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第108話 快進撃の裏側

 ギデオンが総指揮官、副官がリッカーの正規兵と一部傭兵の混成部隊が完成する。

 総勢600名で、傭兵の殆どは逃げてきた冒険者達である。

 その冒険者達がギデオンの戦いに参加する理由は、仲間を殺されていたからで、殺したのは兵士なのか班目なのか分からないが、生きて逃げてきたのが殆ど男であることから、女性の仲間も多く連れ去られている。

 その後の女性がどうなったのかは想像も予想もしたくない。

 参加している中で女性はピンスとリッカーを含めても8人しかいない。

 

「そうだ、出る前に渡したかったのがあったんだ」

「俺にか?」

「先生からの手紙」

「なんで、俺が、先生からの?」


 訝し気な表情を示しながらも、手紙を受け取ると中身を……。


「何だこれ」

「あれ、手紙を間違える筈ないんだけど」

「間違ってないけどさぁ、あの先生は俺が悩む事を知ってたのか」

「先生だからね。それで、対策か何か」

「こっちくんな」

「は?」

「手紙って紙一枚にそれだけ書いてあるんだが……」


 手紙は二枚に折りたたんである。


「中を見なさいよ……」


 衝撃過ぎて忘れてた。

 ……。


「丁寧に頼りに来るなって書かれているが、世界樹に行く事を勧めているな。なんて言うか、あの先生は他人の事の先をどこまで見えるんだか」

「私だって丸裸にされちゃうもんね」

「丸裸ってー、ちょっと興奮しますねー」


 なんでそこだけ反応するんだ。


「あんた、変わった趣味の子と付き合ってるわね」

「修ちゃんと裸の付き合いをしてるもんねー」


 出発前でまだ人が少なくて助かった。

 コイツ等は女の癖にへーきでこういう会話するんだよな……。

 

「ギデオンって、そんな事を恥ずかしがるタイプだっけ?」

「修ちゃんね、ベルディナンドに行ってから少し変わったの」

「ふーん」

「な、なんだよ……」

「なんかスッキリしたわね。以前のギデオンは何処か闇というか影というか、暗い感じが有ったけど……」


 目を細めて見つめた後、リッカーは視線を逸らした。

 ピンスが直ぐに気が付く。


「ざーんねん、修ちゃんはもう私のモノだもんね」

「ふふっ、奪う気なんて無いから安心しなさい」

「なーんか余裕そうなのが嫌だなーっ」

「余裕というか、恋愛する気にはなれないけど、ギデオンならあげても良いかなって思っただけよ」

「軽々しく言わないでくれ、昔の自分を思い出して恥ずかしくなる」


 リッカーとピンスが目を合わせる。

 何故二人は笑顔なんだ。

 勝手に俺の考えを見抜こうとするな。


「まー、欲しかったら私がいつでもあげるからねー」

「ん、あ、まぁ、その、うん……」


 リッカーに笑われた。


「助けられた癖に態度の悪い奴だな」

「あらそう?助けてくれてありがとねー」

「お、おう……」


 誤魔化すように中庭に人が集まっているのを窓から見下ろす。

 すでに班目が撤退した情報を得ているから、苦戦する心配もない。

 頼まれたからこいつらを率いて行くが、多分必要ないだろう。


「用意できたみたいだから、そろそろ行く?」

「散歩感覚で良いぞ」

「流石勇者様ねーっ」

「もう勇者じゃないけどな」

「……そうなんだ?」

「鑑定しとくか?」

「あ、見たい見たい」




名前 ギデオン(シュウイチ・山本) 性別 男 年齢 25 種族 普人

職業 聖魔士 Lv 103 筋力 776 

魔力 359 敏捷 65 魅力 55

HP 9314 MP 564

所持 魔法袋 太陽の剣 星銀の鎧

特殊技能 異世界転移 ドラゴンバスター 鑑定Lv3 技能神と契約 聖女の加護



名前 ピンス・ピピーニン 性別 女 年齢 20 種族 普人と妖精のハーフ

職業 偽りの聖女 Lv 69 筋力 5 

魔力 223 敏捷 16 魅力 333

HP 931 MP 15426

所持 精神の杖

特殊技能 聖女の覚醒 治癒Lv3 鑑定Lv1 予感Lv1



名前 リッカー 性別 女 年齢 227 種族 天使

職業 双剣士 Lv 323 筋力 358 

魔力 503 敏捷 159(318) 魅力 223

HP 2027 MP 2126

所持 ミスリル銀のツインダガー 鉱石リザードの胸当て

特殊技能 飛翔 自然治癒Lv1 見切りLV2 天命神と契約




「ココまで来るとあんまり変化が無いんだよな、少し下がっている気もするが」

「ピンスがえぐい事になってるんだけど」

「ずっと聖女の魔法使ってた所為かなーっ」

「魔力がもっと上がっても良いんじゃないかしら」

「多分、杖に頼ってたからかなー、使うと疲れるんだもん……」


 確認を終えて中庭に向かう。

 正規兵は綺麗に整列しているが、傭兵部隊はバラバラだ。

 ただ、ヘンデニル公国の軍旗を全員に持たせている。

 旗と言ってもハンカチサイズのモノだ。

 それを見て逃げるなら良し。

 挑んでくる奴も居るかもしれないが、たいした数ではないだろう。

 そもそも、挑んでくる無謀な奴はそこ見から逃げたくない理由が有るんだろう。

 兵士達の他にも伯爵と公爵が待っていたが、護衛の兵士が一人しかいない。


「たったこれだけ。しかし、これだけで首都を取り戻しに行くとは……」

「公爵様、彼らは彼らの理由があって出発するのです。我々の為だけではない事を、お忘れなきよう……」


 ブリード伯爵が少しだけ厳しい口調で言ったのが印象的だった。

 俺が知った事では、この世界での貴族と言えば国家権力に近いモノがある。

 伯爵でさえ東京ドーム何個分か解らない領地を持っていても不思議は無い。

 それよりも立場が上の公爵に講釈を垂れるなんて信じられん暴挙だろう。


「……デニルを奪還するのは何年後になるだろうか」


 それを受け入れなければならない公爵にちょっと同情してしまう。

 あんなおっさんが落ち込んでる姿を眺める趣味も無いしな。

 着ている服も少し質が落ちているのは、売って金にしたんだろう。

 伯爵は商人だからそれほど変わらんが。


「公爵」

「なんだね、ギデオン殿」

「奪還なら何年も掛かりませんよ、その後の維持の方が苦労するから、それだけを考えてくれれば」


 少し驚いた後に、凄い笑顔になった。

 やっぱ、まだ慣れないな。

 ムズムズする。


「期待しておるぞ」


 リッカーとピンスに笑われるのはなんでだ。


「ギデオン、みんな待ちくたびれてるみたいよ」

「まだ朝早いんだけどな」

「じゃあ、しゅっぱーーーっつ!!」

「おおーー!!」


 ちょっと待て、なんでピンスが言った。

 なんで、それで出発するんだ。

 お、おぃっ。


「ギデオン殿」


 この兵士は護衛用に残った者だ。


「なんだ、もう行くが?」

「ギルドより手紙が届けられていまして」

「こんなに朝早くからか?」


 俺に渡す為のタイミングを待っていたらしい。


「こちらです」


 手紙を見ると先生と魔王の名前がある。

 どういうことだ。

 何か緊急に知らせる事でもあったか?!

 受け取った手紙の内容を読んで俺の力が抜けた……。


「……」

「ギデオン殿?」

「な、なんでもない、ちょっと気が抜けただけだ」

「え、大変な事でも書かれていましたか?」

「いや、俺個人の事だ。キニスルナ」


 ギデオンはその手紙を魔法袋に入れてしばらく忘れることにした。

 支払えない金額ではないし、期限も無い。

 要するに、やることやったら出頭しろってことだ。

 チクショーメ!!





 それから10日が過ぎ、ギデオン達は進行する村や町を次々と解放し、快進撃を続けた。公国軍の兵士だと分かると向こうから投降して来るぐらいだった。その所為も有って進撃速度は落ちたが、解放された村や町は直ぐに活気を取り戻している。

 ただ、この戦いに巻き込まれて餓死する者も少なくない。

 その殆どは奴隷達で、盗賊達が盗む食べ物が無くて困るぐらいだから、奴隷は最初に食糧を打ち切られているのだ。

 それを助けたのがギデオンである。


「干し肉と水しか無いが困っている奴らに配れ」

「ど、奴隷達にもですか?」

「関係ない。あと、食糧の横流しをしたやつがいたら首をハネると伝えておけ」


 ギデオンはこの世界に来てそれなりに経っているし、経験もしているが、目の前で飢えて死ぬ人を見過ごせない。

 今までなら別の理由があったが、今は無い。

 そもそも、あの時も好んでやっていた訳ではないし、基本的には敵だったのだ。

 だからと言って、今までの自分が過去に何をやって来たのか、それを考えると心が絞めつけられる思いがある。

 

「なんか別人みたい」

「俺は変わったつもりは無いぞ。どちらかと言うと、取り戻した、が正しいかな」

「何も知らない異世界人を利用するやり口ってどこにでもある話みたいだしね」

「そういう意味じゃ、班目も被害者だが……」


 現状を鑑みるに、班目はそれなりに自分の意思でやっている部分が多い。

 少なくとも召喚された当時の俺よりは自由だろう。

 敵兵士でも女なら殺さない。

 子供は見逃すし老人なら助けている。

 それは、町の人達の評判から明らかになった事で、美女にだけ容赦しない……。

 飽きたら捨てるし、場合によっては解放する。

 とても不思議な奴だ。

 まぁ、欲望に忠実と言えばその通りなのだが。


「食糧問題は俺にはなんとも出来ないな」

「魔王国に大半を買い占められた後だからね」

「あとはギンギールに頼み込むぐらいだが、上手くやってるかな」


 獣人系は奴隷として人気が高く、ギンギールからヘンデニルは嫌われている。

 ただ、普人に比べると肉体が頑丈で、同年代の子供だったら獣人は普人の大人並みの力が有る。それも有って労働奴隷として人気が高いのだ。

 あのモフモフした耳と尻尾。

 発情期の性欲の強さ。

 それでいて一途で従順な者が多く、一度主人と認めれば裏切ることは殆ど無いのも良い点の一つだ。

 ピンスは妖精とのハーフなので見た目は普人と変わらない。


「ギンギールって獣人の国っスよね?」


 リッカーの周りをうろちょろしている女の子だ。

 頭の上の方にある耳がぴくぴくしている。

 耳だけだと、犬か狐か狼か分からん事が多いんだが……俺だけじゃないよな?

 あと、名前は知らん。


「当たり前の事を訊いてくるけど、フランソワはギンギール出身じゃないの?」


 フランソワっていうのか、目が隠れそうなくらいな長い前髪だが、全体的にはセミショートで、少し痩せ気味に見える。足はムチムチしているな……。

 なんでピンスは俺の腕に抱き付くのかな?


「違うっス。お金稼いだら行くつもりだったっスけど」

「この騒ぎが終わって暇になったら連れてってあげても良いわよ」

「ほんとっスか?!」


 びょんって跳ねた。

 尻尾も見えた。

 ああ、狐だったのか。


「獣人族と戦うのは面倒な事が多いから揉め事は控えた方が良いぞ」

「なんで行く前からトラブルに巻き込まれるのが前提なのよ」

「今回の件でギンギールに逃げた貴族も居るだろうからな」

「あ、そっか……確かに面倒な事になりそうね」

「まぁ、ギンギールで保護するとは思えないし、敵前逃亡にしても、敗戦逃亡にしても、戦争犯罪人として身柄を要求すれば済むだけの話だ」

「へー、意外と考えてるわね」

「俺自身がそうだからな」


 少し自分を責めるような事を言うとピンスが心配そうに俺を見る。

 大丈夫。

 可愛いから頭撫でとくか。


「ちょっと、目の前でなんでいちゃつくのよ」

「そっちも撫でて欲しそうな奴がいるぞ」

「え、あんたねぇ……」


 顔を赤くしてモジモジしているのは、そんな事をして貰う回数が少ないからだろう。

 ピンスなんてへーきで……やめろ首筋を舐めるな。

 暫く無駄な時間が流れ、周囲の視線が集まる前に立ち去った。

 とは言っても、戦勝処理じゃなくて、敗戦処理に近い作業ばかりだ。

 町を見て回れば腹を空かせた子供が集まってくる。

 まだ敵意を失っていない兵士が襲い掛かってくる。

 老人が悲しそうに畑を見ている。

 怪我をした女たちがすがってくる。


「痛々しいですね」

「怪我は治せても心は治せないからな」

「そうだけどー……あのまま聖女やらされていたらこんな事になったのかなあ……」

「そういや、ピンスは何処の国で聖女をやらされていたんだ?」

「さぁ?」

「なんで自分の国を知らないんだよ」

「物心ついた頃に孤児院に居て、いつの間にか城に連れて行かれて……」


 明るさが取り柄のような奴が落ち込むのは心が痛い。

 自分の事を自分が知らないのは辛いものがある。

 その割にはそこそこの知識が有るところを見ると、教育は受けてたんだと思う。


「……時間が出来たらお前の事を話してくれよ」

「うん……」


 巡回を終えたら、今日は用意された宿屋で寝る。

 ベッドで寝るのも久しぶりだ。

 目が覚めるといつもピンスの膝を枕にしてたから、今日ぐらいはゆっくり寝かせてやるか。

 そう思っていたのに、翌日の朝、修一はベッドの上でピンスの膝枕で目を覚ました。

 部屋も別々だったし、夜に何もしなかったのに、なんでだ?

 不思議そうに眺めると笑顔で言われた。


「おはよっ、修ちゃん!」 








※おまけ



「倒されたスケルトンって敵に利用されないの?

「私以外が操ろうとすると骨がバラバラになる呪いを掛けてあります


 お母さんそっくりの顔でニコニコしてるのが怖いんだけど。


「えっぐ……



 

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-**-*-

 

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宜しくお願いしますm(_"_)m

 

 

 

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