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焼け跡から続く光〜薬師の私を攫ったのは、人間嫌いの獣人でした。  作者: 不津倉 パン子
後編 未来を見つめて

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悪夢再び

快楽に塗れた夜が明け、リコリスは最悪の気分で目を覚ます。身体は鉛のように重く、心は泥のように澱んでいる。


「昨日は可愛かったよ。」


グレイスは優しくリコリスの頭を撫でる。その言葉とは裏腹に、彼の瞳には冷酷な光が宿っていた。


「君に作ってもらいたいものがあるんだ。媚薬だよ。男用と女用を二種類…それが出来たら君を解放するよ。悪くない話だよね。というか、君は断れない。君は僕の所有物だからね。」


グレイスの穏やかな口調は、リコリスにとって恐怖そのものだった。 


「……分かりました」


彼女は、条件を飲むしかなかった。


グレイスはリコリスに専用の部屋を用意する。そこは一見、研究室のように整えられているが、実際は彼女を監視するための牢獄だった。


リコリスは媚薬の調合に取りかかる。

その手を動かしながら、過去の記憶が蘇る。


前にも、こんなことがあった。 


アゼリアに捕らわれ、獣人の薬を作り、その薬でクロウを死なせてしまった。


あれほど後悔したのに。

また、同じ場所に立っている。


旅をして、クロウと心を通わせて、少しは強くなれたと思っていた。それなのに…結局、何も変わっていなかった。


……このまま、終わるわけにはいかない


リコリスは考える。

この状況から、一矢報いる方法はないか。


そして、ひとつの考えに辿り着いた。


グレイスは、完成した媚薬を自分に使う可能性が高い。その瞬間こそ、反撃の機会になるかもしれない。


リコリスは、媚薬に密かに細工を施す。

男用の媚薬は強い効果が出るように配合し、さらに血流を促進し、神経を麻痺させる毒を混ぜた。 


女用の媚薬は効果を弱めに調合し、万が一の事態に備える。


クロウへの罪悪感。

そして、生き延びたいという切実な願い。


震える手で薬草をすり潰しながら、リコリスは決意を固めていく。


数日後、二種類の媚薬が完成した。

瓶には、太陽と月を象ったラベルが貼られている。


「よく出来たね。」


グレイスは満足そうに微笑む。その笑顔に、リコリスの背筋が凍りついた。


「さっそく、試してみようか」


太陽のラベルが貼られた男用の媚薬を手に取るグレイス。リコリスの心臓が、激しく脈打つ。


――今だ。


「……と、その前に」


グレイスはニヤリと笑い、彼女を操って月のラベルが貼られた媚薬を取らせる。


「自分で飲みます。」


弱いとはいえ催淫効果はある。彼女はきっと、薬が効いた状態でグレイスに犯されるだろう。でも、絶対に耐えてみせる。覚悟を決め、リコリスは自らの意思で媚薬を飲み干す。


グレイスは満足げに頷いた。


「じゃあ、効果を確かめようか。」


その後の出来事は、快楽と恐怖が入り混じり、リコリスの意識を曇らせていく。


「じゃあ、そろそろ……こっちも使う?」


グレイスは太陽のラベルの瓶を手に取り、リコリスの口元へ近づけた。


「違います……それは、あなたが……!」


「毒が入ってるんだよね。忘れた?君は私の所有物だから、思考だって全部分かっちゃうんだよ。」


その言葉と同時に、抵抗は無意味だった。


毒と薬の効果が、容赦なく身体を蝕む。

視界が揺れ、思考が途切れていく。


「止めて……死んじゃう……」


叫びは、届かない。


「悪い子にはお仕置きが必要だよね。君は“私の弟”の友達みたいだから、ちゃんと反省できれば仲間になってあげるよ。」


グレイスが覆いかぶさる。

冷たい声が、意識の奥に沈んでいく。


やがて………


すべてが終わり、グレイスは満足したように立ち上がった。


「ちゃんと、反省できたかな?」


そう言い残し、彼は部屋を去っていった。


リコリスは、身動き一つできないまま、天井を見つめる。


快楽と毒で麻痺した身体。

絶望と後悔に沈む心。


……クロウ……さん


名前を呼ぶことすら、もう声にならなかった。


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