61) 拾ってきたのね。
「おお?聞こえてないのか?キューは結構な大声なんだが?」
『失礼な!透き通るような声って言ってよね!』
『聞こえない。』
「そうなのか?」
『うん、適性。』
ナルホドなるほど。精霊と会話するのも適性がいるのか。オイラには仮面や眼鏡の機能だと思うが。
聞こえないとなると、この会話は危険な独り言として処理されちゃうのか……ヤバイな。
「あぁ、ミュー。オイラには精霊が憑いてるんだよ。ちょっと前に契約したんだ。」
「え?ナナシノって精霊使いなの?」
「いんや、奇術師だよ?見たでしょ、職に就くトコロ。」
「それだと、精霊と契約や精霊魔法とか変でしょ?」
「うお、変なのか?普通じゃないのか?」
精霊使いでもないのに契約してるとか言うモノじゃないのか……要チェックですわね!
「普通って……精霊魔法は、捕まえた精霊を説得したりして精霊使いギルドで契約して得るものでしょ?」
「いや、そんなの知らん。そうするものなのか?それが普通??」
「それと、名前がふたつ出たって事は、2体の精霊と契約できてるの?」
「2体って、なんだか失礼な扱いじゃないか?普通に会話できるし見方によっては可愛いぞ?」
もしかして、精霊って差別の対象になってるのか?っていうか魔物扱い??
「ナナシノって何者?」
「知らんがな……普通に一般人だと思うが?」
「ま、いっか。アレ採って戻ろう!」
「いいのか!?」
「だって、人には色々あるんでしょ?ナナシノは悪い人じゃないって思うし、言いたくないなら聞かないって言ったし。」
「そうですかぁ。」
オイラ達は採ったキノコと草を布で包んで、来た道を引き返した。
ちょうど戻ったところでシュウ達と合流、器用に竈のような簡易調理場を作っていたアールスに出迎えられた。
「おかえりなさい、採れましたか?」
シュウとミトクはウサギのような動物2羽とカエルとワニを足したような生物を3匹取り出した。
オイラ達は食べられる草と変色キノコを渡した。
「御苦労様でした、すごい量だね。残ったの物は保存処理するね。」
アールスは器用に獲物を解体し、草は湯通しして肉に詰め、そして煮込む。
20分ほど煮込んだあとは、キノコと香辛料のような物を入れて仕上げのようだ。
「できましたよ~」
アールスの呼び声に、皆が椀を取り出す。えっと……食器は自前なのか?
そういえば、ユウコ龍から貰った物にキャンプセットがあったな。
精霊付き背負袋に繋がっている左の袖口の中を「お椀~」と呟きながらゴソゴソと掻き回すと、中で“お椀”が手渡された。
「ありがとねー」
小声で袖口にお礼を言うと、宿屋の食堂で作ってもらった軽食があることを思い出した。
「キューとシーちゃん、朝に入れた軽食2つは食べて良いよ。余りそうだったら、そのへんの精霊にお裾分けしてあげて。」
『やった~!』『ん。』
取り出したお椀にアールスが料理を注ぐ。何か解らない見た目だが、良い匂いだ。
フォークが無い、忘れてた。また袖口に手を突っ込むと、直ぐにフォークが出てきた。
「ところで、戦闘の経験はあるのですか?」
シュウがオイラ達に向けて尋ねてきた。
「私は食用にする小動物程度の戦闘くらいです。」
「オイラは一方的な魔術で仕留める程度で、混戦とかの経験は殆ど無いッス。」
もしかして、今後襲撃の恐れとかあるのか?護衛じゃなく同行という話だったと思うんだけど……騙された?
「あ、いや。襲撃などの恐れは無いと思いますよ。そうなった場合は自分とミトクに任せて、アールス様を連れて逃げて下さい。」
シュウは後衛職に対する護身術の重要性、特に前衛を突破された時の対応について話をしてくれた。
そのへんの石をコマにして陣形や人の動きを、今回の人員構成だけではなく数人程度の前衛職が居た場合等も含めた詳しい説明があった。
何故にそこまで教えてもらえるのかと思ったら、単純に“もしもの場合”の保険と今回の報酬が少ない事に対するお礼もあるとのことだった。
この講義は冒険者ギルドで受けた講習より詳しかったのと、質問して答える方式だったので色々すんなりと頭に入った気がする。
約2時間程度の講義のあと、宿を取って各自の自由時間となった。
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そして、オイラは酒筒を持って森へと入っていた。
適当な切り株に座り込むと、目の前に降り立ったキューに訪ねた。
「んで、何があった?酒持って来いとか、森で宴会するの?」
『ナナシノ、もうひとり養ってくれない?』
「は?」
『だから、もうひとり精霊と契約して欲しいの。』
「待て待て、そんな小動物を拾って飼うような話じゃないだろ?」
『かわいぞうなのぉ……おねがいぃ!』
急に滂沱の涙を流して訴えてくるキューを宥めて、落ち着いたところで話を聞いた。シーちゃんは興味無さげに丸まっている。
三行で要約すると、夕方にオイラは持っていた軽食を腐らせるのも勿体無いので、余る様なら他の精霊に振舞う様に伝えた。
その軽食を、ふらっと立ち寄った一人の精霊に分け、食事中にキューと互いの身の上話をしたらしい。
そして、感化されたキューがオイラに“契約できるように頼んでみる!”に至ったと。
「まぁ、話を聞くだけでも良いのなら聞くけど。」
『ほら、出てきても問題ないから!話を聞いてもらえるって!!』
口を開けた背負袋から、60センチくらいの精霊が這い出して来た。その大きさだとランクアップ済なのかもしれない。
『どっこいせ……手間を掛けさせて申し訳ない。』
ガタイの良いオッサンの精霊が膝に手を付きお辞儀をしてきた。二度言おう、外見がオッサンの精霊だ。




