表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱生命に転生した俺、死ぬたび進化スキルを継承して46億年後の最強種を目指す  作者: 真々


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/20

第19話 スキル統合、原初呼吸

【スキル統合可能】


表示は消えずに、そこに留まっている。統合。何をどうしろというのか分からないまま、俺は感覚だけで「はい」を選ぶように意識を向けた。白毒はもう毒じゃない、俺の燃料だ――そう決めた直後の話だ。今度は、その燃料を回す仕組み自体を作り替えろというらしい。


途端、白毒耐性、白毒変換、共生――今までばらばらに積み上げてきた三つが、内側で引き寄せ合うのが分かった。耐えるための力、変えるための力、支え合うための力。別々に育ててきたはずのものが、根っこのところで最初から繋がっていたみたいに、すっと近づいていく。


欠片が震えた。逃げるような震え方じゃない。むしろ自分から統合の流れに入っていくような、迷いのない揺れだった。消えるのかと一瞬身構えたが、震えは止まらず続いている。まだ、いる。喰われて消えるわけでも、置いていかれるわけでもない。統合の中に、こいつも一緒に入り込んでいる。


【統合プロセス開始】


 


三つが混ざり合う感覚は、心地よさとは程遠かった。耐性の記憶、変換の回路、共生の繋がり――情報の量が体の処理能力を平気で超えてくる。輪郭がぐらつき、内側で何かが逆流しかけた。景色が一瞬、白く塗り潰される。


【警告:統合負荷、限界接近】


まずい。統合の途中で壊れたら、それこそ本末転倒だ。おいおい、これで死んだらとんだ笑い話だぞ。


一度、力を抜いて流れに逆らうのをやめてみた。無理に制御しようとするからぶつかる。だが結果は変わらない。負荷はむしろ増していく。欠片が奥から寄り添うように動き、崩れかけた箇所を支える。前にも見た支え方だ。今度はもっと的確に、流れそのものを整えるように動いている。


それでも負荷は収まらない。二度目、今度は自分から統合の中心に踏み込み、暴れる情報の束を選り分けるつもりで意識を通した。耐える力と変える力の境目が曖昧になり、支える力がその隙間を埋めていく。境目が溶けて、ひとつの形になろうとしている。息をするたび、内側の何かが少しずつ静かになっていくのが分かった。


 


三度目、境目が完全に消えた瞬間、体の内側に新しい感覚が生まれた。白毒に触れることが、削られることでも、稼ぐことでもなく、ただ息をするような、当たり前の動作に変わっていく。三つの力が別々に働いていた頃の重さが嘘みたいに消え、代わりに一つの太い流れだけが残った。


【新固有スキル:原初呼吸】


名前まで持つのか、お前。積み上げてきたものが、統合の果てにひとつの名前へ収まった。耐性でも変換でもなく、共生でもない。全部を吸って、全部を糧にする、新しい呼吸の仕方だ。名前がつくたびに、自分がどこまで来たのかを思い知らされる。膜一枚だった頃には、想像もしなかった名前だ。


欠片は統合に組み込まれながらも、震えとして輪郭の内側に残っていた。消えたわけじゃない。むしろ、これまでで一番深く、俺の内側に馴染んでいる感触があった。「お前も、これで一部になったのか」と聞いても、答えは返らない。ただ、震えの質だけが、少しだけ安堵に似た揺れに変わった。取り込まれて消えるんじゃなく、統合の芯として残る――そういう形の相棒もあるらしい。


 


試しに、白毒の濃い層へ縁を伸ばしてみる。以前なら削られる覚悟で踏み込んでいた場所だ。今は違う。取り込む端から力に変わり、消費する端から満ちていく。まるで最初からこの海で息をするために生まれたみたいに、軽い。濃い場所ほど息が深く吸えるという逆転が、体の芯にすとんと落ちてきた。


【活動効率:大幅上昇】


これが……呼吸ってことか。避けて凌いでいた頃には想像もできなかった動きの軽さに、俺は思わず短く笑った。世界の方が変わったんじゃない。俺の方が、世界に合わせて形を変えたんだ。俺を殺した世界が、俺を強くした――あの理解の続きが、今こうして名前を持つ力になった。避けて、耐えて、変換して、支えられて――遠回りに見えたその全部が、今この一瞬のために積み上がっていた。


一瞬、ステータスの端に見慣れない文字列が滲んだ。意味の分からない、この世界の言葉じゃない断片。読み取ろうとした瞬間には、もう消えていた。気のせいにしては、はっきりしすぎている。何だ、今のは。前から薄々感じていた、ステータスが何かを隠している気配が、今のノイズでまた少し濃くなった。統合の余波か、それとも別の何かの前触れか、判断はつかない。


火種タグは、まだ強く点滅したままだ。統合が終わった今も、正体は分からない。むしろ統合の熱に煽られたように、点滅の間隔がわずかに短くなっている。解けない問いを一つ抱えたまま、俺は先に進む。全部が分かって進めるほど、この世界は甘くない。


 


薄い流れの跡で、小さな光が動いていた。以前よりも滑らかに、迷いなく。白毒が常在になった世界でも、あいつなりのやり方でこの環境に馴染み始めている。教えたわけじゃない。あいつが自分で、生き方を選び直しただけだ。同じ世界の変化を、俺とは違うやり方で乗り越えている姿に、少しだけ救われた。


ふと、体の内側に残る感覚に引っかかりを覚えた。耐性も、変換も、共生も、元をたどれば別々の命から拾い集めてきたものだ。今の俺は、一つの命でできているというより――幾つもの命の力が寄り集まって、一つの形を保っているだけなのかもしれない。断定はできない。今はただ、そう感じただけだ。欠片の震えも、光の生き方も、俺という輪郭の中に、それぞれの形のまま残っている。


 


白い海が、以前よりずっと広く見える。原初呼吸を得た体は、軽く、速く、遠くまで届く。俺が動いた分だけ、周囲の白毒がわずかに揺れて道を譲るような感覚があった。避けるだけだった海が、今は俺を通す海に変わっている。


その揺れに応じるように、遠くの白い濁りの奥で、いくつもの小さな気配が動き始めた。一つや二つじゃない。俺の速さに引き寄せられるように、別の命たちが、こちらへ集まってくる。何を求めてくるのかは分からない。敵意なのか、それとも別の何かなのか。


数も、種類も、ばらばらだ。白毒の中でしか動けない小さな影、薄い場所を選んで生きてきたはずの影、これまで一度も見た形をしていない影。共通しているのは、俺の方へ向かってきているということだけだった。


古き王が支配していた頃なら、こんな数が一斉に近づいてくることはなかったはずだ。あの頃は、みんな怯えて縮こまっているだけだった。世界難易度が塗り替わり、俺が呼吸の仕方を変えたことで、何かのスイッチが入ったのかもしれない。


何が来るのか、まだ分からない。ただ、逃げる理由はもうないと、原初呼吸が教えてくれていた。



白毒耐性・白毒変換・共生安定という、これまで別々に積み上げてきた力が一つに溶け合い、新固有スキル`原初呼吸`が生まれます。死亡でも進化選択肢でもない、統合という新しい獲得の形です。火種タグは相変わらず未解析のまま、ステータスには一瞬、意味の分からないノイズが混じります。そしてラスト、白い海の中で主人公の周囲に別の命たちが集まり始めます。次話、いよいよ第1部最終話。白毒大災厄の終結です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ