【10】これが私の考える最高のざまあとハッピーエンド <完>
監獄につけていた監視カメラのおかげで、悪人たちがこれっぽっちも反省していないことがよく分かった。
少しでも悪いと思って、生き方を変える余地があるなら、違う結末にしようと思っていた。
でも、ダメね。この人たち、変わらない。
陛下の許可を得た上で、私はアトラスと共に彼らに沙汰を告げに行った。
「神殿長、ごきげんよう」
「マ、マリエラ。アトラス殿下も。聞いてください。これは何かの間違いです」
「いいえ、間違いではありません。あなたが裏帳簿に記入しているところ、確かに見ましたもの」
監獄の壁に、神殿長が横領している証拠映像を映す。
「陛下は、処刑をとおっしゃいました」
「ひっ」
「わたくしは、処刑ではなく生きて罪を償ってもらいたいと願いました」
「ほっ」
「とある国に行っていただきます。その国は、春は花粉に覆われ、夏は酷暑の上に台風と集中豪雨、秋は年々短くなり、冬は豪雪。そして、地震と火山噴火が起こります」
「バカな、そのような国、聞いたことがないわ」
「美しい国です。善き人たちが、真面目にコツコツ必死で生きている国です。あなたの償いは、かの国を襲う天災から人々を守ること。さあ、お逝きなさい」
女神が神殿長をあの国に送ってくれた。
次は魔導研究所の人たち。
「殿下、これは一体どういうことでしょう」
「俺の魔力を悪用したこと、許しはしない」
「誤解です」
「いいえ、誤解ではありませんわ。あなたたちの悪だくみのあれこれ、見させていただきましたもの。あなたたちの魔力で、あの国を住みやすくするのですよ」
王妃は見るに堪えない醜態をさらした。
「アトラス、聞いてちょうだい。あなたが赤子の頃からのつきあいではないの」
「母をいじめぬき、死に追いやったお前を許すことは絶対にない」
「ちがうの、聞いて。あの人が悪いのよ。あの人が」
「その涙と鼻水で、あの国の花粉を全て取り込むのですよ」
エリオットは間抜けだった。
「マリエラ、やあ、相変わらずかわいいな」
「バカですか」
「バ、バカとはなんだ」
「相変わらず頭が空っぽですわね。アトラス様とは大違い」
「アトラス、貴様そんなところでなにをしている。さっさと出せ」
「あなたのことを兄と慕ったことも数秒ぐらいはありました。その気持ちはとっくに消え失せました」
「さあ、あちらでは少しは人の役に立つのですよ。豪雪地帯の雪かきがんばって」
セレーナは自分の置かれた立場が分かっていない。
「マ、マリエラ。お願い、ここから出して。わたくしの侍女として雇ってあげるから」
「ふざけないで」
「あら、そちらのイケメンは。ま、まあ。アトラス様ではありませんか。アトラス様、助けてください。わたくしと共に、この国の頂点に君臨いたしましょう」
「そのようなことはあり得ない。考えただけで吐きそうだ」
「まあ、ひどいですわ。わたくしの美貌をしかとご覧になって」
「化粧が一瞬で溶けるあの国を、涼しくするのですよ」
女神に送り込まれその土地で、悪人たちは神の眷属となり、不眠不休無給で天災と戦っている。
私の大切な人たちが暮らすその国を、悪人たちが少しでも住みやすくしてくれればと願う。
***
ざまあが終わり、私とアトラスは大忙しだ。陛下の仕事を手伝い、数々のブラック職場をホワイト化しているのだ。
業務フローを整え、無駄を削り、プランドゥーシーアクションのサイクルを回す。
サビ残、ワンオペ、過労を撲滅した。前世の私には力がなかったからできなかった。
自分を極限まで酷使して仕事を片付けるしかなかった。
でも、今は違う。神ペンと推しの愛と王族のトラの威を最大限に活用できる。
「マリエラ様のおかげで、働きやすくなりました」
「書式を統一するだけで、こんなに業務が楽になるなんて」
「情報の一元管理、肝に銘じます」
「定時出勤、定時退社、有給休暇、最高です」
「嫁の機嫌がいいです」
「子どもが増えました」
「マリエラ様、ありがとうございます」
毎日、いいねが降ってくる。余ったいいねを、この国とあの国に送る。
結婚式の日、バルコニーに出ると視線の届く全てのところが民で埋め尽くされていた。
「あのとき、卵を投げてごめんなさーい」
「冤罪なのに、ののしったこと反省してます」
「マリエラ様、ありがとうございます」
「アトラス様とお幸せにー」
みんなからいいねが大量に届く。もう誰ひとり、卵を投げる人はいない。
隣のアトラスを見ると、今日の作画は過去一で神がかっている。
「美! ブー」
しまった、鼻血が噴き出てしまった。白いウェディングドレスが赤く染まる。
「マリエラ、大丈夫?」
「大丈夫です」
『ワールド・エディター、お色直し』
白いウェディングドレスが真っ赤なカクテルドレスに変わる。
群衆がどよめき、歓喜の叫びが上がった。
「俺の妻が規格外すぎる」
「もう、返品はできませんわよ」
「もちろんだ。マリエラだけを一生愛し続けると誓う」
「私の夫が最高すぎてどうしよう。もちろん私もアトラスだけを一生愛し続けると誓うわ」
私の幸せは、私が描く。
<完>
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