97) 無理矢理はダメなのね。
現在、オイラは監禁されております……
場所はロクジョウ領の冒険者ギルド内第一会議室(改)。
部屋の中央にあったテーブルは撤去されて、代わりにベッドが置かれており、隅には簡易浄化室とトイレが設置されている。
一応、部屋からは自由に出られるが、理由があって出てはいけない状態……つまり座敷牢って感じですな。
というワケで、暇なので久しぶりに魔法陣を描いたり、腕の代わりになるかと思ってオリハルコン粘土を自在に操る練習をしていた。
もちろん、魔法の訓練も怠っておりません。属性魔法行使スキルが成長して遂に“無効”になり、属性魔法の発動はしないが魔力消費はあるという不思議な無駄仕様になった。
また、ミッチー(☆導きの書☆)や精霊ズは壁の隅にある暖炉に石壁で蓋をして内部でイロイロ爆散させている。これもオイラの魔力を流用して消費する。
ただ単純に魔力を練って削って回復させる事を繰り返し、鍛錬するのみ。
さて、オイラの手には2つの指輪が装着されている。効果が薄いと評判の“魔力回復:毎時5%”の指輪が2つだ。
これで自然回復と指輪の効果によって1時間で約3割程度の魔力が回復する。思ったより魔力の減る量が抑えられているようだ。
そして、減ったり増えたりする魔力を他所に、次は魔法陣を描く練習を繰り返す。そのうちに何かピンとくる感じがあったのでニジーナ謹製の仮面を装着して確認した。
「ステータスオープン」
ぱしん
結果、“魔法陣干渉”というスキルが増えていた。部屋にあるスキル一覧表を広げて調べてみる。
魔法陣干渉……構築した魔法陣に自分の魔力を追加で流し込むことで効果を変化させる。表側に流すと自身の対象属性が追加され、裏側だと威力が上がるという。
(表側?裏側?魔法陣に表裏ってあるのか?)
早速、実験を開始する。
「ミッチー、火の魔法を暖炉に展開して。」
すっぴょこ☆
んぼっ!
精霊ズの作業を中断してもらって、石蓋を外した暖炉にほど良い炎が出現した。おおう、ちゃんと加減して出したな。
続いて、オイラの魔力を流し込むと同時に暖炉の中が凄いことになった。暖炉の中で勢いのある火炎が巻き上がっている。
ぐごおぉぉおおぉお!!
「うっわ、やり過ぎた、今のは裏側ってワケね?次は表側の確認だな。ミッチー、表裏の意味が解る?」
すっぴ☆
そして、表側を指定すると炎が掻き消えた……これはオイラの魔法行使スキルが属性無効になっている影響だと思う。
どがんっ!
「ナナシノ!大丈夫!?」
唐突にミューが部屋に勢いよく飛び込んできた。
「お?おおう?どしたの?大丈夫だけど?」
「火が!凄い勢いで煙突から出てたから火事かと思ったんだよ!?」
続いてギルドマスターのタダノさんも入って来た。
「すみません、魔法の練習でやり過ぎました。」
とりあえず顛末を説明し、謝罪して問題無く?オイラ自身は無事であることを伝えた。
んで、ミューが買って来た食事をテーブルに広げて4人で昼食となった。うん、いつの間にかアイロさんも座っている。
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「さて、オイラの腕は生えてこないのかな?」
「方法は3つ程ありますね。」
食事中のいきなりな質問に、タダノさんが躊躇なく素早く答えてくれた。
「おおう、3つもあるんだ?どれが手っ取り早い?」
「移植、ですかね。罪人や奴隷から“切り取って”ナナシノさんに付けるのです。」
「却下、怖いわソレ。適合しなかったら腐るんじゃない?」
「よく御存知で。しかし、適合の有無は事前に調べますので、大丈夫ですよ?」
「まぁ、“取り付けた手”は魔力や闘気が通りにくい欠点があるわな。俺は薦めないぞ。」
アイロさんが注釈を入れてくれたけど、他人の腕は何となく気持ち悪いので却下だな。
「2つ目は“再生系の魔法”となりますね。確実に自分のモノですが、デメリットは発動時の痛みですね。」
「痛いの……?」
「そりゃそうだ、切断面を磨り潰しながら徐々に再生されるんだ。その剥き出し部分が痛くて堪らねぇ。」
こっちはアイロさんが実体験済みらしい。指2本ほど再生したんだとか。
腕くらいになると、“痛みに対する耐性”が必要になるらしい。気絶したらそこで終わりだとか、麻酔を使うと綺麗に生えないとか……
痛みや気絶に対する抵抗は、ある程度まで魔導具でカバーできるらしいけど、やはり自力での底上げ必須とのこと。
「最後は“義手”ですね。木彫りから動くタイプのモノまでありますね。」
「動くタイプって肘や指が機械仕掛けとか?」
「そうです、魔力や闘気で動くタイプですが、戦闘には不向きかもしれません。」
「あぁ、盾や小型の弓とか魔導具を仕込んだ方が良いわな。義手の指を動かす間に一撃入れられるぞ?」
なるほどなるほど、機能性で選ばないと駄目なのね。
ばたん。
白い外套でフードを深く被った人物が部屋に入って来た。
タダノさんは驚いた顔で、アイロさんは凄く怖い笑みを浮かべて動いていない。動かないところを見ると危険な人じゃ無いのね?
「こ、困ります!認められていても困りますっ!」
後ろからギルドの受付嬢が制止しているにも関わらず、オイラの前までやって来た……
「勇者様、失った方の腕を出して下さいね?」
あまりの威圧に驚いて、素直に腕を差し出した。ただ、顔が見えなくても背丈と口調でニジーナさんだと理解できた。
ぷすぷす。
オイラの腕に紙を巻き付けて押しピンで止めに掛かった。うん、この押しピンは以前にやられた痛くないヤツだ。
と、数ヶ月前の出来事を懐かしむ間も無く……
「いっでぇ!おお!?」
オイラは痛みで意識を飛ばした。




