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「それで、部活としての活動だけれど、真由美は引き続き台本の作成をお願いね。進捗はグループチャットで相談も報告もしてくれてかまわないので」
「わかった。今原作読んで、アニメも二周くらい観て、自分なりにまとめ始めているところだから、今後方針が決まったら相談させて」
真由美の返事に冴は笑顔で頷いた。
アリーシャは真由美の言葉を聞いて、もう既にそんなに頑張ってくれているのだと知り、軽い感動を覚えていた。
「それで残りのメンバーは、体育館が使えるようになったらランニングをして声出し練習をしていくくらいのざっくりとした予定を立てております」
「はいはーい。俺はどうなりますか」
「清水は英会話部があるから来なくていい」
「ういっす」
来なくていいと言われた悠紀は、少しだけ悲しそうに身を縮めて返事をした。
「声出し練習って、具体的にはどんなことすんのさ」
「最初は白雪姫の台本もないし、何でもいいから物語を持ってきて、台詞を読み合いしてみようかなあって思ってる。うちらは思ったよりも大きい声で台詞が言えないと思うし、最初は恥ずかしくて声がちゃんと出ないと思うんだよね」
確かにそうかもしれない。
アリーシャが冴の言葉に納得していると、冴はそのまま本音を付け加えた。
「それと第二体育館を申請したからには、ちゃんと使ってますアピールしてないと取り上げられそうだし、暫くはそうやって、活動頑張ってます感を出すことに力を入れようと思う」
「じゃあ最初は国語の教科書の朗読練習とかしてみるのはどう。みんな持ってるからわざわざ探してこなくても済むしいいんじゃないかなあ」
「うーん、でも古い言い回しの小説が多いから読むの大変じゃない」
「いいんじゃね。逆に演技っぽく読んでも恥ずかしくなさそう」
美緒莉の提案に真由美は難色を示したが、凛子は賛成を示した。
「私もいいと思うよ。国語の教科書って授業で見てはいるけど、小説としてはちゃんと読んでなかったし、勉強になるなって」
アリーシャとしても、国語の教科書に載っている文章は確かに言い回しが難しかったりするものがあると感じてはいたが、口に出して読むことで、理解が深まるのではないだろうかと賛成した。
「とりあえずやってみて、難しそうなら追々変えてもいいしね。それはそれとして、メンバー募集もしていくよ。活動してるってだけで興味本位で見に来てくれる人もいるかもしれないし、この間のポスターも、きちんと生徒会から印を貰ったので、今日から掲示するから、皆も話題にして」
絵里が絵を描いてくれたポスターが掲示されると聞いて、アリーシャは嬉しくなった。
どれくらいの人の目に留まるだろうか、どのくらいの人が来てくれるだろうか、考えるだけでワクワクする。
「それで次が難問。衣装の問題」
冴にしては珍しく、心底困ったような顔をしながら続けた。
「部活として認められたからには、部長として年度末の決算と、年度初めの部長会議に出席して、できるだけ多くの予算を獲得してくる心算ではあるのだけど」
部長会議とは、生徒会が主体で行われる部活動の長が集まって行われる会議で、主に活動の内容や問題が起きているかの有無、学校行事や生徒会との連携があるなどの業務連絡を行われる場所である。
アリーシャは参加したことはなかったが、ああいうのは大体生徒会が決めたことに「はい」というだけの会議になっているのが定例だというイメージがあった。
だがまあ、冴のやる気からして、来年度はそうはいかないのだろうと察しがついた。
これから行われる生徒会選挙に出馬をするであろう先輩たちに、アリーシャは心の中で祈りを捧げた。アーメン。
「流石に出来合いの衣装を全部買うお金は回ってこないと思うんだよね」
衣装というものはどうして大量生産する普通の服と違って、売っていても手作りの一点ものだったりするため、高額になりやすい。
白雪姫のように有名作品に関しては、大量生産されたものもありそうではあるが、それはそれで質が悪かったりするものもあるので、なんとも難しい話である。
「なので予算次第ですが、みんなでお裁縫する未来があることを覚悟しておいてください」
非常に不本意であるという表情を隠しもしないで冴は言い切った。
どうやら冴はあまり裁縫をすることに乗り気ではないようだ。
「ええー。みんなで衣装作るの。絶対楽しいじゃん。私、家にミシンあるよ。お母さんがね、昔私にお洋服を作ってくれたことがあってね。私も昔、お人形のお洋服を作ったことがあるんだよ」
冴とは対照的に美緒莉は喜びに顔を煌かせていた。
「よし。じゃあお裁縫担当は美緒莉ってことで任せた」
そんな様子を見た冴は、ここぞとばかりに自身の乗り気ではない仕事をに美緒莉に押し付けていた。
「任されましたー」
美緒莉は元気よく手を上げて応えた。
仕事を押し付けられた当の本人はやる気に満ち溢れていそうなので問題はなさそうである。
「では最後にお願いです。部室が手に入ったら、いらない段ボールとかを集めたいので、気にかけておいてください」
「はーい。段ボールは大道具作るのに使うけど、演劇部で作ったものは英会話部も借りることになるので、うちの部員からも部室が出来たら持って行くようにお願いしておきまーす」
冴の言葉に悠紀がそう続けた。
大きなものを作るときは、彼らの力も借りることがあるだろう。
お互いが協力し合えるのはいいことだ。
その後、他に意見があるかどうかの確認が行われて、特に意見も異議もなく演劇部最初の会議は終了となった。
アリーシャはその後アルバイトがあるために帰宅した。
バイト中、この先ちゃんと部活をやっていくのだから、シフトは平日ではなく、土日メインに変えてもらおうと密やかに決めた。
アルバイトが終わってスマートフォンを見てみると、早速今日作った演劇部のグループチャットにメッセージが入っていた。
あの後冴が部活募集のポスターを各掲示板に貼ってくれ、部活結成の用紙も提出してくれたようだ。
部室と部活動場所の許可は、顧問が正式に決まるまで保留となったが、部員も募集しているのだから、来週までに必ず用意してほしいと圧をかけておいたと、冴の強気のメッセージに、皆が了解やありがとうやら、怖いやらのイラスト付きメッセージを送っていたので、アリーシャもありがとうと書かれた可愛らしいスタンプを押して返事をしておいた。




