EXTRA0「発芽」
◯。◯◯。◯◯。◯◯。
それは唐突にやってきた。
何の前触れもなく私たちめがけて。
「ああ―――道理で」
少年は微笑む。
この時間が長い長い自分の人生の中で最も大切だったのだと理解する。
「それにしても壮大なことで」
あの事件があったから。恋をしたから。
ここまで来れたことに最上の感謝を。
これはひとりではなく、彼ら彼女ら全員が最後の最後まで向き合わなければチャンスを得られない結末。
「おい、これはそういうことでいいな」
今までに見たことのない、形容し難い表情をしている彼女たちに尋ねる。
「ま、それだけ今の時間が大事ってことじゃん?」
「そうだね。
やりたい事とやらなくてはいけない事。
その二つがどこの枝でも重なったのなら逃げるわけには行かないよ」
そうして、ひとり勝ち誇ったような笑みを浮かべる彼女に嫌味全振りの表情を向ける。
もちろん、それらしい声音を添えて。
「ていうかー。なにあれー。どういうこと???????」
「ふふん。一歩リードですね!」
「うっざ」
「ストレートすぎます!」
「そういう先輩だって最後にやりたい放題やってるじゃないですか」
ニヤニヤと悪辣な笑みを向ける。
「うっさい。アンタよりかはマシよ」
「とは言いつつも、最後に託すのが私ってことはそういうことでいいんですよね」
「んなわけないでしょ!あれは!
あれは‥‥‥一番効率が良かった。それだけだよ」
「はーん。まあそういうことにしておきましょう。
妄想の中ですら私が取ったとなれば、あまりに救いがないですからね。
何であれ、ハッピーエンドが一番です!」
「私ら、いったいどれだけこの茶番を見せられてきたんだろ」
「知るか。悪態つく癖に楽しんでんだろ」
「まあね」
成すべきことは明確になった。
不穏な現象すべてに説明がついた。
向くべき場所へ向くべき誰かが歩みを揃えた。
ならば―――今度こそ、私たちが望んだ結末を。
「確認です」
少女はきっぱりと口にする。
「私たちに残された時間は一年。
目的は、全ての収束及び先輩の『因』を変質させること。
条件は、誰一人欠けないこと。
命はもちろん、先輩が失ったのと同じものを持ち続けること。
大団円の結末。
それこそが私たちの未来です」
ここまで背中を押してもらったのだ。
あの電車の日も。あの雨の日も。
公園で話した日も。告白した日も。
守ってくれた日も。全てを失くした日も。
全部全部、この日これからの日々のため。
「さあて、まずは先輩のところに行きましょう!」
―――これは、他の誰でもない私のための選択だ。
―――0―――