85日目-2
「……柳澤」
「XYZ」に戻ると、黒原が目を覚ましていた。残り3人は、まだ眠りこけたままだ。
「マスター」
「どうぞ。終わりましたらお声掛けを。『ゴミの処理』なら、深夜にでも」
そう言うとマスターはどこかへと消えた。俺は黒原の向かいに座る。
「殺す気っちゃ」
「もう宮東会にお前の居場所はない。絶縁状を出されて死ぬか、ここで死ぬかは大差がないな」
「川口の利権を奪おうという魂胆たい?いい度胸しと……」
「逆だ。川口を潰し、宮東会を元の姿に戻す」
一瞬黒原がポカンとした。そして、「クックック……」と笑い出す。
「何が可笑しい」
「クックック……ハハハ……ギャハハハハ!!!おま、本気で言っとるんね??馬鹿にも程があるたい???」
ガンッッッ
俺はテーブルを蹴りつけた。
「どこが馬鹿だ。ネクロフィリア(死姦愛好者)に死体を提供し、その見返りに武器や利権、金だと??
俺たちははぐれもんたい、だがやってはならん筋ってもんがあるっっ!!」
黒原が無表情になった。
「……筋?んなもん、圧倒的な力の前では何の意味もなか」
「何?」
「川口家は、この街に3代根付いとる。そして、その過程で色んなものを手にしたと。大陸との繋がりっちゃ」
「……まさか」
「知っとるよな?RPGの入手先がどこか。そもそも、何のために使うと思うとったん?」
冷や汗が背中に流れるのを感じた。そう、地元の抗争に使うにはRPGはオーバーキル過ぎる。九州進出を企む海甲組に対するとしても……過剰だ。
「戦争……とか言わねえよな」
ニヤリと黒原が嗤った。
「その通りっちゃ。川口が目指すのは、軍事独裁。そのためには、警察や自衛隊をも上回る力が要ると」
「馬鹿げている」
「と思うやろ?でも、その準備は進んどる。仮に俺を殺したとしたら、海甲組がそれになり代わるだけたい。
まあ、北との窓口は俺が持っとるからな。関係構築にはさぞ苦労するやろけど、何も変わらん」
「川口を倒せば違うはずたい」
「できるわけなか!マスコミ上層部、警察上層部、そして行政上層部。全てを奴は抑えとる。
余程の決定的証拠がなければ、何を報じられようと無傷たい。そして……暴力も通じん」
「……海甲組かっ!?」
ハハッと黒原が乾いた笑いを浮かべた。
「ならまだましたい。……相手は北っちゃ。宮東会を潰すことなんて、わけもなか」
……まずい。戸倉の件で、奴は身を固めている。それは、身の回りに武力を置いていることに等しい。
とすれば、黒原の言っていることはハッタリではない。まず鎌田を抱き込もうとするだろうが、それが不調に終わったなら確実に潰しに来る。
どうするか。もう一線は越えてしまった。
その時、俺の電話が鳴った。……見知らぬ番号……誰だっ?
「もしもし、俺たい」
「戸倉ッッ!!!」
戸倉が電話??一体、これはどういう……
「礼だけ言いたかったん。ありがとな」
「礼だと?」
「そう、礼や。最後のピース、もろたよ。川口との戦争はこれからや、お互い頑張ろな」
「何が頑張ろうだっっ!!そして、何が礼だ!?」
戸倉は何も答えず、電話を切った。
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その真意を、俺はやがて知ることになる。




