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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第四幕:拾ったモノが、全てトラブルだった件について。
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55) クエスト受注なのね。

「んじゃ、見てくるね!」


 七鐘と言えば、冒険者ギルドの混み具合が緩和されてくる時間帯らしい。

 明るくなる五~六鐘くらいから始まり、九鐘には疎らになる。

 ここへ最初に来た時は八鐘くらいで早起きして来たつもりだったが、それでも遅い時間帯だったようだ。


「ナナシノ、出るよ~」


 声と共にミューが雑踏から湧いた。

 続いて小柄な男性が帽子を抑えながら出てきた。


「は、初めまして。軽い自己紹介は歩きながらで、詳細は宿の一室でお願いします。」


 10代後半で髪の色は銀色ショートカット、見た目はハンチング帽に眼鏡とトンビコートで、見た感じ明治時代の庄屋の小僧っぽい。


「僕の名前はアールスです。」

「私はミューよ。」

「オイラはナナシノ、24歳、奇術師ってのに昨日就いた。」


「奇術師?」

「ちょっ!ナナシノ何言ってるの?自分の職業は公共の場で言っちゃマズイでしょ?」

「そなの?あれ?自己紹介じゃなかった?」


「“軽く”って言ったじゃん、まったくもう。」


 訳も解らず会話の機を逸してしまい、オイラは2人の後ろをトボトボとついて行くしか無く……

 宿までの間、2人はドコの食事が美味しいとか情報交換に励んでいた。



~~~~~~~~



 宿屋に到着し、そのまま部屋へと入るとアールス以外に2名の人物が待機していた。こっちが本当の依頼主か?


「改めまして、僕の名前はアールスです。アールス・アッシュ・アーキス・アクアマリナと言います。」

「ながっ!」

「ホント長いわね。階級持ちの人なのかな?」


「えぇ、末席なんだけど名前負けしてます。あと、僕の後ろに居るのは……」

「シュウです、アールスと共に行動しております。以後、お見知りおきを。」

「ミトクです。」


 シュウと名乗った人は、紺色のローブでフードを深く被り、手には短い杖を持っている。

 ミトクの方は、金属製のハーフプレートメイルに棍?を持っている。髪は茶色で短く、体育会系の雰囲気だ。

 そして、遣いの者かと思っていたアールスが依頼主だった。


「依頼の内容なのですが……」


 契約内容は“同行”で期間は14日。場所はココから北東へ2日の場所へ行き、そこで10日滞在して帰還で2日を要するとのこと。

 現地滞在中に何かしらの問題を解決し、領民の信頼を得る段取りのようだ。


「えっと、いいかな?」

「え、あ、はい?なんでしょう?」


「依頼達成は往復14日間の護衛?かなり戦力不足に思えるんだけど?」

「護衛では無く、同行して頂きたいのです……従者として。」


「なるほどねぇ、威厳のために……って訳だ?」

「すみません、普通に雇えるだけの手持ちと時間が無くて……おねがいしますっ!」

「え?っえ??」


 アールス達三人はガバッと頭を下げた。

 驚いたミューが耳を激しく左右させて、オイラと依頼主との間で視線を往復させている。

 単純な戦力では無く、同行している従者の数で見栄を張るって感じか。


「んで、どうする?」

「ど、ど、どうするって!?」


「受けるか、断るか……だ。」

「えー、私が決めるの?」


「そりゃ、ミューが取ってきた仕事だろ?決めてくれないと、な?」

「う、受けていい……の?」


「まぁ、最初に受けた依頼がいきなりキャンセルだなんて、幸先悪そうじゃん?構わないよ。」

「そか、良かった……この依頼、受けます。」


「と、いうわけで……だ。詳しい内容を確認しようか?」


「あ、ありがとうございますっ!」

「いやいや、オイラじゃなくミューが許可したんだから、そっちな?」

「ナ、ナナシノ!?」


 アールスは一頻りお礼を述べた後、ようやくテーブルについた。


「確認すると、報酬は一人金貨一枚で前払いで半分。」

「はい、前払い分をお渡しします。」


 コトリと渋みのある金貨が机の上に置かれた。

 オイラは金貨を受け取り、さっそく袖口の“ポケット”に金貨を入れ、代わりに半額の棒銀五本を取り出してミューに渡した。


「え?え?なに??今のそれ、ドコから出てきたの??」

「なんてこたぁ無い。オイラは奇術師だぞ?タネも仕掛けもあるわな。」


「続いて、だ。どうすればいい?」


 細かい内容は端折るとして、要約するとこうだ……

 まず、移動中はアールスの斜め後方につくこと。後方警戒をする訳でもない。

 外出時はアールスに対して話を交わさないこと。言葉遣いで素性を知られるのを警戒するようだ。

 とにかく、従者らしい振る舞いに気を配ること。こちらも同様に素性を知られないためだ。


 一通り説明を受けた後、明日の集合時間までは出発の準備と休息となった。


「ミュー殿、ナナシノ殿……申し訳無いが、宜しくお願いします。」

「おねがいしまっす!」


「ああもう、契約したんだから気にすんなって……それではアールス様、失礼します。明刻六鐘に参ります。」

「ごきげんよう、アールスさみゃっ!……噛んだ!噛んじゃったじゃないのよ!ナナシノ!」


 部屋から出るタイミングで挨拶を済ませると、いきなりミューに背中を殴られた。


「な、なんだよっ?オイラの所為か!?」

「ナナシノが変な言葉遣いするから!」


 こうやって、依頼を受け取りました。

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