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階段を三段登って横にスライド

 太一はトレーニング後にシャワーを浴びて、バトルスーツも事前に購入したクマさんTシャツに着替えていた。

 先ほどみんなが揃った中央会議室に戻って、太一はよしきのように椅子にふんぞり返り、タオルで頭をゴシゴシ拭う。

 隣にマリが嬉しそうに付き添っていた。


「やるじゃない、太一」

「ありがとうございます、マリ様。ですが、あのブロックというよしきの兄弟にまるではが立っていませんでした。フィガーも強くなりすぎて扱いにくくなっています。これでは、極東に帰っても戦力になれるかどうか」

「何を言っているのです? もう戦争は終わってますから、極東に戦力は必要ありません」

「ですが、抑止力が」

「今はあなたのやりたいことに集中しなさい。私たちが今やるべきことはキシヨを見つけることです」

「かしこまりました」


 そこに、コーデルが笑顔でやってくる。彼の見た目は初めて和帝であった時と同じように五歳児ほどで、穴の空いたジーパンのその穴から両足を出していた。ポロシャツは相変わらず大人用で、それも裾の穴から腕を出す。

 コーデルもシャワーを浴びていたようで、少し濡れた裸足の足跡が会議室まで続いていた。


「太一くん、トレーニングしていたんだね。ゴシックにはあったかい?」

「ゴシック? ブロックとリョアンならいましたよ?」

「ああ、じゃあ今日は休みだったんだね。気にしなくていいよ、それより、マリちゃんもこのエクレツェア本部は狭苦しいだろうから、後で娯楽室2でも連れて行ってあげるよ」

「いいえ、私は太一について回ります」


 コーデルがニコニコしながら、さすが相思相愛だぁ、とか思いながら太一に指示をした。


「じゃあ、太一くんは社員登録をするから図書室の『スティーブ』に会ってくれるかな? 図書室への生き方は『そこの扉をまっすぐ行って右を向き、左に曲がって階段を三段登り右にスライド』だ」


 意味がわからない。まっすぐ進んで右を向くまではわかったが、ひだりに曲がったら真っすぐのままだし、階段を三段登ってスライドとはなんだろうか?


 太一は戸惑って、

「それ『まっすぐに行って右向いて左向いて階段上がってありえねぇ動きしただけ』じゃねぇか」

 マリが慌てて、

「こら太一! コーデルさんにはきちんと敬語使ってください」

 コーデルも苦笑いしている。

「わかったよ、迎えに来させる」


 すると、エーデルワイスの束が床下からコップにバネのついたような電話を持ち上げてきた。

 コーデルは手にとって要求を話す。


「すまんスティーブ。新人がいるんだが図書室まで迎えに来てくれ」

『あいよ』


 瞬間、キシヨの真上に影が降り立った。


 バクッ!


「ブホォ! ゴゴゴゴ!」

「太一!?」


 キシヨはもがく。彼は突然何かに挟み込まれてしまった。マリも慌てて止めようとするが、コーデルに指で制止された。

 太一を挟み込んでいる正体は本。紛れもなく巨大な本だ。

 茶色い表紙のそれは厚い革張りの作りで重厚感を漂わせるそれは、容赦なくキシヨを挟み込み、次の瞬間にはごくんと飲み込んでしまうのだった。

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