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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第一幕:急に呼ばれて、困ってしまう件について。
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18) 総仕上げなのね。

「おっはよーん!今日も訓練にいくよっ?」

「了解!ぶっ倒れるまで頑張るぞっ!!」


 清々しい朝、小柄ちゃんと共に軽やかな足取りで演習場へ向かう。そして昨晩確認した混合魔法を発動させる。


ボシュッ!


「なにそれっ!?」

「はい?」


 火と水の混合魔法で蒸気を発生させてみたら、意外にも小柄ちゃんが食いついた。


「今、何の魔法をつかったのよさ!?」

「火と水の魔法を同時に使ってみただけなんだけど?」


「そういうのは、2人以上で同時に発動させないとダメなんだけど?」

「そなの?」


「どうやって発動させたの?」

「魔導書に栞を二枚挟んで使ったらできた。」


「えぇぇぇ……無理なんだけど?」

「なんで?」


 小柄ちゃん曰く、1人での魔法の同時発動は無理らしい。限りなく同時に近い連続発動は可能だとか。

 相互干渉や同源供給とか、よく解らない言葉が出ていてサッパリだ。

 理解できたのは、同時発動は2人以上で行うしかなく、タイミングも非常にシビアだという事くらいか。

 でも、出来ちゃったものは仕方ない。恐らく“勇者”特性の所為だろうという考えに、小柄ちゃんは至ったようだ。


 午前中は蒸気の魔法を小柄ちゃんの羨望の眼差しを受けながら、バンバン使い続けて過ごした。

 昼からは変わらず解呪の生贄のバイト、夕食後は小柄ちゃんの解呪スキル上げで終わった。




「おっはよーん!良いお知らせと、悪いお知らせがあるのよっ?」

「んじゃ、良い方からお願いします!」


「魔導書の装具ができたのよ?」

「ありがとうございまっす!」


 貰った外装を☆導きの書☆に取り付けてみる。背表紙の部分にベルトを固定する治具がついており、反対側は腕輪に繋げるようになっている。


「もし、魔導書を弾かれたらベルトに魔力を注入するとイイのよ?」


 楽しそうに小柄ちゃんは説明を始めた。

 ベルトには魔力を通しやすい金属が編みこまれており、流した魔力はベルトを伝って魔道書の表紙と背表紙へ、さらには腕輪に伝わる構造という。

 なので、同時発動では無いけれど①荷重無視②魔法打ち消し③魔力吸収の順で凶悪コンボが繰り出されるらしい。

 魔導書を叩き落とされる状況っていうのは死活問題なので、容赦は要らないのよ?と笑顔で話を括った。


「悪いお知らせは、前の模擬戦の優勝が取り消されたのよ?」

「ふーん、そなの?」


「ふーん……って!?なんでそんなに?驚かないの?」

「だって、模擬戦でしょ?しかも魔道具を使って勝ったから、実力じゃないし?」


 確かに優勝はしたけど、最終的な要因は魔道具の効果だ。あまり素直に喜べない。


「何言ってるのよ?魔道具を揃えて行使するのも実力の内なのよ?」

「そういえば、取り消しの原因はなんだったの?」


 テンションの上がってきた小柄ちゃんを他所に、話題を変えてみる。


「う……私の所為って事になっちゃっうかな?強力な魔道具を使用させた?みたいな?」

「なんじゃそりゃ、向こうさんも炎の剣とか使ってたよな?」


「まぁ、色々と難癖を付けられちゃって、反則負けって事になったのよさ?」

「なるほど、それで何か被害が出ちゃったりするの?」


「貰えるものが貰えない?」

「じゃあ、問題無いね」


「キミ、軽いわね?」

「景品とか良く解らないし、貢物レベルだったら処分に困るので要らないんじゃない?」


 まぁ、戦術不足を魔道具の性能で補って、しかも偶然にと勝ったというのが正直嬉しくない。

 貰えるモノってのも、最初から聞いていないので貰えなくても惜しくは無い。


「最後にもう一つお知らせがあるのよ?」

「おお?それは良い方か悪い方のどっち?」


「良い意味と悪い意味の両方だと思うのよさ?」

「んじゃ、聞きますか」


「10日後から、迷宮や重要拠点の探索が開始されるのよ?」

「外に……出られるのか?」


 ココに召喚されて、演習場や中庭以外の世界が見られるというのは少し魅力的だ。

 ただ、やってることが訓練やら模擬戦なコトから、何をするかは言わなくても解っているが……


「というわけで、これからは午前中は魔法陣の座学、午後は魔法の演習、夜は自由にするね?」

「生贄作業が無くなるんだ?」


「総仕上げに掛かるのよ?」

「何の総仕上げ?」


「そりゃ、ドコに出しても使えるように、よ?」


 なんだか嫁入り修行に出される様な言われ方だったが、死ぬかもしれない探索先で生き残るためにも頑張らないとな。


「さ、無の魔法関連の蔵書を全部……3冊しか無かったけど、持ってきたわ。これで勉強するのよ?」

「どんだけ嫌われてるんだ、無の魔法は……」


 魔法陣の勉強は、少々理解が難しかったが魔法のスキルが上がればなんとなく理解できる様になるらしい。

 これからは、重点的に無の魔法を組み立てる事にする。属性魔法は軒並み効果が薄いからね。

 午後からの演習は無と各属性の魔法、夜は身体強化の魔法を練習する。


 結局、実践と座学により無の魔法は属性魔法には含まれないらしい事が解った。

 また、スキルレベルが上がっても攻撃力なんか無いって事も……

 しかし、魔法効果や重力を打ち消す事と、周囲から魔力を集められる事は解った。


「んー、何か引っ掛かるんだよなぁ……」


 もう少し頑張って無の魔法のスキルレベルが上がれば良いのかねぇ?

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