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会計士 異世界に立つ  作者: 一村
プロローグ
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第4話 3の月1日(3)

第4話 3の月1日(3)


 「だからぁ 加納さんは楽しめた? 二回目の少年時代」


 美女の言葉に全てを思い出した俺は美女と近くに移動し腰を下ろし会話する。


 「看護師さん 二回目の少年時代楽しめたよ」

 「そう 良かったわ」


 隣に座る黒髪美女が笑顔でそういうと、俺は昼食を取ることも忘れ、話に夢中になり矢継早にこの世界での思い出を語る。

 

 

 ゴートやアイとの生活のこと

 友人との近くの草原への冒険ごっこなどの交流

 (後から思い出すと恥ずかしいが)近所の女の子への淡い初恋

 

 「・・・ってこともあったんだ」

 「ホントに楽しめたようね」 


 客観的に見れば少年が身振り手振りで美女に語りかけている。

 実際には精神の年齢は32歳の男性が年甲斐もなく熱く語っているのだが。 


 経験できたことをつぶさに語っているとすでに陽は傾き始めていた。

 

 話し終え一息つくと、


 「さてと 加納さん いえ今はライト君かな? これか 」


 美女の話に割り込む。

 

 「その前に」


 立ち上がり深く頭を下げお礼を述べる。

  

 「正直な所さ なんであなたがこんな事をしてくれたのかはさっぱりだけど ありがとう 本当に楽しかったよ」


 記憶を取り戻して感じた事を思ったままにそう言うと


 「どういたしまして じゃあ続きを話すわよ」

 「・・・」

 

 美女は先ほどまでとは打って変わり、まじめな表情で続ける。


 「ライト君 前世の記憶を思い出したあなたには3つの選択肢がある」

 「1つ目は前の世界に戻ること もちろんこの世界でのことは記憶には残るが周りの人間にはしゃべることはできないわ」

 

 同時に日本での現在の状況を伝える。どうやら戻るのはあの時から一ヵ月後、こん睡状態から目覚めるようだ。

 

 「2つ目はこの世界に残るという選択肢 前世である今の『加納次郎の記憶・知識』や私とのこのやり取りも全て頭から消してね」

 

 (純粋にマース=ライトとして生きるという事か)


 「3つ目は同じくこの世界に残るという選択肢 前世の『加納次郎の記憶・知識』を残したままね」


 (このままでって事だな)


 「ただしこの世界に残る2・3の選択肢を選択すれば、日本でのあなたの肉体はこん睡状態のまま息を引き取る事になる」

 

 「なので後から選択を後悔したとしても戻れることは絶対にない」


 「さらに3の場合 記憶や知識を引き継ぐ事であなた自身に大きな反動があるわ」


 どのような事が起こるのか聞いてみたが選択するまで教えられないとのことだった。

 


 ・・・・・・ 



 すっかり陽は落ち、夜の帳が降りる。 


 「そろそろ夕食の時間ね さすがに今決断しろとはいわないわ 今夜この場所で答えを聞かせて頂戴」


 そういうと黒髪美女は立ち去っていく。


 


 一瞬 (どーするオレ) なんて某CMが頭がよぎったりもしたのは内緒である。

 


 あのあとゴートの店に戻りアイの作る夕食を食べたのだが、ゴートやアイの話はほとんど頭に入ってこなかった。

 何か雰囲気の変わったライトにゴートやアイも気になっていたようだが特に聞いてはこなかった。

 

 

 部屋に戻りベットに横になって天井を見つめる。


 1なら両親や友人たちにお別れを言う時間ができるな 寿命はほとんど残されていないが・・・


 2ならすべて忘れられるの  恐らく一番楽だろうな


 3は・・・

 





 (よし・・・決めた)






 約束の場所で待っていると美女がやってくる。


 「決まったかしら?」


 答えようとした時、病院で看病をしてくれているであろう母親の顔がふと頭をよぎる、


 (ごめんよ 母さん 先立つことになる親不孝者を許してくれ)



 「俺 3にするよ 『次郎の記憶・知識』を残したままライトとして生きることにする」

 「やっぱりね そうすると思っていたわ」

 

 そう言うとライトの心臓の上に手を置き何か唱える。

 一瞬心臓に痛みが走るがすぐに治まる。


 「完了!」


 



 何も変わった感じはしないが・・・きっとそうなんだろう。


 



 胸から手を離し笑顔で美女が言う


 「じゃあ 大きな反動の発表ね ・・・あなたはこれから面倒事に数多く巻き込まれることになる 一生」


 「嬉しい事 悲しい事 楽しい事 怒れる事 喜ばしい事 嫌になる事 etc.   普通の人のそれこそ数十倍」


 (面倒事が数十倍!)  

  

 言葉もないライト。

 美女は続ける。


 「頑張って生きなさい 次郎改め ライト」 

 

 そう言い自分の指から1つの指輪をはずし、


 「ライト左手を出して」

 

 手をだすと小指に銀色に光る指輪を嵌める

 

 「これは私からの贈り物 効果はじきにわかるわ ・・・・・ じゃあね」

 

 振り返り立ち去ろうとする美女におもわず声を掛ける


 「なあ いまさらなんだが 名前 教えてくれないか?」


 「・・・ゆいよ」


 「結さん 俺貰った命 一生懸命生きるから ライトとして精一杯やるから!・・・また会えるかな?」


 大声でいうと、結はフッと笑いながら


 「精一杯生き抜いたら 会えるかもね」


 そう言って結はライトの前から去っていった。



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