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100日後に死ぬ僕  作者: 変愚の人
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10日目

「おう、やっと来おった」


翔琉がニヤッと笑う。その横では秀哉がスマホを見て軽く首を振っていた。


「カッキーはまだなん?」


「あと10分遅れるやと。毎度時間にルーズなとこ、何とかならんかな」


ふうと息を吐き、秀哉がスマホをポケットにしまった。


今日の部活はオフだ。翔琉だけバレー部じゃないけど、僕たちはたまにこうやって遊びに行く。

カッキーがパチンコで勝ったので、今日は交通費をカッキーが持つ形で福岡まで遠征だ。

彼は実家がちょっとした地主のせいか、羽振りはいつもいいのだけど。


「俺、バレーはよう分からんけど、今年は行けそうなん?」


「ん……ベスト8まで行ければ上出来たい。組み合わせ次第やけど。どうせH福岡やF大大濠には逆立ちしても勝てんし」


「悪い、どうも最近スランプで……」


溜め息をつく僕に、秀哉が笑って肩に手を回した。


「まあ、大丈夫たい。うちが誇る身長182cmの大型セッターは私立強豪にもそうひけは取らん。どうせスランプは一時的や、頑張ろ?」


「ありがとな。今日のも、ひょっとして」


「まあ、それもあるかな。あと、3年進級祝いたい。博多でぱーっと服買って、旨いもん食えばスランプも終わるやろ」


向こうからカッキーが「遅れてすまん!!」と走ってきた。

福岡は3ヶ月ぶりだな。美里との初デートも福岡だったっけ。


#


「しかし、いつも思うんだが福岡まで長いな」


T畑から博多までは特急で約50分だ。鈍行だともっとかかる。

小倉まで出てから新幹線ならずっと早いけど、さすがに高校生がそれをやるのは気が引ける。勢い、4人でダベって時間を潰すしかない。


「しゃあないやろ。てか、4月から高3か……受験考えとる?」


秀哉の言葉にカッキーが首を横に振った。


「俺はしない。というか、株式投資覚えてな。デイで1日30万円とかやったらやめられんと」


「マジか!?そんなに儲かって……」


「いや、今までの収支はトントンよ。負ける時はドンと負けるからな。億トレ目指して勉強やな」


翔琉が呆れたように肩をすくめた。


「さっすが、お金持ってる奴はちゃうわ。俺は考え中やけど……いのりは東京行きたいらしいしなぁ……」


「いのりって、例の彼女か。小倉の」


「そ。うちから東京の大学はなかなかなあ……T筑の連中なら楽勝なんだろうけど」


T筑はうちの近所にある超進学校だ。野球部が恐ろしく強く、同じ野球部の翔琉は目の敵にしている。


「相変わらずT筑嫌いやな……俺は専門。手に職付けんといかんし。勇人はどうなん?」


秀哉が僕に訊いた。少し間を置いて、僕は口を開く。


「実は、昨日から家庭教師やってもらってん」


「家庭教師?高いんじゃなかと?」


「従兄弟の人が、ただでやってくれるって。新聞記者で、めちゃ教え方上手かった」


「うわ、羨ましか……。俺にも紹介してくれん?」


「どうやろ、忙しそうやし……」


あはは、と翔琉に苦笑する。ちょっと申し訳ない気がした。


電車はどんどん博多に近付く。何を買おうかな。僕は博多駅にある百貨店のサイトを調べ始めた。


#


「結構安く買えるんやなあ」


僕はビニール袋を持ち直した。予算は1万5000円だったけど、百貨店がセール中だからか意外に色々買えた。

若者向けのテナントがあれだけ入っているとありがたい。他の皆も、大体買いたいものは買えたようだ。


「で、飯どうすると?今……6時やけど。戻って食う?」


「いや、せっかくやしこっちで食お?誰かいい場所知っとると」


秀哉が手を挙げた。彼はラーメンやら何やらに詳しい。


「筑紫口を出てしばらく行くと、旨いラーメンあるとよ」


「筑紫口?天神まで行くかと思っとったけど」


「いや、そこまで行かんでも大丈夫。観光客向けじゃない、かなりガチの店があると。ちょっと歩くけど」


繁華街とは程遠い道を僕らは歩く。オフィス街、なのかな。

福岡総合庁舎とやらの脇を通り、公園を通りすぎると秀哉が足を止めた。


「ここやな」


「一双」という店に彼が入っていく。豚骨ラーメン特有の臭さはそんなにはない。ただ、濃厚な香りは伝わってくる。


「旨そうやな」


「親父に連れてこられてな。一幸舎系らしいけど、こっちの方がずっとマイルドで濃いと」


値段はちょっと豚骨にしては高めだ。でも、横の人のを見る限り、かなり濃い感じのスープではある。


しばらくすると、丼が置かれた。スープはさらっとというよりとろっとしている。福岡の豚骨って、わりとさらっとしている気がするけど。


ずずっ…………


「うわっ!」


麺を啜って、僕はその濃厚さに驚いた。こんな濃厚な豚骨、初めて食べた。

豚骨ラーメンで濃いのは、大体臭みが強い。それがいいんだって人もいるけど、ここは全然違う。濃くて、甘い。ずっと九州で生きてきたけど、これが本当の豚骨ラーメンだったんだと、生まれて17年目で初めて知った。


「旨かぁ……本当に旨かよ、これ!」


「そうたいそうたい。ここに匹敵するのは、もう一軒ぐらいたい」


秀哉が得意気に胸を張る。


「もう一軒?」


「そこは昼しかやっとらんと。だから今日はこっちや」


福岡に昼行く用事なんてあるのかな。……それが覆されるのは、あと1ヶ月弱先のことだ。

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