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あかり
譬だが。
―ナノ微生物。
―1996年、とある地理学者は海底から得た岩石に、微細な自生増殖体を認めたのだ。
其れは結晶の様でもあるが、DNAを有していて生命的徴候をそなえてもいた。
然も生命の下限閾の小ささを超えている。非常に繊かいのだ。
譬だ。此れは。
いま私の眼球表面に生命の起源を感覚した。
其れは仄明るく輝いていて、分裂を繰り返している。
眩しい、あかり。
多分、私は此の生命にジャックされるだろう。カージャックやハイジャックの様にだ。
或る種の菌糸類が神経毒により昆虫の脳神経を簒奪してしまう様にだ。
だから、いま。
其処にあるハサミの鋏身を深く刺して、私の眼を刳り貫いてくれないか。
―おねがいだ。
―光線の摘出を、私は望むのだ。




