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わたくしの可愛い子どもたちへ

ご機嫌いかが?

クリストフ、アリスティア。

あなたたちの母、クラウディアです。


この手紙を読んでいるということは、これから伝える内容を受け止められるだけの下地が整ったということなのでしょう。

二人とも、成人前には読んでいてほしいものね。

あなたたちに伝えたいことはたくさんあるのだけれど、そうね、まずはあなたたちのお父様について教えましょうか。


あなたたちのお父様はベレトではありません。

あれは訳あって迎えた、お飾りでしかない無能です。

ですから、もしもあの男がなにかやらかしたその時は遠慮なくやっておしまいなさい。

念のため爵位の譲渡状などの書類を用意してあります。

もしもの時は王家に協力を要請しなさいね。


では次。

クランベルス家の特異性についてです。

建国神話はわかりますね?

我が国の初代国王は共に戦った竜の姫を王妃に迎えたとありますが、実は竜の姫は二人いました。

初代国王が黒の姫を、初代国王の戦友であったクランベルス家の初代当主が白の姫を娶ったのです。

クランベルス家がいち臣下として初代国王の下に付く時、王家の威信のため王家とクランベルス家の間で白の姫を秘匿する取り決めがなされました。

つまりクランベルス家も王家と同じく竜の血が流れているわけね。

以降、クランベルス家と王家は定期的に血を交わらせてきました。

竜の血が薄くなってきたころに両家で血を交わらせると、不思議なことに再び竜の血が強く現れるようになるのよ。


竜の血には、いくつか特徴があります。

一つ、普通の人よりも身体能力が高く、魔力も多いこと。

人よりも遥かに強い竜なのですから、当然とも言えますね。

二つ、仲間意識がとても強いこと。

竜は仲間が傷つけられると、全員で反撃に向かうほど情け深いのです。

三つ、パートナーに深い愛情を注ぐこと。

とても仲の良い夫婦が竜の(つがい)に例えられるのは有名ですね。


わたくしがお飾りの夫としてベレトを迎えたのはこの三つ目の特徴が関わってきます。

パートナー、番に選んだ相手の身分が低かったのよ。

クランベルス家は王家に次ぐとも言われるほど力のある家ですから、爵位のない彼を表立って夫とするのは諦めざるを得ませんでした。

そこで、誰の手にも負えず持て余されていたベレトを形だけの夫として引き取る代わりに、ベレトの実家であるハーウェイ伯爵家から農作物を優先的に、優遇して輸入できるよう話をつけたの。

ベレトの価値はその程度よ。

だから徹底的に叩きのめしてハーウェイ家からも最大限慰謝料を出させるといいわ。


そうそう、それから。

あなたたちには既にわたくしが個人で持っていた爵位を譲渡してあります。

クランベルス家の家督もクリスに譲渡してしまえればよかったのだけれど、それはさすがにできなかったの。

ごめんなさいね。

クリスにはフェイデ子爵位を、アリスにはエスティ子爵位を譲渡したわ。

ベレトはこのことを知りません。

そもそもわたくしが子爵位を二つ持っていたことすら気付いていなかったのではないかしら?

子爵位の証明書はクランベルス辺境伯位の譲渡状とともにあなたたちの本当のお父様に預けてあります。

うまく活用なさい。


最後に。

わたくしの可愛い子どもたち。

お母様は、いつまでもあなたたちを愛しています。

どうか、幸せに生きて。

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