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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第四幕:拾ったモノが、全てトラブルだった件について。
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56) ランクアップしたのね。

アールス達のいる宿から出て、太陽の位置を確認してみた。


「あれまぁ、まだ昼前じゃないか……」

「そだね~、ナナシノはこれから何か用事とかある?」


「んっと、今日の用事はもう無いと……ったん?」

「なに?どしたの?」


 後ろから耳を引っ張るヤツがいる。

 驚いて振り返るが誰も居ない。それにまだ後ろから引っ張られている。


「あ、用事あった!うん、あったよ!イタタタ……」

「ナナシノ……大丈夫?」


「うん、大丈夫!もう大丈夫!」

「急に何やってんのよ?ビックリするじゃない。」


 朝に交わした約束を反古にされそうになったキューちゃんが、オイラの耳を引っ張っていた。痛いよ、まったく……


「ゴメン、午後から森の方に行こうと思ってたんだ。色々採取したいからね。」

「あぁ、なるほどね。それじゃ仕方ないか……私は準備の買い物に行ってくる、また明日ね。」


 そういって、手を振るミューにオイラは背負袋から出した“包み”を投げ渡す。


「ナニコレ?」

「あぁ、朝に一緒に食べようかと思って用意したんだけど、渡せなくてさ。お昼にどうぞ。」


「あ、ありがと!それじゃ、また明日!」



~~~~~~~~



 ミューと別れ、外門に向かって歩いていると籠を背負っている人が目立ってきた。

 外門を出てみると、森の中へと籠持ちの行列ができている。採取祭りか?

 とりあえず、巻き込まれるのは面倒なので行列と違う方向の森の奥へ入って行く。


「なぁ、この辺でいいかぁ?」

『よっと……』


 オイラの頭をポフンと踏んづけてジャンプするようにキューが現れた。そのまま華麗に着地。

 そして、両手を上げながらくるっと回って振り返り、ポーズを決めたトコロで……


『ぶべっ!?』


 キューのドヤ顔目掛けてデコピン。


「踏むな、頭を。」

『いったーい!折角可愛く登場したのにぃ!』


「普通に出てくれば良いじゃないか。」

『むぎゅう……』


「んで、ココで良いのか?」

『あ、うん。この辺でも大丈夫よ。』


 そう言ったキューちゃんは、クルクルっと回って足場のチェックを始めた。

 相変わらず、真っ裸だ……シーちゃんもだけどな。

 かろうじて直視できているのは、体の大きさと体色がヒトと違うからだと思う。


『見ててね~』


 いきなり手足を広げ、大の字でバタンと仰向けに倒れた。

 よく見ると、可もなく不可もない形の胸がゆっくりと上下している。おおう、呼吸……してたんだ?新たな発見かも知れない。


ごうっ


 キューを中心に風が渦巻きはじめる。目を閉じるレベルでは無いが、周囲のナニかを吸い込んでいる様に見える。

 そのまま風の渦はキューの身体をを持ち上げ、オイラの肩の高さくらいまで上がり……停止。

 風が淡い緑の糸を運んできてキューの身体に纏い付き、服を形成した。


『とうっ!』


 またもや、くるっと宙返りをして着地。


『どう?凄いでしょっ!?』

「え、あぁ。なんか……今ので服作ったの?」


『はぁ?それだけなの?アンタの目は節穴なのっ!?よく見てよっ!』

「ん~?」


 しゃがんで見た。キューの変化といえば緑の身体に、膝丈までのモスグリーンのワンピースを着ただけに見える。


「やっぱ、服しか解らんわ。良い感じじゃないか、可愛いし似合ってるよ。」

『う、え?あ……そう?ありがと。』

『身長』


 シーちゃんが助け舟を出してくれた。

 あ、確かに背丈が30センチ位だったのに、今はその倍程度には大きくなっている。


「あ、あぁ!?ホントだ!大きくなってるじゃん?」

『今頃気付くか?アンタの頭の中は苔しか詰まってないんじゃなっ“ビシィ”』


 あ、しまった。オイラに指を差し向ける態度と口調に思わずデコピンを放ってしまった。

 しかし、キューは額を上に逸らせただけだった。


『ふ、ふふふふ……耐えた、ちょっと痛いけど耐えたよ!ランクアップしたボクにもう怖いものはないよっ!あはははナナシノなん“どびしっ”』


 オイラに向けたキューの指先は天へと向きを変え、綺麗な弓反りの姿勢で再度仰向けに倒れるキュー。そして動かない。

 ちょっとやり過ぎた感じがするが、呼吸はしているので気を失った程度だな。


「よし、次はもう少し控えめの加減かね。」

『鬼ね。』


 オイラは動かなくなった精霊を背負袋に詰めるという、ちょっと危ない作業をして街へと戻るのであった。

 シーちゃんにキューと同じようにランクアップ(?)出来るのかと尋ねたら、オイラの許可があれば今晩にでも可能との事だった。

 まぁ、ちょっと大きくなって服のような物を纏えるならと思い、許可は出した。っていうか服……着れるんじゃん。



~~~~~~~~



 街の門に着くと、採取祭りの帰路についている人達がいて、籠には苔やらキノコらしきものが詰まっていた。

 キノコ……しまった、晩飯はクエスト受注の時間が解らなかったのでキャンセルしてたんだっけ。

 仕方無いので宿までの間に買い食いでも……


 ……と


 宿屋の前に小柄ちゃん……ニジーナさん発見。

 そういえば、昨日の朝から魔道具のメールが届いてなかったな。

 何かあれば連絡って言っておいて、何もないから連絡しなかったのが拙かったか?心配させちゃったかも知れな……


 あ、見つかっちゃった。


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