2.編入生1
夢を見る。夢を。
その色は黄金。
シャランと涼やかな音が響き渡る。美しくありながら、あまりに厳しいその音色。それに身を引き裂かれそうになる。
―シャラン、シャラン
音は鳴り響く。舞うように、黄金が揺れる。それに遅れて、赤い飾り紐が宙を舞う。
それは剣だ。黄金の剣。銀の器を守る伝説の剣。それは確かに誰かの手のうちにあり、その人間によって振られている。というのに、その顔はよく見えない。
そう、これは夢だ。幼いころから信じて疑わなかった未来。失われてしまったその未来は、きっと夢で再現されているのだ。ならば、どうして顔が見えない。だって、その人はきっと彼なのでしょう?
「貴輝」
「貴ちゃん」
そう、呼び掛ける。しかし、その人は振り返らない。貴輝でないというのなら、その剣を振るうお前はいったい誰なのか。
人影が振り返る。その面差しが見えると思ったその時に、夢は終わった。
※
「夢が変わった」
現実に引き戻されて、ぽつりとそうこぼした。この夢はいったい何を意味するのか。今変わったことに意味はあるのか。
「二階堂武尊」
突然現れた能力者の少年の名を呟く。彼が、剣を振るうというのだろうか。彼が選ばれると言うのだろうか。
「それは困るな」
そう言って、男はカーテンを開け、今日も青い空を見上げた。