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謎の細胞

皆さんお久しぶりです。長い間投稿せず、申し訳ありませんでした。

「担イシ者タチ」久々の最新話です。

よろしくお願いします。

「過崎……ハツキ……?」

 男は視線を向けた先にいた少年の名を言った。その言葉と引き換えに生まれる隙を考えずに。

「うおおおぉぉぉ!」

 ハツキは男の言葉が聞こえないほどに激昂げきこうしていた。ゆえに男めがけて放ったその拳を止めることはなかった。

 ハツキの拳は男の腹にめり込み、男を吹き飛ばした。

 男は壁に衝突し、床にずり落ちた。

「未央、大丈夫か!」

 ハツキが倒れている未央のもとへ行き、肩を揺さぶってみるが、未央は返事をしない。気を失っているようだ。

「過崎ハツキか……」

 男はすっ、と立ち上がり、スーツのよれた部分を手で直した。その様子からすると、全くダメージを受けていないようだった。

「……今日のところは一旦退くか。……過崎ハツキ」

 男が再びハツキに視線を向ける。その眼光からは先ほどまでの虚無感は感じられず、悲哀のようなものが感じられた。

「な、なんだ」

 ハツキは呼びかけに反応して、怒りを露わにした視線を男に向けた。

「……謝っておこう。すまなかった。こんな言葉一つでは許されぬ罪だが、いつかその罪滅ぼしをさせてくれ。それでは」

 男はそう言うと、部屋を出て、ゆっくりと階段の方へ歩いていった。

 ハツキは男が言った言葉の意味が分からず、数秒ほどその場で放心していた。

「ハツキ! どうしたの!? 大丈夫!?」

 全く動かないハツキを心配して祈が押し入れから出てくる。

 それに続いて鈴も出てくる。

「え……あ、ああ。大丈夫。それより、未央と刀地さんの怪我を診てあげてくれ」

 そう言うとハツキは、未央の傍に歩いていき、彼女を抱えて部屋の中央に寝ころばせた。次いで刀地のもとへ歩いていった。

 その間、祈は未央の怪我の具合を見る。

「え……こ、これって……」

 祈の表情が急にかたくなる。未央の状態の複雑さに唸っていると、横から鈴が話しかけてくる。

「未央、大丈夫なの?」

「えっと……正直かなりやばいかな……。肋骨ろっこつが何本か折れて、それが肺に刺さってる……」

 祈の魔術は、体内の損傷の検知、そして目に見える傷の治療である。しかし、

「体内の損傷は治療できないから、私じゃ対処できないの……」

「俺の知り合いの医者に診てもらおう」

 唐突に現れたその声は、刀地のものであった。

「! びっくりした……。刀地さんは大丈夫なんですか?」

 今まで地面に倒れていた刀地が、何事もなかったかのように突然起き上がったのを見て驚いたハツキが問いかける。

「ああ、大丈夫だ。体が丈夫っていうことだけが取り柄だからな。それより、早くその嬢ちゃんを病院に連れて行こう」

 そう言うと、刀地はポケットから携帯電話を取り出し、誰かに電話した。


 杉並区の端、住宅街の一角にある建物。それは、広い面積を持つ国立病院であった。ハツキ、祈、鈴、美佳、そして刀地は今その病院の手術室前の椅子に座っている。

 時刻は午後11時。外は雨が降っていて、かすかに雨音が聞こえてくる。廊下の照明は決して明るいものではなく、よけいに場の空気を重くしていた。

 重い空気の中、刀地は、隣でうつむいているハツキに目を向け、口を開いた。

「心配すんな、大丈夫だ。さっき言った知り合いが手術オペしてくれている。あいつは飛び級を繰り返してこの病院の院長になった天才だ。確実に成功する」

 刀地はハツキの肩に手を置いた。

 しかし、ハツキが心配しているのはそこではなかった。

 ハツキはその言葉に、床から視線をそらさずに返した。

「いえ、それは安心しているんです。僕が心配しているのは、その後です。未央は手術オペが終わった後、しばらくは入院する必要があると思います。そうなったときに、魔術対策部のやつらに捕まらないかどうか……」

「なるほど。だが、それも大丈夫だ。そこらへんのことも知り合いがうまいこと何とかしてくれる。……と、終わったみたいだな」

 手術室の扉が開き、中から二十二歳くらいに見える女性が出てくる。女性は後ろの髪を束ねていたゴムをはずしながら歩いてきた。

「あの、先生、未央は大丈夫ですか?」

 美佳が真っ先に女性に訊いた。

 女性はクマが目立つ目を美佳の方に向け、答える。

「ああ、大丈夫だ。問題は一切ない。だが、あと一、二か月ほどは入院する必要があるな。まあ、ひとまずは安心してくれ」

 女性は少し微笑んで言った。手術室から出てきたときは気づかなかったが、よく見るとかなりの美人である。

 ハツキは、微笑みから女性の優しさを感じ取り、未央を預けても安心な人物だと瞬時に判断した。

「ああ、そうだ。ハツキ君、だったかな。ちょっと第二診察室まで来てくれないか。未央君の現状を話したい。後の人は未央君のところに行ってあげてくれ」

 女性はそう言うと、廊下をトコトコと歩き出した。ハツキは、

「はい、わかりました」

 と返事をすると、女性についていき、廊下を歩いていった。手術室から真っ直ぐ歩いて突き当りを曲がり、そのまま少し歩いて右手にある部屋が第二診察室。この病院では使用頻度が少ない部屋らしい。

 ハツキは女性につづいて部屋に入る。

 この部屋はセンサーで人を感知すると、自動で明かりが点くらしく、女性が部屋に入った瞬間に上方からの光で地面が照らしだされた。明るさは廊下と同じぐらいか少し暗いぐらいだった。

「そこに座ってくれ」

 ハツキは壁に付けられていた机の傍にあった二つの椅子のうち、手前の方の椅子に座るよう促され、女性に背中を向けないように座った。心の中で、実はなにか未央の命にかかわるものが発見されたのではないか、と考えていた。

「さっき言ったように、未央君の命はもう大丈夫だ。だが、君といくつか訊くべきことがあるんだ」

 女性は全てに対して何の意欲もなさそうな表情で机の上にあった紙に視線を向けた。

 ハツキは、はい、と返事をして女性の次の言葉を待った。

「まず未央君に関することだ。先ほどの手術で気づいたのだが、未央君の胸部付近の細胞は、どうも未央君じゃない、別の生き物として存在している、ということだ」

「……え?」

 ハツキは、全く予想できなかった女性の言葉に、力尽きたようにただ呆然とするしかなかった。

読んでくださり、ありがとうございます。

まず、長い間休載してしまったことをお詫びいたします。

実は話自体は結構前に完成していたのですが、今投稿していないことに気付き、必死であとがきを書いているところです。申し訳ありません。とはいっても、一か月の休載が許される理由にはならないので、以後、こうならないように気を付けます。

ほんとうにすいませんでした。


この話では刀地のお友達が出てきました。しかも女性。ということで、刀地とはどんな関係なのか、そして肝心の名前は何なのか、というのが次回のお楽しみと言いますか、そんなところです笑

文章の指摘や感想等ありましたら送っていただけると嬉しいです。

ブックマークしていただけると幸いです。

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