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第021話 魔王国以外の町

 晴天の中、疲労困憊で辿り着いたのは港町ボールド。

喉はカラカラ、服はボロボロ、お腹はペコペコ。

先生は飲まず食わずでも平気かもしれないけど、私が耐えられない。

 ヘトヘトで歩くのも辛いが、新しい町には新しい発見がある。

 

 青い空、白い雲。

 空を飛ぶ鳥が鳴く。

働く人が叫ぶ。

海を跳ねる魚が吠える。

 うーん、根性あるなぁ……。


「流石に迂回して陸路でココまでは大変でしたね」

「まさか、一ヶ月も掛かるとはね……」

「申し訳ありません……」

「これからどうするの?」

「とりあえず、路銀を稼ぎましょう」


 あんなにジャラジャラと持っていた金貨は……一枚も使えなかった。

 何故なら……。


 -一ヶ月前-


 到着した小さな漁港は、そこそこの規模で、石造りの家が並んでいる。

 酒場、宿屋、鍛冶屋も有り、活気は良く、多くの人々が働いている。


「ここにはギルドが有りません。そこで漁師の船を借り、海を渡れば3日でボールドに到着します」

「なーるほどっ」


 そんなワケで早速港へ。

 夕方という事も有り、港には殆ど人がいなかったが、先生は近くの漁師と交渉している様子。なんだか、上手く行ったみたい。


「今日はもう遅いので、明日の朝に出発してくれると。今夜は宿屋に泊まりましょう」


 初めての外泊の宿屋、こんな旅だけど、少しの期待感があった。

 ……のだが。


「そんなお金見た事ないけど、本当にお金なのかい?」


 宿屋のおばさんの一言。

 とりあえず別に持っていた私の数枚の銀貨で一晩は何とかなった。

 食事も新鮮な魚料理をたらふく食べた。

 美味しかったし、楽しかった。

 えぇ、とても。

 目覚めの良い早朝に身支度を済ませ、港に行く。


「わりいが危険も伴う、先に金を払ってもらいたいんだが?」

「はい」


 先生が渡したのは金貨だが、受け取った漁師は怪訝そうな表情だ。


「こんな金貨見た事ないんだが」

「えぇ、古代金貨ですけど、使えますよね?」

「……ちょ、ちょっと待て、古代金貨だと?!」

「?」

「こんなもんよこしやがって、何考えてるんだっ」

「これしか無いモノで、何か拙いですか?」

「これ1枚で聖皇国で作られている金貨1000枚分の価値があるんだぞ、持ってるなんて知られたら野盗に狙われちまう……ふつーの金で良いんだ、金貨なんて言わねぇ、銀貨でも構わんぞ」


 突然、先生の汗が凄い。


「お金沢山持ってたわよね?」

「この古代金貨しか持ってません……」

「え?」

「そんなに価値が上がってるなんて思いませんでしたし、お金使うのが何年前か思い出せないくらい昔でした……」


 あんなにジャラジャラしてたのが全部古代金貨なんて。


「アンタら、こんなん貰っちまったら俺は殺されるかもしれん。わりーが他を当たってくんな」


 そして、その後に声を掛けた他の漁師にもすべて断られ、あの漁師が言った通り、私達は港町を出て数時間後に野盗に襲われた。

 もちろん後悔と怒りに満ちた先生が一人残らず吹き飛ばしたけど。

 当然てへぺろもなし。

 先生の提案で、奪いに来たんだから奪っても良いという発想のもと、ついでに野盗の隠れ家から金品を強奪……全員吹き飛ばしたよね、馬を連れた人もいたけどあの人荷物持ちだったんじゃないかな……。

 収穫は無し。

 それから海岸沿いの道なき道を歩き続け、先生の説明によると、湾といって、陸地に海が食い込んでいる場所の事らしいけど、そんな事よりご飯が食べたい。

 魔法袋の中の食糧は既に殆ど無く、鍋は有っても煮るモノが無い。

 道中でいきなりサバイバル生活が始まった所為で、魔法が上手くなった以上に、生で川の水を飲むと困るという経験もした。

 いちいち沸かしてから飲まないとダメだと知ったのは飲んだ後。

 ただ、コテージという小さな家が魔法袋から出てきたのは驚いた。

 結界付きの家の中はかまどとトイレとベッドがある。

 風呂は無し……。

 ちゃんと準備すれば15日程度で済む旅程を倍必要とした道中の事は詳しく話したくない。思い出したくない……。

 私達のボロボロの姿を見て判断していただきたい。


 -現在-


 先生がギルドを最初に訪れる事にしたのは使えるお金を得る為だったのだが、古代金貨を見せる訳にもいかず、簡単なお仕事を探していたのだが……。


「野盗が突然消えちまって、指定された隠れ家にもいなかったんだよ」

「失敗って事ですか?」

「そー言っちまえばそうなんだが、本当に野盗は居たのか?」


 依頼受領カウンターでの冒険者と受付嬢の会話だ。

 また先生がだらだらと汗を流している。

 倒した証拠品でも有ればお金になったんだろうけど、その時の私はまだ知らない。

 ともかく、依頼を受ける為にはギルドで登録する必要がある。

 横のカウンターではまだヤイノヤイノやっているので、もう一つのカウンターへ。

 受付のカッコイイお兄さんに挨拶をするが、こっちを見ないで先生を見詰めている。

 そりゃ先生は美人ですけどー、むぅ。


「ここらじゃ見かけないな、依頼か新規登録かい?」

「以前、ギルドに登録はしていましたけど、多重登録って問題あります?」

「問題は有るな、そんな事が出来たら犯罪者だって何度も新規登録に来る」

「ですよねー……」


 先生が浮かない顔をしている。


「多重登録するなら以前のギルドカードも必要になるが、再発行手続きなら可能だ。」

「再発行ですか。出来ますかね?」

「ギルドの歴史は凄い……らしいぞ。1000年前に登録した奴のだって残っているくらいだ」


 若くして登録した長命種族が、そのまま国に帰ってしまい、戻ってきた時に再発行した事件で、ギルド員の間では有名な話である。


「登録したギルドの名前とアンタの名前で探す事は出来るが登録ナンバーを言ってくれた方が助かる。まぁ、覚えてないだろ」


 11桁のナンバーだった気がするけど覚えてません。

 うーん、どっちにしても問題なんですよね。


「え、なに、先生?」


 先生は悲しそうに溜息を吐いた。

 なんで?


「ヒーデルハスにあるギルドで登録したマリアです」

「ヒーデルハス?そんなの聞いた事ねぇな……」


 ですよねー……。

 魔物の総攻撃で滅亡した筈ですから。


「ヒーデルハス、ギルド……一応資料は有るな、ちょっと時間が掛かりそうだ。あっちのテーブルで待っててくれ。お嬢ちゃんにはサービスでリンゴジュースを届けさせよう」

「あら、ありがとっ♪」


 甘くて美味しいリンゴジュースを飲みながらしばらく待っていると、とても綺麗な女性が現れた。

 先生の分のリンゴジュースは無いよ。


「えっと……マリア先生?ですよね」


 先生の知り合い多過ぎなんだけど、そんな先生がなんで城で骨に成っているのか、とても不思議なのよね。








※おまけ



先生「一年働くとお給金として金貨何枚か貰っただけなんですよ

アイシャ「その一年って何回あったの?

先生「何千回……

アイシャ「先生は一体何歳なのよ……



■:ヒーデルハス王国


現在は存在しない王国

他国の侵略に失敗した上に、革命軍がクーデターを成功させた後、疲弊しきったところを魔物によって滅ぼされた悲しい国。



■:港町ボールド


魔王国領に一番近い雑多な種族が住む町

凶悪な魔物が少ないのは魔王国のおかげ

漁業が盛んに行われている

ギルドが存在する事で冒険者も多い

魔王国側に漁港が有り、そこはボールドの一部で魔王国は管理していない

中立の立場で、ヘンデニル公国領に該当する


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