第三部 最終章「"キミ"の選択」
二〇二〇年。十一月二十三日。
「やっと退院できましたね。‥‥‥本当に、待たせすぎですよ。」
「想志は変わんないね‥‥‥。あの時と全く同じだもん。」
―――俺にとって大切なもの―――
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二〇二〇年。十二月二十三日。
「‥‥‥バカ‥‥‥。何でアンタはまた繰り返そうとするのっ!」
「君は彼女たちと過ごした五年間で何を得られたんだい?自分を見つめ直すことができたかい?」
「ええ。君は逞しくなりましたね。‥‥‥安心しましたよ‥‥‥。君はちゃんと見つけられたようじゃないですか。なら、あとは覚悟を決めるだけです。‥‥‥そういうの、得意でしょう?」
―――俺がこれから信じていくもの―――
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二〇二〇年。十二月二十四日。
「私だって‥‥‥できることなら‥‥‥一年早く生まれたかったですよ。」
「想志!早くこっち来てよ!」
「私の隣はいつでも空いていますからね!年中無休ウェルカムです!」
「お前にしかできない仕事なんだよ。俺にはできない。‥‥‥だから、お前に託すよ。」
「想志君。君は『特別』っていうものを選んでいいんだからね。」
―――俺が守りたいもの―――
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二〇二〇年。二月十四日。
「はい。先輩。ず―――っと、渡しそびれてたんですからね!」
「もういいのよ。少しぐらい休んだって。」
「したいと思えること。しなくちゃいけないと思うこと。‥‥‥先輩は‥‥‥どっちの方が大切ですか?」
「悲惨な過去があるわけじゃない。たまたま、そういうタイプだったってだけでしょう?」
「欲があるのなら、それに越したことはありません。それが無い人だっている。そんなこと、先輩が一番わかっているじゃないですか。」
「無理に言葉で伝えようとしなくてもいいの。そこにいるだけでちゃんと伝わるものだってあるの。そうじゃなきゃ伝わらないものもあるんだよ。」
―――俺にとって『特別』なもの―――
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二〇二一年。三月一日。
「もう‥‥‥。大泣きしすぎだよー。」
想乃華は優しく微笑み、結愛の背中をさする。
「そうだぞ。別に結愛が卒業するわけじゃないんだからな。」
想志は卒業証書の入った筒で、結愛の頭をこつんと突いた。
「だって‥‥‥先輩たちがいなくなったら、中学の時みたいに、また寂しくなっちゃうんですから‥‥‥。」
学生にとっては、一つの歳の違いが大きな意味を成す。彼女はそれを一度味わっているから、二度も失いたくないのだろう。
「大丈夫だよ。たまにでも一緒に遊ぼうね。」
「たまにじゃダメです‥‥‥。毎日遊んでくれなきゃ嫌です!」
そうしていつものようにじゃれ合っていると、気づいたら日が暮れようとしていた。
想乃華は、こうして皆で夕日を見たのは片方の指で数えられる程度しかないのに、なぜかもっと沢山の回数見たのではないかという感覚に襲われる。
「もう‥‥‥終わり‥‥‥ですね。」
どれだけの時間、眺めていたのだろう。誰も何も言葉を発することはせず、ただじっと空を見上げていた。
「先輩。一つだけ‥‥‥聞きますね。」
夕日を背にし、風で髪がたなびく。結愛はそっと髪を抑え、真剣な眼差しで尋ねる。
「先輩にとっての『特別』は見つかりましたか?」
ああ―――。そうだ。それだけを探し求めていた。それに相応しいのかを問うてきた。より多くの見知らぬ誰かではなく、特別で大切な人を選んでもいいのかと。その選択ができるのか。その覚悟はあるのか。彼にとっての特別とは何だ。彼はこれから何を信じ、守り通していくのか。
答えなんて決まってる。覚悟だって、さっき決めた。ずっと悩んでいてばかりで、彼女らを悲しませてきてばかりだったけれど、それでも”キミ”は―――
選択肢
1.想乃華を選ぶ
2.結愛を選ぶ
3.他者を優先し続ける




