第084話 破壊の殺戮者
異常な光景を目の当たりにした冒険者達。
避難して建物内に居た人達ですら、轟音とそれに伴う振動、崩壊、崩落、音を立てて崩れる家、それを見て逃げ込んで来る冒険者。
「外で何が起こってるんだ?」
「ハニエル様は?聖女様は?!」
冒険者ギルドでも慌ただしく、聖職者と冒険者が出たり入ったりしていて、情報の交換もままならない。
腕の一振りで建物が倒壊するのだから、何処へ避難して良いのか分からないのだ。
「こんな街、破壊してやる……破壊……」
黒帝は人の姿ではなく、元のドラゴンの姿に戻っていて、周囲を破壊して歩いている。大聖堂と冒険者ギルドや、孤児院の他、いくつかの重要施設は防御壁と結界で守られているので、その建物に避難している人達に被害はない。
「お、おい。あの消えちまった人って聖女様が先生って呼んでいた人だよな?」
「あんな美人なら見間違えない自信はあるんだが……骨に成ったというか、消滅したというか……」
見ていた人でさえ、あの戦いを理解しきれない。
「ブラックカラーが火を吐くぞ!!」
悲鳴のような叫び声が響き、それを叫んだ男はそのまま炎に包まれ、骨も残らずに灰と化した。怒りに任せた爆炎の周囲の建物にも燃え広がり、あっという間に街を火の海と化した。
「消火だ、誰か水魔法使いは……」
「水魔法なんて得意な奴は少ないぞ」
「皆、あんまり使わない魔法だからな……」
絶望を感じ取れば逃げるしかない。しかし、逃げるにしても他の町は遠いし、準備無しで旅立てると思うほど馬鹿ではない。こんな時にコール・マーカーは街の外に飛ばされていて、安全だけは確保されている。
「私に任せなさ―い!!」
空から子供の声がする。
すると、町全体を覆うようなスコールが発生し、燃えていた家があっという間に鎮火していく。
目まぐるしい状況の変化に、冒険者達は状況を整理する事と理解する事に必死であった。残念な事に怪我人もビチャビチャになった所為で移動しにくくなったが、燃えるよりはマシだろう。
空から降りて着地する前に周囲を見回したが、求める姿は確認できなかった。
「先生がいない……?」
「先生が負けたとは思いたくないけど、死んでも生きてるのが先生だから」
「あの黒帝はかなりダメージを受けているみたいだけど……」
「暴れるのに夢中でこっちに気が付いていないみたいね。雨にも気が付かないくらいだけど、何を探してるのかしら?」
二人はそのままコソコソと移動し、先生を捜す。
何度か怪我人を運ぶのを手伝いながらも、黒帝に見つからないように必死で捜す。
「セイビアとハニエルも投げ飛ばしてもらえばいいのにっ」
二人も捜索に参加してくれれば早く見つけられるかもしれない。
アイシャがプンプンしていて、リッカーは苦笑いだ。
あのスピードで投げ飛ばされて平気なのは私と先生とこの子ぐらいだと思っている。
「なんかさ、先生の魔力を感じないわ」
「0に近いぐらい見事に隠すからなぁ……」
「でも先生がアイツを放置して隠れるとも思えないんだけど」
「それは、そうなのよねー」
黒帝は今も暴れていて、次々と建物を破壊している。
炎を吐かないのは、疲労度の問題と魔力の多くを失っているからなのだが、そんな事情を二人は知らない。
キョロキョロとしているのに気が付いた冒険者が、二人に戦闘の結果だけを教えた。
「あんた達、先生を捜してるんなら消えちまったぜ」
「消えた?」
「爆発の後から姿が無いんだ……まぁ、あの骨が先生だと言うのならな」
元スケルトンだという事は知られておらず、この聖地に来た時に受肉済みであった。
美しい女性というイメージが優先されるのは当然だろう。
「先生が負けたって言うの?」
「少なくとも勝ってはいないだろ……」
アイツが居て先生がいない。
その通りの事だが、アイシャは腹が立ってしまう。
だから、先生がどうしたら現れるのかを考える。
「先生の身体がバラバラになった時があったんだけど、その時は直ぐに治ったのよ」
「どんな感じ?」
「先生は自動修復って言ってたわ」
「自動回復じゃなくて?」
「うん」
流石、先生だわ。
まるで壊れた武具を直しているみたいに身体が元に戻r……。
「それって粉々になっても元通りになるって事よね?」
「先生が……というか、これはお父様の記憶なんだけど、粉が一粒でも有れば元に戻るって。でも、どれが核となっているとかが無いから、粉々になり過ぎると戻るのに時間が掛かるって」
不死の呪いと自動修復によって、マリアは死にたくても死ねない。
ただ、記憶は継続するし、新しく覚える事も出来るので、マリアは意外にもエンジョイした生活を送っている。
死んでいるけど。
「頭蓋骨がアイツにツッコんで爆発したのと関係ってあるか?」
もう一つ加えられた情報は、アイシャを確信させた。
「それをもっと早く言ってよー」
「し、しるかっ」
「で、その場所を詳しく」
「お、おぅ……」
やっと街に到着したハニエルとセイビアとベルディナンドの三人は、外で転がっていたコール・マーカーを回収し、最初に冒険者ギルドにやって来た。
火事も、消火された事も、見ていたから知っているのだが、肝心の二人がいない。
先生と合流してから来ると約束していたので、暫くは待つ事にした。
だが、ただ待っているワケではなく、セイビアは情報収集の為に報告を受け、得た情報を精査して纏める作業を行っている。
「こんな時に寝ているなんて度胸が有るのか無いのか」
「でも、そのマーカーさんは助けようとして吹き飛ばされたんですよ」
「助けようとした?」
そして、いくつかの情報を統合して一本の話に繋げる。
分かった事と言えば、爆発が発生した後から先生の姿が無いという事だった。
ハニエルは負傷者の治療で奥の救護室へ行ってしまった為、頼れるのはベルディナンドだけだ。
「……もう少し様子を見る」
慎重になるだけの理由があって、セイビアはギルド権限を行使せずに受け入れた。
Sランクを働かせるには相応の報酬も必要になるというのも主な理由である。
「魔獣とカラードラゴンの素材が集められれば何とでもなりそうですが、その前に街が消滅する危険もありますね」
「あんた、意外と冷静だな」
「これでも貴方より年上なんですけど」
黒帝は歩き回って魔素を捜しているのだろう。
大聖堂の地下に埋められている事に気が付けば、行動している筈なのだから。
そして、冒険者達が不思議そうに眺めている大きな箱がベルディナンドの横にある。
たまに揺れるから、冒険者達は気になるが……中身については説明したくない。
アイシャは爆発の有った場所にやって来た。
黒帝から見つからないように壊れた家を迂回した所為もあって、余計に時間が掛かった。だが、それだけに発見するのは容易になっていた。
「あー、多分これ」
「……マジで?」
「……う……ん、多分」
円形に焼け焦げた地面の真ん中に白い粉が盛られたように残っている。
それを触ろうとすると熱気を感じ、粉が微妙に増えている。
「……増殖してる?」
「修復してるんだと思うわ」
「この粉を袋に……あぁ、ここに先生のストレージが在るわ」
「あら、ホントね」
中身を確認できなかったが、粉を持つとストレージも移動するので間違いはない。
先生の何処でも収納魔法がこんな形で役に立つなんて、普通は思わない。
粉になっても先生は異常の塊のような存在だった。
でも、それだけに悲しいし、悔しい。
先生がこんな姿になっても勝てない相手が、今も街を破壊して歩いている。
それが許せない。
「挑んではダメですよ……」
「先生?!」
骨なのに喋れるのだから、粉になっても喋れるというのは普通なのだろうか?
そんな常識は知らない。
「魔力が尽きていますので戻るのに時間が掛かります」
先生が魔力を尽きるまで戦って勝てない相手だという事実に愕然とする。
リッカーが珍しく震えていた。
「その鉱石リザードの防具が有れば耐えられることは確認しました」
震えが少し小さくなった。
先生はこんな時でも私達の精神安定の為に気を使ってくれる。
「とにかく安全で他の冒険者が少ない場所に連れて行ってください」
冒険者ギルドと大聖堂は候補から除外され、残った孤児院に向かった。
そこは街の外れに近い場所で、まだ被害が殆ど無い区域であった。
※おまけ
「箱から出せーーー
「出す訳ないだろ
「私を人の姿のままにしておくなんて……
「その方が収納が楽だからな
「ふん、どーせ私の魅力に気が付いて、あんなことやこんな、いやらs……
「クソガキがっ
「いやー、揺らさないでー、うっ……気持ち悪い
「そのクソガキは先生よりも長生きしている可能性が……
「マジかよ……
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