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昼休みとなった。
いつものメンバーで教室の一角を陣取り、並んでいた机を合わせて場所を作る。
そうしている間に凛子が隣のクラスからやってきて、各々お弁当を持参しての昼食となった。
アメリカとは全く違う昼食スタイルに、最初こそ違和感を感じていたが、この何とも言えない雑多とした雰囲気が、今ではアリーシャのお気に入りの時間の一つとなっていた。
アリーシャのお弁当はホームステイ先のママが毎朝気合を入れて作ってくれている、可愛らしいお弁当だ。
昨日の夕飯のあまりや、冷凍食品などが使われているお弁当は、彩もよく、健康的だ。
後、日本の冷凍食品って、簡単で美味しすぎませんかねと、アリーシャは口にする度に思う。
いつもの四人が顔を合わせて食事をすれば、やはり話題は演劇部のことになった。
「演劇部のポスター。昇降口と廊下にも貼ってあったのにさ、クラスのやつに聞いたら見てないって言うんだよ。どこに目付けてんだよって感じ」
「日頃から掲示物を見る習慣がない人は見逃すんだよああいうのは」
「私も皆に見たって聞いたら見てないって言うからちゃんと宣伝しておいたよ。アリちゃんもえりちゃん通じて美術部に声かけて貰うってことになったんでしょ、人増えるといいよね」
美緒莉の言葉にアリーシャも笑顔で頷いた。
背景などの大道具の準備は、早くても台本が出来上がって、どういった場面が必要になるかわかってからになる。
背景を手伝ってくれると言っていた絵里の出番はまだ先の話にはなるのだろうけれど、今これから大きなプロジェクトが動き出そうとしているという、そんな雰囲気がアリーシャの心を躍らせていた。
それでも今日は、この後何もなく終わった。
新しい部員はそう簡単には増えてくれないようだ。
そもそもの話ではあるが、今現在一年生の終わりの頃、部活に入る気がある人は既に部活に入っており、入っていない人は入っていないなりに、バイトやら勉強やらで生活の流れが決まってしまっているわけであり、今この時期に急に部活を始めようなんて考える人は、なかなかにしていないものなのだろう。
冴もこれから入ってくる一年生を捕まえるのが目標で、今はその基盤を作る段階だと話していた。
それでも、今この文化祭で劇をやるために動き出したというこの現状に、アリーシャのテンションはかなり上がっていた。
何かやりたくて仕方なというパワーが溢れているのに、まだ部活として顧問が決まってなく、部室も活動場所も解放されておらず、溜まったフラストレーションを夕方からのアルバイトにぶつけて気を紛らわせた。
いつも以上に綺麗に陳列した商品棚に、ピカピカに磨かれた床、バックヤードのいつも気にしないくらいの乱雑な商品ストックをきっちり並べてバイトを終えたアリーシャが、スマートフォンを見てみると、演劇部のグループチャットに更新があった。
急いた気持ちでメッセージを確認すると、冴から、明日暇なメンバーは運動着に着替えて放課後部活棟へ集合とメッセージが入っていた。
一足先に部室を使っていいということになったので、掃除と片づけを行うのだという。
アリーシャの明日のシフトもいつも通りあるが、放課後少しなら時間があるので絶対に参加するつもりだ。
アリーシャ以外のメンバーは、真由美は台本をやるために不参加、美緒莉と凛子は来てくれるとのことだ。
また、悠紀は男手もいるだろうからと、英会話部の暇な男子も助っ人で呼んで参加してくれるという。
これがアメリカなら、生徒が使用する場所は業者が綺麗にしてから明け渡されるもので、生徒が掃除なんてすることはない。
だが日本では、自分たちが使う場所は自分たちが掃除するのが一般的だ。
毎日の教室の掃除は生徒の仕事だし、アメリカで経験しなかったそれは、最初こそ物珍しさがあったが、めんどくさいと感じたことは勿論あった。
しかし、明日の掃除に関しては別だ。
演劇部としての最初の活動。
自分たちの本拠地となる場所の清掃。
高校の敷地内にあることは知っていたが、行ったことはない場所というのもなんだか楽しそうだと感じてしまう。
アリーシャのテンションは爆上がりだ。
参加の返事をグループチャットに書き込んで、意気揚々と自転車を漕いで帰宅した。
クリスマスも近づく日本の冬は、あんなに扱った夏を忘れさせるくらいには寒く、いつも縮こまりながら自転車を漕いでいるが、今日ばかりは吐き出した真っ白な息すら熱いくらいに、気持ちが上がっていた。
だってこれはなんだか、アリーシャが憧れていた青春の一ページ目とかいうやつに感じられるのだ。
アリーシャは高校一年生になって経験した、球技大会や体育祭や、文化祭の始まる前の、あの準備期間に感じるものに近い、わくわくという感情を今胸いっぱいに感じていた。




