権はない。大人しく王城へ行くしかないのだ。しかし、シェイナスはそれをしなかった。


 そんなことにさえ気づけなかった私は愚かだ。


「シェリー謝らないで」


 私の額にシェイナスの額がくっつく。


「僕も悪いんだ。君の友人に怒られてしまったよ。何故、昨日の夜、君を一人で帰らせたのかって。君がそんな勘違いをしたのは、きっと僕のせいもあるんだろうね。僕は知らないうちに君に僕の愛を疑わせるようなことをいくつもしたんだろうとも言われてしまったよ」


 そう言ってシェイナスは困ったように笑った。


「それは違いますわ。すべて私が悪いのです。私がシェイナ……」


 唇が柔らかいもので塞がれ、私の言葉は不自然に途切れた。


「それ以上僕の愛しい君を責めるなら、その可憐な唇を僕はまたふさいでしまうよ」


 ここでね、と言いながらシェイナスは自らの唇をとトントンと人差し指で叩いた。私の体温は急上昇中である。震える指でまだ柔らかい感触の残る自分の唇に触れてみる。


「あんまり、可愛いことをしないで。また君の唇をふさいでしまいたくなる」


 そう言って、シェイナスは私の唇に触れていた指を取り私の指にキスをした。


「あわわわわわわっ!」


 公爵令嬢としてどうなのかという声をあげてしまったが、そんなことを気にする余裕などない。


「ねぇ、シェリー」


 私の指を取ったままシェイナスは色っぽい目を私に向けた。


「ひゃ、ひゃい!」


 私は恥ずかしさのあまり、声が裏返った。我ながら情けない。


「もうシェリーに勘違いさせないように、僕は今までよりももっと君への愛を行動や言葉で示そう」


 そう言ってシェイナスは私の前髪をあげ、そこに唇を寄せた。そして私の額から唇を離したシェイナスはいたずらっぽい笑みで私を見た。


「それでも、不安ならシェリーにひとつ約束しよう」


「約束……?」


 声が震えなかった自分を褒めてやりたいと、どこかずれたことを思いながら何だろうと首を傾げる。


「そう。今までもこれからもずっと続く約束だよ。シェリーは僕が幸せにしてあげる」


 そう言われれば、私の返事はひとつしかない。シェイナスにつられて私も笑顔になる。


「じゃあ私がシェイナスを幸せにしてあげるわ」 


 今でも忘れることのない幼い頃に交わした大切な約束だ。そしてその後、彼はこう言うのだ。


「僕たちは両想いだね」


 幼い彼と全く同じセリフを言った彼は、私に幼い彼と同じ天使のような笑みをみせ、私にキスをした。





甘々な話を書きたかったので満足です笑


シェイナス視点でシェイナスとローナのやり取りとか書きたいのですが、いつになるのか分からないので、とりあえずここで完結とさせていただきます。


最後までお付き合い頂きありがとうございました!


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