表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/89

狙撃手

 列車は静かだ。ここは極東の国と同じ、マナーというものがきちんと生きている世界だ。



 だが、ホームのショート勝手に関しては蛮族と言われても仕方のない暴挙で、極東では一大ニュースになっているような所業だった。それでも、安定して電車が運行するのには訳がある。



 今、電車の車窓からホームを振り返ると、複数の駅員に拘束されたマナー違反の乗客だ。

 彼はどうやら、神聖なホームにて客人の暗殺というマナー違反を犯したようだった。忍者のような黒ずくめで、目の前の太った西洋人タイプの貴族を睨みつけている。

 貴族はすっかり怯えて、額に冷や汗を流しながら、そばの駅員にしがみついていた。



 その駅員も、電車内に立ってマイクを口に近づけているキューゴに似て、とてもガタイがいい。



『続きまして〜、エクレツェア北西部〜、シュタインバルドック駅〜。スイリヤ探偵事務所、バルドックジョッピングセンター、市役所に後のようの方はここでお降りください〜』



 キューゴが目の前でトランシーバー片手に車内アナウンスを務めた。その頃には、ホームのいざこざも鎮圧されていた。



 乗客にとってはその風景がまさに名物である。圧巻の現場に、周囲から拍手が巻き起こる。

 それがマイクを通して車内に聞こえた。



『ありがと〜ございま〜す』



 そう言ってよしきの隣に座る。

 席は新幹線でよくある形だ。二つの座席が互いに向き合って、四座席一組の形。



 キューゴが座るとよしきのスペースが一気に狭まる。



「ガタイよすぎだろお前!」

「すまん、石を運んでいたせいだ」



 ミーティアは石という名詞に首をかしげた。

 それを遮るように太一がキューゴに尋ねる。



「コペッチ村ってどんなところですか?」

「ああ、コペッチは私の出身地だった。今でも、娘はそこに住んでいる」

「へ〜、結婚してるんですね」

「そうだな、最高の嫁だった」



 だった、その言葉は独り身を表している。そして、その嫁は今この世にいないことを示唆していた。

 太一が少し寂しそうな顔をして、



「それは大変でしたね」

「ああ、それなりに大変だったよ」



 髭面にしては優しい顔だった。まるで聖母のようだ。嫁を思うと同時に娘の子をも思っているに違いなかった。



「少しだけ説明しよう。コペッチ村にいる組織の話だ。おそらく、今回の事件はそのカルテルによるものだからな」







 駅を数個すぎ、砂漠に緑地が増えてきた。オアシスもちらほら見えて、街がいくつか見受けられる。地平線の向こうには、紺色の宇宙が静かに見えていた。



 よくよく考えれば、エクレツェアと言ってもプレートのような惑星の上にある都市数個。窓枠の世界地図を見れば明白だった。



 縦長の長方形ではあるが、プレートの特徴をよく捉えている。



 どうやらコペッチやゴールデンデザート大学は北西あたり、エクレツェア本部は惑星の中央で、北西の砂漠のはるか手前から完全に緑地課が進んでいた。



 北東にも緑地課は進んでいたが、途中から凍りついたように白い色が塗られている。南部分も赤だったり青だったり、中には透明だったりした。



「というわけだ」



 キューゴがそう言ってトランシーバーを手に取った。



『次は〜コペッチ村〜、コペッチ村〜。乗客の皆様にお知らせです。近頃、コペッチ村の銃販売カルテル『ノンバレ結社』が、大変凶暴になっております。お降りの際は、最新の注意を払ってください。遠方からの狙撃、至近距離での散弾銃、手榴弾のお忘れにご注意ください』



 キューゴの話は固かった。要約すると、『NBノットバレット結社』という銃販売の集合組織が大学を襲ったらしい。



 ディオグラディティは『NB結社』の棟梁『ノットバレット』に会いに行った可能性が非常に高いらしい、とのことだった。



 他にも、カルテルとはなんぞや、とか、敵の所持する銃の危険性について語っていたが、ミーティアはその話をほとんど聞いていなかった。



 今でも寝ながらよしきの肩二もたれかかっている。大きな口を開けてヨダレを垂らしていた。



 よしきがミーティアの赤い頭を揺らす。



「おい、ミーティア起きろ」

「ふへへ、もうこれ以上城を壊せないっすよぉ〜」

「何の夢見てるんだよ」



 すると、列車がコペッチ村の駅にたどり着いた。



「太一、ミーティアに肩貸してやれ」

「お、おお……って重!」

「当たり前だ、ミーティアは赤毛族。原理的に軽くても、普通の人間の1・3倍は重量がある」

「先に言え」



 太一は仕方なくおんぶの形でミーティアを背負っていった。



 列車の入り口に板がかかって乗客が降りる。



 四人もキューゴを先頭に列車を降り始めた。キューゴが降りて、よしきが列車から出る。



 と、その時だ。よしきのこめかみ横を弾丸がすり抜けて、後ろにいる太一たちに向かった。



 よしきはかろうじて目で追ったが、弾丸には追いつけない。



「待て!!」



 よしきが今日一番の声で叫ぶ。だが、太一に声が届く前に弾丸が辿り着いていた。それはそっと、ミーティアの寝顔に向かう。



「危ない!」



 その途端、太一がキューゴに突き飛ばされた。

 ミーティアも衝撃で目覚める。

 だが、目を開けた先にはキューゴが倒れていた。だが、彼は列車の外にいたはずだ。



「え、ええ!? どうしたっすかキューゴさん!」



 よしきはすぐさま弾道を確認する。進行方向を辿って、すぐさま狙撃手を見つけた。駅から遠く離れた崖の上で、ライフルを構えている。



 よしきはさらに、吸い込まれるような瞳で狙撃手を見つめた。



 遠くの狙撃手がライフルのスコープからよしきの視線に気がついた。



「バカな、ここは二キロ離れいてるんだぞ」



 スコープ越しに覗いたよしきの唇が動く。



 そ・こ・で・ま・っ・て・ろ。



 背筋が凍ったその瞬間、後ろに気配が。



 そこにはやはりよしきがいた。



「いつの間に!?」

「あっという間に」



 よしきの眼差しは強く、すでに狙撃手を射抜いてしまっていた。よしきはまだ暴力的な行動に出る前だが、狙撃手の腰がすでに抜けている。



 それを見てよしきの殺意が消えてしまった。



「しゃ〜ない。よ〜く見ろよ俺の瞳を」

「いったい何をするつもりだ!?」

「大したことじゃない、初めて俺の瞳を見た時を思い出すだけでいいのさ。きっとその瞬間、君の忠誠を誓う人物は命の恩人から俺に変わるはずだ」

「や、やめ」




「初恋のティヤム

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ