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100日後に死ぬ僕  作者: 変愚の人
100/125

89日目-1

「なるほど、そういうことだったわけっちゃねぇ」


ニタァとねちっこい笑みを鎌田が浮かべた。


「何のことだ」


「しらばっくれて。川口と北のことよ。お前の動きがイマイチ理解できんかったけど、そういうことなら理解するっちゃ。

読日の記事、どこも後追いしとらんけどガチなんやろ?」


鎌田は昨日どこかに消えてから、酷く上機嫌らしい。恐らくは、川口かその部下に色々吹き込まれたのだろう。


俺はマルボロを、力一杯ガラスの灰皿に押し付けた。


「そういうこととはなんだ」


「川口と北の利権よ。黒原と那珂川が仲良く独占しとったのを奪おうと思ったんやろ?だから奴らを消した」


黒原には一昨日時点で絶縁状が出された。奴は鎌田が引き取ったらしいが、今頃恐らくは玄界灘の魚の餌になっているだろう。

しかし、那珂川も俺が殺したと感付いているとは……さすがに冷や汗が出る。


「那珂川はサマーの手によるものだろう」


「田袋への絶縁状。あれはお前が那珂川を殺したことに対する口封じなんやろ?全て筋が通るたい」


鎌田が爪楊枝に「黒ダイヤ」を刺し、口に放り込んだ。やたらと甘い羊羮だが、これが奴の好物だ。


鎌田の推理は外れている。だが、そう信じ込ませた方が好都合だ。俺が奴の敵ではないと思わせた方がいい。


俺は「ハハ」と苦笑してみせた。


「さすがだな」


「大卒のお前よりも頭はええんや。まあ、若頭でなく本部長を選んだのは分からんけどな。フィクサー気取りか?」


「器じゃないだけだ」


「……そういう余裕ぶっとる所が、ばり嫌いたい」


力任せに爪楊枝を「黒ダイヤ」に突き刺すと、鎌田は立ち上がった。


「……まあいいっちゃ。お前には金は回さん」


「どこに行く」


「川口のとこたい。海甲組を取引から外し、俺らだけにしてもらう。海甲組がいるんは飲めん」


バンッ、と乱暴にドアは閉められた。俺はマルボロを深く吸う。


どう、川口を殺るか。海甲組を外すにしろ、川口には私設のSS……恐らくは北関連の奴がいる。簡単なことじゃない。

谷川記者たちに任せ、世論が奴を失脚させるのを期待するか?今のところ、それはあまり望みが高いとは言えない。ネット世論では、読日の暴走との見方が広がり始めている。

川口が、メディア各社を抑え込みにかかったのだ。「新春」が少し取り上げるかもしれない程度だろう。


幸い、俺はまだマークされてない。何かできることはあるあずだが……


「……ふう」


事務所には白煙だけが漂っていた。


#


その日、鎌田が帰ってくることは、なかった。



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