7-6
結局、じゃんけんはウルガーが勝ったようだった。
あいこを三十回くらい重ねての大勝利である。
勝った時に「いよっっしゃあああああああ!!見さらせこのクソ雑魚共がッ」と大声で叫んだウルガー。
俺はもう彼のキャラがわからないよ。
「ふ、たわいも無い」
「大人気ないの間違いでは?」
俺はウルガーに呆れつつブラキリア領の郊外へと行く。
そこには無限の荒野が広がっていた。
ブラキリアは豊富な鉱山資源で生計を立てていた領なので、基本的に農業はあまりやってこなかった。
寒冷気候ゆえ、というのもあるだろう。
なので、そもそも土作りからなっていない。
一度も耕したことのない土は硬く、そして栄養もない。
これでは農業どころではない。なので……
「よし、やるか」
「頑張ってくださいませ」
俺は影を広げる。
広く広く……
もっと、もっとだ。
とりあえず、今いるブラキリアの民が食うに困らないだけの農地を。
あと、商業用にも農地が欲しい。
広大な土地に、影を這わせる。
そして……
「穿て」
俺は影を硬質化してトゲ状にし、地に突き刺さす。
「混じれ」
めちゃくちゃに掻き回して、見るも無残にぐちゃぐちゃにする(土を)
「迸れ」
更に、高速振動させて、土をフッカフカにする。
「……ふ、土のベットの完成だぜ」
「お見事でございます」
俺の決め台詞に、横でウルガーが拍手をくれた。
あんまりカッコいいことは言っていないので、少し恥ずかしくなった。
まぁ、とりあえずこれで広大な耕地ができた。
「よし、次は肥料だ。ウルガー、ちょっと行ってくる」
「はっ、行ってらっしゃいませ」
俺は飛翔して、山の方へ向かった。
ーーーー
山の方。
つまり旧鉱山に近づけば近づく程に、魔物が増えていく。
うむ、これは確かに魔物が多すぎる。
これはおそらくスタンピードの前兆かなんかだろう。ラノベとかだと大体そういう展開なので間違いないと思う。
多分鉱山窟のどれかがダンジョン化してたりして、そのせいで魔物が異常繁殖しているとかがセオリーだ。
まぁ、流石に今すぐどうこうじゃないと思うから、とりあえず入学を済ませたら本格的な調査に乗り出そうと思う。
「さて、それじゃあ回収しますか」
俺は目につく魔物を片っ端から影に沈めていく。
力の差がありすぎるやつはなすすべなく、俺の影に沈んでいく。
抵抗できるそこそこ強いやつは、影で縛ってから影の棘槍で滅多刺しにして、亡き者にしてから
沈めていく。
迅速に、目につくもの全て、高速で屠って行く。
そして。
ものの十五分ほどで、周囲見渡す限り全ての魔物を駆逐した。
これでとりあえずしばらくは安寧が保たれることだろう。
「よし、回収終了」
俺は大量の魔物を影の中に収め、そしてまた元の場所に舞い戻った。
ーーーー
「お帰りなさいませ、お茶をどうぞ」
「お、おう。ありがと」
元の場所に戻れば、そこには東屋が立っていた。
簡素な作りではあるが、確かに東屋だ。
そしてそこにはアンティークなテーブルとチェアが置かれており、その上には紅茶が注がれたティーカップと、ケーキスタンドが置いてあった。
え、建てたの、東屋。
「建てました」
「……すごいね」
俺はウルガーが引いてくれた椅子に座り、紅茶を口にする。うまい。
「フィナンシェです。爺めが作りました」
「フィナンシェおいしい」
外側がサクサクのやつだ。おいしい奴だ。
うっまぁ。
「もぐもぐ、影よ」
俺はもぐもぐしながら、再び影を放つ。
東屋から伸びる影は、再び広大な耕地を覆う。
「潰して」
影の中で魔物をすりつぶす。
「ぶち撒けろ」
魔物ミンチを耕地に放つ。
「回れ」
ミンチと耕地を天地返して混ぜ混ぜする。
「腐り落ちろ」
よく混ぜた後、魔物部分を腐らせる。
「迸れ」
再び高速振動でふかふかに。
「……闇に呑まれよ」
最後に闇を付与して、魔物肥料が馴染んだ土を活性化させる。
「よし、完成かな?」
「次はマカロンです。エリゼと作りました」
「マカロンおいしい」
ほろほろに崩れて溶けるやつ。可愛い感じのさわやかな甘さが口に嬉しい。
うまぁ。
「紅茶と合う」
「何よりでございます」
さて、これで耕地は完成だ。次は作物を決める。